運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第28節 フィレイナの生き様

 一方、カルディアスとフローナルはメフィリアと話をしていた。
「なるほどのう、今のところは成果なしか。 まあ、宇宙に出るということはそれだけ難儀なことだというわけか、 それゆえのことだったという現れだったのじゃろう」
 フローナルは頷いた。
「それだけ世界滅亡に対して必至になっていた――そう考えてやることが俺達の務めなのかもしれないな――」
 メフィリアは頷いた。
「ふむ……まさしくその通りじゃ――」
 すると、カルディアスはフローナルに話を振り――
「ああ、そうだな。 なんか、宇宙に張り切って出てきたのはいいんだが、少々張り切りすぎなんじゃないか?」
 それはもちろんフィレイナのことである。するとメフィリアは――
「そうか! フィレイナは元気にやっておるようじゃな!  やはり、宇宙に出した選択は正解だったようじゃな!  彼女、優れた能力を持っておるじゃろ?  あの能力が再び宇宙に出でてその存在感を示しているとは、 わらわも同じフェレストレイアの民として鼻が高いぞ!」
 彼女の能力に絶賛していた、確かに……あの能力は誰の目から見てもものすごいものである。 だが、しかし――
「お話しているところすみません! あの――」
 と、その場にディルナが飛び出してきた、それもなんだか不安そうな顔をしている――
「どっ、どうしたんだ!?」
 カルディアスとフローナルは驚いていると、メフィリアは――
「そなたの持っているもの――」
 と、ディルナが持っていたゴミのほうに目が行ったようだ。
「ん? ただのゴミのようだが?」
 カルディアスは言うが、ディルナはメフィリアに問いただした。
「どういうことなんですか!」
 だが、その時の彼女の目には――
「涙!?」
 フローナルはなおも驚いていた。
「そうか、知ってしまったようじゃな……いえ、知ってしまったようね。 彼女は今どうしているかしら?」
 と、メフィリア……いや、アグメイアは心配そうにそう訊いた。 ディルナはシェリアと共に部屋で休んでいることを伝えた、だが――その表情は少々涙声だった。
「一体、何がどうしたというんだ!? ディルナ、大丈夫か!?」
 カルディアスは心配そうに訊くが、それに対してアグメイアが言った。
「フィレイナには私がこんなことを言っていたってことは黙っていてもらえるかしら?」

 彼女は意を決して話し始めた――。
「フィレイナは……フェレストレイアの中でも”長老”と呼ばれるほどの存在…… つまり、あんな風に見えて本当はだいぶ高齢なのよ……」
 やはり魔女か――フローナルとカルディアスは悩んでいた。しかし、それだけではない。
「しかも彼女、病気していてね……5年前に余命半年と言われたにも関わらず――」
 えっ!? どこをどう見れば余命僅かな老婆と言えるんですか!?  無茶苦茶元気なお姉さんでしかないんですけど……すごい生命力である。
「つまり……私が分析していた”薬”というのは――」
 と、ディルナ――彼女に託されたのはただのゴミではなく、 フィレイナが飲んでいた薬の殻だった。
「彼女の病気の進行を遅らせるため自ら調合した薬なのよ。 そう、彼女の身体はもうガタガタ……ああやって立ち上がって生きているだけでもほぼ奇跡に近いのよ――」
 そんな身体で――
「そんな状態で……どうして宇宙に出したんですか!?」
 ディルナはそう問いただすと、アグメイアは憂い気に話し始めた。
「彼女の願いだからよ、彼女は一か所に留まることを知らない…… いつもいつも元気にふるまい、あっちこっちに顔を出してはいろんな子たちの面倒を見たり、 いろんな面倒ごとを解決するために奔走している……誰が止めてもそう言う性分だからって聞かないのよ」
 それだけに面倒見の良さについてはずば抜けているということか。
「でもね、彼女はそうやって一生懸命やっている時が一番楽しそうなのよ、だから――」
 だから……残り少ない命、彼女には好きなことをさせてあげたい―― それがこれまで彼女にお世話になったフェレストレイアの民たちの望みなんだそうだ。
「そう、それで彼女にもしものことがあっても悔いはないわ!  私だって彼女には好きなことをさせてあげたい!  例え宇宙に出るって言っても誰も止めたりはしない!  彼女のことだもの、自分の死期は当然把握しているハズ!  だから……お願い、彼女には好きなことをさせてあげてほしいの!」
 彼女は泣きながら訴えていた、すると――
「不思議だ――何故こんな気持ちになるかはわからんが、艦長、俺からも頼む――」
 フローナルもそう言った。
「フローナル!?」
 カルディアスは驚いていた。
「よくはわからんが、あの女には好きなことをやらせておくのが一番なんだと思う。 そうでなければあの女は死んだも同然…… そんな結末を見るのも寝覚めが悪いからな、だから―― あの女には好きなようにやってもらうべきだと思うんだ――」
 それにはクルーたちも次々と同調し……
「性格やばいけどそれでも美人だしな、あの人――」
「美人には好きなようにしていてもらいたいしな」
「そうそう♪ 私もあんな女性になりたいな♪」
「それは賛成しかねるけど……でも、元気でいてほしいのは俺も同じ気持ちっす!」
「艦長!」
 そしてディルナも――
「私も賛成です! あれこそがフィレイナ=シルグランディアの姿なんです!  彼女は職人! 生きている限り職人なんです! だから――」
 カルディアスは頷いた。
「まったく、お前たちは……。この私が反対するとでも思うか?  彼女のことは尊重する、あれだけの人だ……アグメイアさんが言うように、 自らの死期はきちんと把握していることは確実……いや、自分の生き様をきちんと考えてのことなのだろう。 そういう者であればメテオ・ナイツのクルーとしては十分な素質を持っていると認めざるを得ないな――」
 すると、その場は歓喜に包まれていた。