運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第19節 フェレストレイアの真相

 ということで、カルディアスたちは早速行動に移すことになった。 そのためにはまず詳細を、フェレストレイアの人々に訊くことから始めなければならない。
「フェレストレイアとの接続が完了しました。 ただ、向こうも直接話したがっています!」
 カルディアスは頷いた。
「わかった、スクリーンに投じてくれ」
 すると、スクリーンには何ともきらびやかなで華やかな光景が。 目の前には和装風の美しいドレッシーな感じの服装で身を整えた女性と、 その両脇にもやはり和装風の美しい身なりで整えた女性たちが鎮座していた。
「わらわはフェレストレイアの長、メフィリアじゃ。 フェルドゥーナの者たちよ、宇宙深探査とは精が出るのう。 既に知ってもおろうが、この世界は破壊の刻みを迎えんとしておる!  なんとも嘆かわしいことじゃが……形あるものいつかは無へと帰す……止むを得んことじゃな――」
 目の前のドレッシーな女性はそう言った、 既に受け入れようとしているのか……話を聞いてカルディアスは悩んでいた。
「ふむ、時にそのほう……”プリズム・エンジェル”の民じゃな?」
 そう言われたシェリルはぎょっとしていた。
「えっ……ええ、そうですが、どうしてそれを……?」
 メフィリアは嬉しそうに答えた。
「ふふっ、もちろんわかるとも。 何故なら……我らは元々フェルドゥーナ星より生まれ出でたプリズム・エンジェルの民―― そしてこの地に流れ着き、フェレストレイアの民となったのじゃからな」
 なんだって!? まさか……フェルドゥーナからの移民だというのか……
「我らがこの地にやってきたのは遥か昔、30億年ほど前のことじゃ――」
 フェルドゥーナが”フェルドラシア”と呼ばれていた時代のことか。

 プリズム・エンジェル、通称プリズム族と言えば外の世界への干渉を禁じられている種族であるが、 シェリアのように”プリズム・ロード”となるべく修行する者もいるということだった。 フェレストレイアへと移住することになったのは、 ”プリズム・ロード”となった者がフェルドラシアを飛び出し、新天地を求めた結果のことだそうだ。 つまり、彼女らは当時の”プリズム・ロード”の末裔ということか。
「それでやってきたのが宇宙ですか――」
 カルディアスは訊くとメフィリアは答えた。
「そうじゃ。 元々この星に住まう者は野蛮な者たちばかりでのう、 マトモな文明社会など築き上げるにも至らぬような弱肉強食の世界…… この世の終わりを見るような荒れ果てた世界でしかなかったのじゃ」
 その光景はもはや某世紀末漫画の如し……といったところか。 そこいらからひゃっはーからの某神の拳使いによる所業によりひでぶだのあべしだのという断末魔が聞こえそうな感じである。
 だが……そんな星だったのがどうして今ではこのような形に?  フェレストレイアといえばまさに緑と青だけが織りなすとても美しい星として有名である…… そんな星がすさんだ荒れ果てた星だったって!? そして、どうやってそんな野蛮な者たちを……?
 すると、メフィリアはなんとも妖しい笑みを浮かべているだけだった。 話はフローナルがした。
「野蛮な男共を誘惑したんだろ、プリズム族と言えば”誘惑魔法”だからな。 昔は所謂”森に住まう精霊”のイメージとくればまさに癒しの精霊様と呼ばれる女の精霊が一般的だったのだが、 その正体は実はプリズム族であるというのはあまり知られていないほどマイナーな種族なんだ。 だが……確かに持てる能力は癒しの精霊様そのものと言っても問題ないが、 それとは別に”妖かしの香”を操る血を持つ種族でもあってな、 それによって異性を意のままに操る能力さえ持ち合わせているんだ」
 そう聞いてカルディアスはぎょっとしていた。
「なっ!? ということは女性中心の社会性というのも……?」
 フローナルは頷いた。
「そう、理由の一つに男を使役する側故のものを持っているからこそと言えるな」
 理由の一つということは……他には?
「というか、こっちが理由としては最大の理由になるわけだが、 そもそもプリズム族は遺伝的にほぼ女しか生まれないと言われているほど生まれてくるのは女ばかりだ。 ゆえに種族存続のために異種族の男を誘惑魔法で獲得するのが彼女らの特徴だ。 となると、生まれてくるのは基本的にはハーフになるわけだが…… ここも遺伝的な都合でプリズム族としての血が色濃く出てきていて、ほとんど純血に近いプリズム女として生まれてくるってわけだな。 だからプリズム女が圧倒的多数になる、女性中心になるのは必然のことというわけだな」
 プリズム族は異種族の男を誘惑魔法で獲得する……なんともぞっとする話である。 だが――
「ふふっ、安心するがよい、我ら客人とあらば見境なく妖かしの香を用いることはないぞよ。 もっとも……我らと添い遂げることをご所望とあらばその限りではないがな……フフッ――」
 怖い……男共はビビっていた。 だが、この話の後にフローナルやカルディアスは一部クルーの会話を聞き逃しはしなかった、その内容は――
「怖い内容とは言うけどな、あんな美人のお姉様方に使役されるんだったら案外そのほうがいいかもしんねえな!」
「おお! 仲間いた! 俺もそう思ったぜ!」
「そうそう! どーせ世界終わるんなら美女に囲まれて過ごしたいしな!」
「だよな!」
「なるほどなぁ! シェリアちゃんもそうだったのかぁ!  確かにシェリアちゃんなら素晴らしい色香を発してくれそうだな!  シェリアちゃん、俺らのこと幸せにしてくんねえかなぁ……」
「でもシェリアちゃん……そういう感じの性格してねえもんなぁ……」
「だからシェリアちゃんに幸せにしてもらいたいんじゃねえか!」
 ったく、こいつらは……フローナルは呆れており、カルディアスは悩んでいた。
「なるほど、ウィドラスが受けた美女の洗礼……わかる気がする――」

 話を戻して。
「フィレイナ、後は任せてもよいか?」
 と、メフィリアは言うと、フィレイナと呼ばれた女性が画面の真ん中にやってきた。 メフィリアはその場を後にしていた。
「さーて、そろそろ本題に入ろうかしらね。 だからあんたたち、そろそろいい加減鼻の下伸ばしてないでちゃんと話し聞きなさいよね。」
 と、その女性は見た目にそぐわない妙な態度で引き締めるかの如く話しを始めた。 それに対してフローナルは妙に違和感を感じていた。
「なっ、なんなんだ、この感じは……」