フィレイナの顔つきはあのメフィリアそのままの顔つきでしかなかった。
「私らの特別な化粧というやつね、同じ人の顔にしかならないようになっているのよ。
そのモデルは30億年前にこの星にやってきたプリズム・ロードの顔なのよね。」
そうなのか。フィレイナは腕を捲りつつ、停泊している船を見ながら続けた。
「ここはまさに文字通りの女の星、
対外的にもそれがわかるようにと考えられたのが女王制度というわけね。
でも、年々それを維持するのが難しくなっていてね……
ほら、私らってほとんど女しか生まれないような種族なんだけど、
そうなるとオスというものを獲得するのが難しいわけなのよ。
それについてはとりあえずあの手この手でなんとかやってきてはいるんだけど――
正直なところ、結構キツイ状況になっているのよね――」
だがその状況はシェリアにも覚えがあり、フェルドゥーナのプリズム族も常に絶滅の危機に瀕している状況なのだそうだ。
「フェルドゥーナではやっぱりプリズム族の掟に従い、
プリズム族といえば女性……つまり、生まれてくる男児ですら女性に育てるということをしているんでしょうけど、
こっちではそんなことはほとんどしていないのに生まれてくる者は女性ばかり――
だから最初期のころは原住民のオスを捕まえては食いつくし、私たちの祖先は爆発的に増えて言ったと聞くけれど――
食いつくしてしまった結果、そのツケが回ってきたのね――
私らは減少の一途をたどることとになり、まさに絶滅の危機に瀕しているのよ。」
ぞっとする話とは裏腹に、なんとも大変な状況に追い込まれているのか。
「もちろん、そうなることは容易に予測できた。
だから女王制度を守るべく、最初期のプリズム・ロードの血を絶やさんと特別な血筋を持つ子孫を選定し、
なんとかして女王を成立させてきたんだけど、今はもう、その血を継ぐ者は彼女しかいない――
ここから先の話についてはここだけの秘密にしておいてほしいんだけど、
あなたたちと最初に話をした彼女だけが正当な現女王メフィリアを名乗ることが許される最初期のプリズム・ロードの血を継いだ唯一の存在なのよ――」
もはやピンチというわけか。
「そうなると、彼女の負担だけが大きくのしかかってしまうからね――
そこで新たに考えられたのが女王掛け持ち制度――
私をはじめとする何人かの女性たちがこうして女王に扮し、職務を全うする――
というのが実情ってわけね。」
ゆえに彼女もまたこのようにメフィリアに扮していろいろとやっているわけか。
「なるほどね、ハイクラス型化石燃料で動いているのね――」
それにはカルディアスは驚いていた。
「わかるのか!?
確かに……メテオ・ナイツ建造の際にハイクラス型核燃料の使用も検討されていたのだが、
宇宙深探査計画となると他所からの妨害や悪用も懸念されてな、
それで安全性を重視して化石燃料の採用が重視されたのだ。
無論、バイオ燃料も検討されたのだが宇宙深探査計画に際してコストがかかりすぎるということでお蔵入りになったそうだ――」
フィレイナは頷いた。
「フェルドゥーナは化石燃料が豊富な惑星なのよね。
大昔から魔物たちが跋扈しているこの世界、その都合、精霊界があるフェルドゥーナが一番保有量が多いのよね。
だから必然的に化石燃料を採用しやすいってわけね。
でも――残念ながらフェレストレイアは化石燃料が少ないから提供は難しいわね――」
それは仕方がない。
「でも、安心しなさいよ。その分うちはバイオ燃料が大量にあるからね。
もちろん、そうなるとこの船の規格に合うかどうかは別だけど……
でも、それだと私の先祖が持ってきたいくつかの機材を動かすことができないからハイクラス型ハイブリッドバイオ燃料を開発したわけよ。」
なんと、そんな技術が!?
「シルグランディアは不可能を可能にするのが仕事だからね、まあ、任せなさいな――」
ということで、まずは適当なメテオ・ナイツの艦載機3機程度にその燃料を入れ、実際に飛ばせるかを確認することにした。
すると――
「艦長! こちらも飛行テスト、成功です! すべての機材が問題なく実施できるようです!」
と、パイロットからの応答が。
「そうか、わかった。
艦載機3機が動いたからと言ってメテオ・ナイツが動かせるかは何とも言えないが、
ここはシルグランディアの技術を信じてみることにしよう……」
メフィリアの顔でフィレイナはニヤッとしていた。
「じゃ、この燃料を使ってメテオ・ナイツに給油を開始するわね♪」