その日以来、フローナルに対するクルーたちの扱いが変わっていた、それは――
「ようよう! フローナルお兄様! やっぱり、フローナルお兄様となると違いますねぇ……」
男たちの大半がごまをすっていた。
「あのな……言っとくが、俺に何を言っても何にも出てこねえぞ。
知ってんだろ? 俺の義理の妹は――」
と、フローナルが言うと、その義理の妹は――
「邪魔! 退け! 馬の骨共が!」
ブチ切れていた。
「ああっ、怒っている姿も素敵だ――」
「ああっ……フィレイナ様!」
「フィレイナ様! いや、フィレイナ女神様!」
「女神様!」
だが、しかし……
「ほほう、貴様ら……この私を女神と称えようとはよーくわかってんじゃねえか……。
だったら教えてやろうか、私がなんの女神と呼ばれているかを……」
と、腕と肩をボキボキ鳴らしながら殺意満々の笑みを浮かべつつ、男たちに襲い掛かった!
「そうとも! この私こそがフィレイナ=シルグランディア!
”勝利の女神”こと、”自らの手で勝ちを奪いに行く女”とはこの私のことだぁ!」
と、その場の男たちをボコボコにしながら言い放った――
「ほう、そうだったのか、てっきり破壊と殺戮を司る女神だと思ったぞ――」
と、フローナルは頭を抱えながら言った……彼は圧倒的に正しい!
それに対し、フィレイナは――
「やだわお兄様ったら♪
こんなか弱い女の子がそんなわけないでしょ♪」
と、フローナルに甘えた声で甘えながら言った。
「ああ、か弱い女の子には当てはまらないよな………お前にそれが当てはまるかどうかは別にしてな」
すごいぞフローナル……彼はこんな宇宙の果てに来てまで正解を導き出す!
「はぁ? まだ殺され足りねぇってか! だったら望みどおりにしてやる!」
フィレイナは再び馬の骨たちに牙をむいた。
もちろん、フィレイナについてはただの追加要素に過ぎない――
そもそもフローナルにはシェリアがくっついている……それだけでもフローナルにごまをすっている男がいるのも事実である。
が、そこでフィレイナもとなると再びフローナルをヨイショする行為が再燃し、
なおかつ見た目も中身もイケメンと評判のフローナルゆえに女性人気は言うまでもなく、
妬む者もいそうなものだが、それでもやっぱりくっついている女性が彼をお兄様扱いしているがゆえに、
むしろ彼女らと一緒になることを夢見た馬の骨共はフローナルのことを義理のお兄様扱いしてくることが多くなっていくのである。
「もう! 本当にしつこい人たちです!」
シェリアは憤慨していた、お察しします。
「故郷の里一の器量よし……伊達じゃねえってわけだな――」
シェリアのその様を見てフローナルは悩んでいた。
「フローナルさん、いえ……”お兄様”、どうかお助けください!」
で、いつの間にかフィレイナに感化されて”お兄様”って呼んでくるし……フローナルは悩んでいた。
「お兄様♪ あいつら超ムカツクからブチ殺してきてもいいかしら♪」
フィレイナは可愛げな声で末恐ろしいこと言ってくるし……フローナルはさらに悩んでいた。
「そいつはお前の好きにしてくればいいと思うぞ――」
そう言うとまた犠牲者が増えてくるし――好きにやらせるしかないのだが……フローナルはなおも悩んでいた。
「お姉様! 私の分もぜひお願いします!」
「もちろん任せなさい! 私のカワイイ妹にまで手え出しやがって! この……」
ここから先はフェレストレイア星の美しい風景をお楽しみください。
フェレストレイア星は約15%が大地、残りの85%が海となっており、
この比はフェルドゥーナの2:8よりも大地部分が少ないということでもある。
さらに大地部分はほぼ半分が森林で覆われており、
これもまたフェルドゥーナのプリズム族の里がある場所はすべて森の中ということと共通しているらしい。
だが、その森の中でも異彩を放つ建造物が存在している、
メテオ・ナイツのような宇宙艦の発着場もある女王の城、フェレストレイア宮殿である。
フェレストレイア宮殿はフェルドゥーナ星の所謂”和”な雰囲気の宮殿であり、
一言で言えばまさに”雅”という言葉が当てはまる装いの建造物である。
無論、それがあらわすかのように、女王や周りの女性たちの装いも……おっと、
そろそろ問題が解決しそうだ。
「癒しの精霊……彼女はそういう種族だと記憶していたつもりだが――」
カルディアスはブリッジで悩んでいた、流石は艦長ともなれば目の付け所が違うな――
しまいには……
「ライトニング・ドライバー!」
なんと、魔物までをも一閃! その胴体を一撃必殺の名のもとに貫いた!
「ま、マジで強ぇぇな……」
「どぉかしら♪ こんなに強い彼女ってのもいいものでしょ♪」
と、一緒にいた男……麗しのフィレイナ様を守るんだと意気込んでいた男に対してわざと可愛げに言うが……
「ややややや! そんな、滅相もございません! 俺なんかでは足元にも及びません!
もちろんフィレイナ様は素敵です! 素晴らしいお方です! もはや流石としか言いようがございません!」
と、言うこととは裏腹に滅茶苦茶腰が引けていた……。
「予想通りというか、やっぱり強いよな、お前……」
フローナルはそう言うとフィレイナは言った。
「大昔は高層ビルに匹敵する高さまで大ジャンプもできたんだけどね――」
なんだって!? だが――
「やっぱりか……何か知らんがそんな気がしたんだよな。でも――」
「私も歳ね、流石にそんなことできる身体じゃあなくなっているからね……」
フローナルは知っていたという感じだった、歳をとったとはいえ、それでもなんともパワフルなお人である。
そして、ようやく――
「あと少しで惑星UNP00002か……」
カルディアスはなにやら考えていた。
「アリフローラって女がいるんだな? ……どこかで聞いたような名前だが――」
フローナルは悩んでいた、またか……
「ええそう、”アリフローラ=フェイテル”……気が強くってみんなからも慕われるほどの女性よ。
私も彼女の事が大好きだけど……ある日突然宇宙に出て調査しに行くって言って飛び出したのよ。」
フェレストレイア星にはなんとも強い女性が多いんだな、何人かの男たちはそう思った、特にフィレイナを見て……。
「大気がない惑星で遺跡みたいなのがあることだけはわかっているけど……
現状こっちで把握している情報はせいぜいそのぐらいね。」
フィレイナはそう言うとフローナルは頷いた。
「なら、惑星TRC001984の時と同じように降下要員を限定して向かったほうがよさそうだな。
またこの艦から転送降下できそうか?」
「ええ、それでよさそうね。せっかくだから私も行くわね。」
せめて大気のない星に行くのは自粛しろよ……
そう言いたかったがやっぱり好きにさせたほうがよさそうだ、誰しもがそう考えた。
「え、ちょっと、本当に私が行っても大丈夫でいいのかしら?」
と、フィレイナは聞いた、止めてほしいのかよ、フローナルは訊いた。
「じゃあ何か、行くなって言われたらおとなしくしてくれんのか?」
「そんなわけないでしょ、行くに決まっているわよ。」
だったらなんで訊いたんだ――フローナルは呆れており、その様子を見て何人かは苦笑いしていた。