運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第18節 ロイドとフローナル

 とはいえ、まだまだ釈然としない部分がある、本当に世界は滅びるのかという懸念である。 それに、フェルドゥーナの現状については人伝に訊いたに過ぎない……確かなのか?  だが、自体が自体なだけにそれで信じろというしかないのだろう。
 トラジアータの人たちも世界が滅ぶことを言っていたし、ティルフレイジア星で……ん、待てよ――
「おい、トラジアータの人たちが世界が滅ぶみたいなことを言っていたのは何故だ?  フェレストレイアもティルフレイジア星のことを秘匿していたが、それも何故だ?」
 フローナルは訊いた。
「流石だね! キミがあれだろう、我が祖も語っていたロイド君だろう?」
 だから俺はロイドじゃねえと何度言わせれば……フローナルは呆れていた。
「あれぇ? 違う? おかしいな、そんなハズないんだけどなぁ……」
 なにがおかしいんだ、フローナルはさらに呆れていた。
「あの、でしたら訊いてもよろしいでしょうか?  その……ロイドさんという方、どういう方なんでしょう……?」
 シェリアは訊いた。

 ノディラスはロイドについて語った。
「彼がこの世界に生を受けたのはまさに約113億年前の時代なんだよ――」
 なるほど、まさに当時を生きたスクライトと同じ時代の存在…… だからあいつは”知り合い”と言っていたんだな。
「彼は当時、数多の仲間たちと共に当時の邪悪をうち滅ぼすために立ち上がったんだ。 その仲間たちというのは奇しくもキミたちが乗艦している船と同じ名前―― メテオ・ナイツ(流星の騎士団)と呼ばれていたんだよ」
 それは偶然のものなのか、それとも必然のものなのか。
「なるほどな、つまりは時代の英雄ってわけか」
 ノディラスは考えた。
「まあ、時の英雄ではあるね。 ただ……キミは自分のことを……言いずらいと思うからキミに訊こうか。 フローナル君を見て英雄然としていると思うかね?」
 んだよ、俺の名前を把握しているじゃねーか……フローナルは呆れていた。 指名されたカルディアスは答えた。
「えっ、私ですか!? えぇっと、そうですね……」
 カルディアスはフローナルを眺めながら答えた。
「フローナル、キミには申し訳ないが……キミはあんまり英雄っていう感じのタイプではないかな……」
 そう言われたフローナルだが、まったく気にしていなかった。
「そう、ロイド君もキミと同じく英雄っていう感じの人物像ではないね。 言ってしまうと影を背負ったクールな主人公タイプっていうキャラというのが相応しいね」
 誉め言葉として受け取っておくか、フローナルは思った。 しかし、それでも納得いっていない点が……。
「その、ロイドと同じってのがよくわかんないんだが。 ”クソライト”にもそっくりって言われたんだが……まさにそれそのままってことでいいのか?」
 ノディラスは頷いた。
「ああ、どうやらそうらしい。 特にその”クソライト”って言うところもまさにそっくりだ。 それこそ生き写しと言ってもいい、現世においてロイド君が復活した……そう言っても過言ではないだろう――」
 マジか……フローナルは悩んでいた。
「ふん、そうか。で? だからなんだ?」
 と、その前に……
「受け入れるのか? 所詮は他人の空似だろ?」
 と、カルディアスが指摘、するとフローナルは――
「ああ、所詮は他人の空似だからな。 それに、エターニス的には…… 精霊界の連中がなんかしたんだろ、だったら別にあり得なくもない――ぐらいには考えるな」
 なるほど、精霊界……カルディアスは考えた。 ただ、受け入れないって言う発言よりは遥かにそっけないところがなんとも寂しい発言と言えるところである。
「ただ、ロイド君に関しては実はもう一つ大きな話があってね、彼は邪悪を倒した後、精霊界に昇ったらしいんだ。 その後の足取りについては流石に私らの能力で追うことはかなわないが、 それでも言えることは……当時の彼はまだ生きているハズってことだね。 というのも、どうやらスクライトよりも後世のご先祖様がロイド君に会ったことがあるらしいんだ。 ただ、ティルフレイジアは彼に嫌われているからわざわざ来るんじゃねえって怒られちゃったみたいだけどね!」
 なんで楽しそうに言うんだよ、フローナルらは呆れていた。 それに……そうか、ロイドはティルフレイジアが嫌いか、気が合いそうだな……フローナルはそう思った。
「後世っていつだよ? でも今に至るまでの間にくたばってしまったらどうするんだ?  それに、そいつが精霊界に昇っていたとしたら……どうなるんだよ?  それでも所詮は他人の空似でしかないだろ?」
 ノディラスは頷いた。
「そう言われたらそれまでだけどね。ただ――いや、この話はここまででいいだろう」
 えっ、なんでだよ――

 ノディラスは話をした。
「というわけで、早速次の目的の話をしようか。 次は……”惑星UNP00004”を目指してほしい。 そこで何をすればいいか……残念だが私はそこまで把握していない。 ただ――とりあえず、行けばわかるとでも言っておこうか」
 ん? ”惑星UNP00004”?
「”UNP”のシングルナンバーですか!?」
 シングルナンバー、要は1桁である。 それはそれはまさに記念すべきかつ栄誉ある値であり、 それに登録されるのはそれだけに重要かつ特別な星であり、 例えば太陽系なら太陽とか水星、土星など、誰でも知り得るような星というのが通例である。
 そのうえで”UNP”となると……
「何故、未探査領域惑星ですか!?」
 そう、まさに宇宙深探査計画、宇宙のもっと深い深いところまで行けという話である。
「発見したのはフェレストレイアの人たちで、彼女らなら詳しい話を知ることだろう。 ついでに世界滅亡の話についても聞いてみるといいよ。 繰り返しにはなるが、惑星については私も詳細までは把握していない。 確かなのはそこに何かしらのものを我が先祖たちが隠したということだけだね――」