運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第20節 見た目のイメージにそぐわぬ妙な女

 フィレイナ、やはりその見た目は見目麗しい美女だった。
「手始めに、まずは私らがなんで世界滅亡を考えているのか話さないといけないわね。」
 そうだ、それは何でだろうか、カルディアスは訊いた。
「その答えはね、このあたりの宇宙域では定説になっているから――って話じゃあ信用しないわよね?  でも、そのせいでトラジアータもうちらも宇宙深探査計画に相当する計画を辞めることにしたのよ、 最期の時は母星でひっそりと過ごすことにしようってね。」
 それで彼ら彼女らは宇宙に出ていない―― そういえばトラジアータもフェレストレイアも宇宙艦を見たことがなかったカルディアスたちだった、 双方の文明レベル的には宇宙探査をしていてもおかしくはないのだが、そういうことだったのか。
「では、どうして定説に?」
 フィレイナは頷いた。
「残念だけど、理由はあんたたちが見てきたのと同じになるわね。 そう、ウスライト=ティルフレイジアってやつの言い分ってわけね。」
 う、ウスライト……それにはほとんどの者が笑わずにはいられなかった。
「あいつの手によるブツがこのあたりにまでどんどん投げ出されているみたいでね、 宇宙に出ていたころの私らはそれを回収して世界滅亡の可能性を考えたのよ。 無論、最初は誰しもが疑っていたけど……でも、”惑星ランドグリス”を見つけてそれが核心に変わったってワケよ。」
 ”惑星ランドグリス”?
「そうね……あんたたちフェルドゥーナ連邦のデータベースでは、 確か”惑星UNP00004”で登録されていたかしら?」
 惑星UNP00004! そうきたか!
「一体惑星ランドグリスには何があるというんですか?」
 フィレイナは頷いた。
「ランドグリスは人工の星だった、 でもエフェリア=ランドグリスがそれを見つけたことで私たちはそう呼ぶようになった。 その星を飛ばしたのはあんたたちフェルドゥーナの民……”メドーナ=ティルフレイジア”だったことが判明したのよ。」
 メドーナはまさかのティルフレイジアだったのか……何人かは唖然としていた。
「ランドグリスは放浪している星で周回しているのかどうなのか、その規則性がよくわかっていないのよ。 でも、その中でも偶然2回ほど発見されてね、1回目はエフェリアが、2回目は私が見つけたのよ、 もう44年前の話になるかしら?」
 44年前だって!? いや、フィレイナはどう見ても20代前半のお姉さんにしか見えないんだが?
「それもプリズム族の特徴だ。 この通り若い姿を保つことでなおのこと異性を獲得しやすくしているってわけだ……」
 と、フローナルは言った。
「私は……本当に20代前半ですけどね……」
 と、シェリアは念のため程度に言った、いや、シェリアの見た目はむしろそれよりももう少し若く見える…… なるほど、プリズム族は魔女か。
「説明ありがとう。 言っても私、別に男なんかあんまし興味ないけどね。 あ、でもイケメンやカワイイ子は別だからね♪」
 そうですか……でも、フローナルは再び妙な感覚にとらわれていた。 その様子にフィレイナは――
「何かしら……あんた、不思議となんかビビっと来るものがあるわね。 えっと、そっちの子……シェリィって言ったっけ?」
「しぇ、シェリアです……」
「そうそう♪ あんたってとびっきり可愛い子よね♪  どう? うちの次代女王になる気ない……わよね、冗談よ。」
 な、なんなのこの人……何名かは困惑していたが、シェリアは心中複雑だった。
「と、とにかくランドグリスに行けば何かわかるんですね!  ただ……そのランドグリスの場所は何処にあるのですか?」
 と、カルディアスは訊くが……
「申し訳ないけど、私らが見つけられたのってほとんど偶然なのよ。 言った通り、ランドグリスは放浪している星でどういう軌道をたどっているかが全くわからないのよ。 最初にエフェリアが見つけた時は167年前のこと、そして私が見つけたのは44年前で同じ場所での発見だった。 不意に見つけられたもんだから発信機の類とかを仕掛ける用意もなくてね、 だから残念なことに行方が分かっていないままなのよ。 つまり、エフェリアが見つけてから123年後だから――同じ場所で見つける気ならあと79年待たなければいけないんじゃないかしら?」
 3年後に世界が滅びる可能性があるというのに流石に待つことはできなかった。
「これが当時見つけた座標ね、現時点でランドグリスに相当する星はなさそうね――」
 もはやお手上げか……。
「ん、そう言えば惑星メドーナってのがあるんだっけ?  ランドグリスはメドーナが飛ばした星だってことは……何かしらのヒントがあるかもしれないわねえ?」
 あ、そういえば――
「そうだ! 惑星メドーナの地中深くに何かが埋まっているようなんです!  だから――」
 と、ディルナが訊くと、フィレイナは得意げな態度をしつつ身を乗り出していた。
「それはなんとも興味深いわね――」

 ということで、メドーナでの採掘許可が下りたため、 早速作業に取り掛かると、ボックスの中身を取り出した。
「これはアンテナか?」
 あからさまにアンテナのようなものが入っていた。
「なるほどねぇ……アンテナ――」
 フィレイナは考えていた。
「ちょっと、よーく形状を見せて――」
 フィレイナはそう言うと、ディルナはカメラ越しにしっかりとそれを見せていた。
「あら、ありがと♪ あんたも可愛いわねぇ♪  可愛い子は好きよ、男の子だろうと女の子だろうとね♪」
 このお姉さんのストライクゾーンがよくわかったところで。ディルナは照れていた。
「なるほどね、よくわかったわ。ちょっと、言った通りにしてくれる?」