運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第21節 ディルナとフィレイナ

 ディルナはフィレイナに言われた通りにアンテナの修復をした。
「あんた、筋がいいわねぇ♪ 将来立派なクリエイターになれるかもね♪」
 フィレイナは彼女を絶賛していると、カルディアスが言った。
「それはそうだ、なんたって彼女、私らの星では1位2位を争うほどの腕を誇る技師の家系だからな」
 ん、それというのはつまり――
「そっ、そんなことないですよ! 私は分家です! 本家様にはかないませんから!」
 と、遠慮がちに言うと、フィレイナは再び身を乗り出していた。
「えっ、もしかして……ディルナって”シルグランディア”の人なの?」
 ディルナは遠慮がちに言った。
「ぶ……分家です――”ディルナ=シュベスター”です……」
 それよりも、そもそも他所の惑星の者がシルグランディアを知っているとは――カルディアスたちは驚いていた。
「知っているのか!?」
 フィレイナは頷いた。
「もちろんよ!  だって、私のご先祖様は30億年前当時のシルグランディア家の後継ぎで選ばれないことを知ると、 当時のプリズム・ロードと共にこの星に移住したのだからね!」
 えっ、ということはまさか――
「そうよ、私の名前は”フィレイナ=シルグランディア”!  移住してもこの名前だけはとっておこうと思って今でも名乗っているのよ!」
 なんと、まさかの遠い親戚……あまりに遠すぎてもはや他人ではあるのだが――
「それでも、シルグランディアの手の者とこうして出会うだなんてなんとも親近感がわくじゃないのよ♪」
 フィレイナは嬉しそうだった。
「プリズム族に……シルグランディア!?」
 カルディアスは驚いていた。
「そもそもシルグランディアは女児の家系でプリズム族がやっているから当然のことよ。 もっとも、うちの家系の女はほとんどプリズム族らしいことしてきていないからその血も薄まってきていて、 ディルナみたいな人間族の女の子が生まれ出るようなことがあってもおかしくはない感じにはなっているみたいだけどね。」
 なるほど、確かに――フローナルが言った通りなら女児ならプリズム族……つまり精霊族であるはずだが、 ディルナは人間族である。
「でも、この星は女王陛下も言ったように男を飼いならさないといけないからその分には妖かしの血を振るわないといけなかったみたいね。 だから私もこの通り、とりあえずプリズム女として成立しているわけだけど……」
 見た目だけは何とも素敵な女性であり、胸もなんとも大きなものをお持ちな彼女だが―― 性格が吊り合っていないことが即効でわかるような態度としゃべり方なのが特徴のフィレイナだった。

 話を戻して。 アンテナの修復をしたディルナ、さらにフィレイナの指示でメテオ・ナイツのデータベースへと接続した、すると――
「ん? 惑星UNP……いや、ランドグリスを検索しているぞ!?」
 と、カルディアスはモニタを見て驚いていた。
「やっぱりね、そんなことだろうと思ったわね。 メドーナが作り出した星を探すためのブツをメドーナの名をつけた星に隠した…… 相場としてはそれしかないからね。」
 確かに、言われてみればその通りである。すると――
「こっ、これは……ランドグリスの周回ルートか!?」
 なんと、ランドグリスが動いているルートが表示された! そして――
「でた! ランドグリスの場所を発見したぞ!」
 カルディアスは感激していた。
「ったり前でしょ、ったく。 それはひとえに私とディルナのおかげなんだからお礼ぐらい言いなさいよ。」
 フィレイナはつっけんどんにそう言い放った―― 確かにその通り、お礼するにはしたのだが、それにしてもやっぱり見た目と性格が伴っていない人だなとつくづく思った。 そして――
「そうね、それがいいわね――」
 と、フィレイナは別の女性と何か話をしているようだ。
「あんたたちってさ、そういえば今フェレストレイア宙域にいるのよね?  だったらちょっとうちに寄ってかない? 別に取って食おうってんじゃないからそこは安心しなさいよ。 ただ……フェルドゥーナ離れて疲れてるでしょ? だからうちで休んで行けってことよ、どうかしら?」
 この際だからお言葉に甘えることにするか、カルディアスは考えた。
「あ、でも女の子に下手に手出ししようもんなら添い遂げさせる前に殺すからそのつもりでいなさいよね。」
 ……怖っ! なんでそんなに怖いのよあんた! だが、フローナルは――
「どういうことだ……? なんだか妙に懐かしい感じがするぞ――」
 フローナルはやはりフィレイナに対して妙な感覚を覚えていた、懐かしいって……

 惑星フェレストレイアへと停泊することとなったメテオ・ナイツ、 宇宙事業から手を引いて久しいとは言うが、それでも宇宙艦のドッグはきちんと整備されているようだ。 それがなんとも不思議な光景にも思えるのだが――
「ふふっ、おもてなしの精神じゃ。 万が一、他所のお客人が来るとなればもてなすのが道理―― 大昔より”癒しの精霊”と語られる存在とあらば、やはりそれに倣って生きていくのが我らの宿命というわけじゃな」
 と、なんと、まさかの女王メフィリアが現れるとそう説明した。
「ようこそ、我らが母星フェレストレイアへと参られた。 ゆっくりと疲れをとっていくがいいじゃろう――」
 と言いつつ、彼女は鞭を取り出すと地面を激しく打ち付けた!  すると後ろから男共が現れ、メテオ・ナイツのほうへとそそくさと走って行った。
「えっ……」
 カルディアスをはじめ、いきなり美しくも妖艶な女王が現れたことでぎょっとしていたが、 それと同時にいきなり男5人が自分たちの船に――
「安心するがよい、そやつらには船の手入れをさせるだけじゃ。 もちろん給油もしてやろう―― ふむ、見たところ、シールド機構に欠損があると見える…… よし、それはわらわ自ら直してやるとするかの――」
 えっ!? 女王自ら!? すると――
「あの……もしかして、フィレイナさん……?」
 と、シェリアは言った――えっ、そうなの!? すると――
「ふふっ、流石は同族ね、その通り、私よ。」
 なっ、なんだって!? さきほどの土足おねーさんの印象とはまるで違う――