運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第24節 シルグランディア、出動

 そして出発の時――
「ティルフレイジアはこのあたりに滅亡を防ぐカギを残しているようじゃ。 我らはそなたらをいつでも歓迎する、いつでも立ち寄るがよろしかろう――」
 と、メフィリアは言うと、 それに対して嬉しそうにしている男と遠慮している男……それぞれあからさまな態度をしていた、 各々で何があったか容易に想像できそうな気がしないでもない。
「うん? そうじゃな、言われてみればそれもいいかもしれぬな――」
 と、メフィリアはおつきの女性と何やら話をしていた。
「すまぬが1つ、用事を頼まれてくれぬか?」
 メフィリアは話をしだした。
「実は……我らが者の中で3か月ほど前に宇宙に飛び出したものがいるのじゃ。 我らは宇宙事業からは手を引いたとはいえ、それでも時折宇宙に飛び出す者はなくはない。 だが……彼女の行方が知れぬ状況でな、何処へ行ったのかと案じているところだったのじゃ――」
 行方不明か――カルディアスは考えた。
「わかりました、せっかくですから探させていただきますよ。手がかり等はありますか?」
 メフィリアは頷くと、フィレイナが出てきて言った。
「私が説明するわね、さ、さっさと行きましょ。」
 えっ、行くって――
「そうそう、今後の旅についてじゃが――フィレイナを連れて行ってやってくれはくれぬか?  なに、彼女の腕は知っておろう、シルグランディアの手の者じゃからな――」
 というと、何人かはものすごく期待していた、フェレストレイアの女……だがしかし――
「ん? 何見てんだテメーら! 私が乗るっつってんのにそんなに気に入らねえってか!?」
 と、彼女をじっと眺めていた男たちは一気に目の前の夢見る美女に対して冷めてしまった―― 滅相もない! そもそもそんなつもりでじっと見ていたわけではないのに!  服装はゆったりとした身体にフィットしないワンピース姿の夢にまで見た美女そのものなのに!  もはやこれではただの残念な美女である。 だが、メフィリアはそんな光景を見て、何とも嬉しそうにしていた。
「ふふっ、やっぱりフィレイナは私たちとは違うものを持っているわね、退屈しないものね……」
 うん? しゃべり方が崩れた――これが彼女の素ということか。
「ええ、”アグメイア”……こっちのことは私に任せて。 とにかく、”アリフローラ”のことをなんとか連れ戻すから……」
「フィレイナも無理しないでね――」

 最後のメフィリア改めアグメイアの印象は、まさに等身大の女性という印象でしかなかった。 女王という存在を保つのも大変なものである――彼女らの苦労がわかる一面だな。 確かに――これだけの美しい星を維持するとなるとそれはそれは並大抵のことではない、 強力なリーダーが取り締まるほどのことでもしないと、 万が一外からの侵略者が現れたとしても守ることもかなわないのだろう。
「さて、先にどこ行く?」
 フィレイナは訊いた。
「それよりも、そのアリフローラさんの行き先を知りたいな。 ランドグリスのルート上にいるかどうかも含めて考えたいからな――」
 それもそうだ、フィレイナは考えた。
「OK。アリフローラの行き先は”惑星UNP00002”……ええ、UNPのシングルナンバーよ。 なんでそんなところに行ったのかはまったくわからないんだけど、あえてUNPに向かったところを考えるに、 何かあるのは確実ね――」
 なるほど……カルディアスは考えた。
「どら、私がルート設定してみましょうか。 UNP00002に先に行くルートとランドグリスに先に行くルートの2つを組んだらこんな感じになるけど――」
 と、おもむろにさらにもう一つのルートを……
「ちょっと遠回りルートだけど、これはどうかしら?」
 なんともムダに見えるルート、それについてカルディアスは訊いた。
「ここに立ち寄っているけど、ここは”惑星UNP00005”に向かっているルートね。 こちらで独自に割り出したルートからすると、そこにも立ち寄った痕跡があったのよね――」
 そうだったのか、カルディアスはさらに訊いた。
「これはなんだ? ”惑星エリュカリス”?」
 フィレイナは頷いた。
「この艦の日誌を見せてもらったんだけど、まだそこに立ち寄っていないみたいだと思ってね。」
 ということはつまり……
「ティルフレイジア関係?」
 フローナルはそう訊くと彼女は頷いた。
「そういうことね、実はうちらでもこの惑星のことは把握していて調査も始めたことがあったみたいなんだけど、 当時の技術力ではこの星の調査を進めることができなくってね、だから――」
「今の時代の技術力で探してみたいということか――」
 カルディアスは考えた。

 ということで早速――
「早速行きましょう。 申し訳ないけど、これからの旅のためにと思っていろんな機能を追加させてもらったわ、許してね。」
 えっ、そうなのか!? カルディアスは焦っていた。
「まずは”ディメンジョン・ワープ”機能ね。」
 ”ディメンジョン・ワープ”?
「ワープ航法の方式については従来の”ブースター・ワープ”……つまり純粋にエンジン点火式の所謂”ダッシュ”的なものと、 重力を応用した”グラビティ・ワープ”があることが知られているけど、 私の開発した”ディメンジョン・ワープ”は両方の特性を利用してより早くて安全かつ正確に目的地へと到着を可能にするのよ。 最大の特徴は任意の時間で移動が完了するということよ。 もちろん、物体が移動するからにはある程度時間がかかるのは避けられないけど、 その時間内であれば指定の時間をかけてちゃんとした航行を可能にすることよ。 さらにそれでいて、外からの干渉を確実に受けないというのが最大の特徴…… 軌道上に万が一惑星が入り込んできても絶対に衝突しないなどといったメリットがあるのよ。」
 なんだそれは、無茶苦茶ヤバイやつだな。するとそれに対し――
「エーテルに干渉する力ってことか、それなら確かに実現できそうだな――」
 と、フローナル……エーテルってことはつまり――
「魔法の力を使っているというのか!? まさか、機械技術にそのようなものを取り入れるとは!」
 と、カルディアスは言うと、フローナルは――
「シルグランディアのまさに本文と言える技術はそもそも機械と魔法双方の融合によって成立する技術だ。 御覧の通り、シルグランディアはプリズム女がやっている一家の家系…… プリズム女はエターニス系だから魔法という技術は身近にあるのさ。 だから機械やろうってなっても魔法を使うことはある意味前提になっているってわけさ」
 と、説明した。それに対してフィレイナは――
「あら! こっちのイケメンは把握しているのね! 流石はイケメンね! 感心感心♪」
 と、何とも嬉しそうにしていた。それに対してフローナルは――
「……なんか、妙に懐かしい感じがするな――」
 と、何やら複雑な思いを抱いていた。
「ま、そんな感じね。 資料については艦にインストールしといたから後でゆっくり見てくれればいいよ。 んじゃ、早速やってみるわね――」
 と、彼女は早速クルーに指示を出していた。
「何が起こるかなんか少し楽しみな気がするな――」
 カルディアスは椅子に座り直して様子を眺めていた。