運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第2章 オンナの星

第15節 立証

 フローナルたちはさらにいくつかの惑星の調査をしていた。
「惑星TRC063810を改めて調査したところ、このようなものが見つかりました……」
 ほかの降下要員がカルディアスに報告していた。
「よし、わかった、早速分析にかけてくれ!」
 カルディアスはさらにコミュニケータを取り出すと、
「惑星TRC029983は何か見つかったか?」
 と訊いた。それに対して応答したのは……
「フローナルが何かを見つけたようです!  えっと……また何かしらの”ボックス”のようです!」
 と、ディルナが応答した。

 さて、何をしているのかというと、要はこういうことである、 いくら何でも大昔の時代の存在が今の時代の人間と交信することなどあり得ないということである。 そのため、その根拠を示すべく、スクライトから指定のものを探せばいいと言われたのである。 無論、それを掘り出したとて、今の時代のこいつが予め隠しておいただけという算段も成立するのだが。
「なんだその”ボックス”は、これまで見つけたそれとはまるで異なるもののようだな……」
 ”ボックス”と言っているが、要はコンテナである。 以前惑星TRC063810で見つかったそれも”ボックス”と呼ばれるコンテナの一種であるのだが――
「このボックス、すごい、とても高性能なもののようです……」
 もはや中身は時限爆弾のスイッチなんじゃないかと思わせるほどの厳重なセキュリティボックス、 あけるのは難しいのだが無論開け方についてはスクライトから指定があり――
「あっ、開いたようです――」
 シェリアはそう言って開錠を確認した。
「よし、開けてみるか……」
 フローナルはそう言ってボックスに手をかけると――
「待った! 危険なものが入っている可能性がある!」
 と、カルディアスは静止した、だが――
「調べたが中身の判定は分析できないようになっているようだ。 それに、この分析結果……」
 何だ? カルディアスは訊くとフローナルは答えた。
「もしかしたら直接聞いてみたほうが理解が早い可能性がありそうだぞ」
 と、コミュニケータの内容を見せながら言うと、カルディアスはその内容を見て――
「確かに詳細は不明か……。材質は……純粋な鋼鉄製だな。 これのどこがやばいって……? ん? 製作者情報?  ……不明だが恐らく”シルグランディア”の手によるものと推定され……なんだって!?」
 フローナルは首を振った。
「驚くほどのことか?  やつも言ってたろ、太古の時代からシルグランディアは存続しているってな」
 そういえば言ってたな、カルディアスは考えた。
「だからとにかく史実には忠実であるというところだけは確実なようだ」
 フローナルはそう言った、それは間違いなさそうだ。

 すべてのボックスを開けていろいろと確認していた。
「すべてシルグランディアの手によるもの――」
 カルディアスは悩んでいた。
「しかも容器・内容物の製造時期もいずれも太古のものです。 例えば惑星TRC029983で見つかったものですが、 容器・内容物共にいずれもヴァナスティアの記録においては大体80億年前の”アルメシア”と呼ばれた時代で製造されたものと推定されるようです。 さらにこちらの惑星TRC063810のものですが、40億年前の”レイディアント・フェリシア”の時代のものであると推定されるようです――」
 カルディアスは頷いた。
「問題はそれがこの時代に仕掛けられたタネではないことを証明する方法だが――」
 さらにそう悩んでいると……
「ん? 入電だぞ?」
 フローナルはカルディアスのコミュニケータを見てそう言った。
「おおう、そうだな。なんだ、どうした?」
 カルディアスは話をしだした。
「はい、こちら”惑星メレーナ”で捜索しているのですが、 問題のブツを見つけることはできたのですが、取り出すのが少々困難となっておりまして――」
 困難?
「はい、それがどうも地中深くに埋まっているようでして――」
 それは困ったな――
「フェレストレイアに交渉して掘り出していいか訊くしかないか――」
 カルディアスが悩んでいると、そこへディルナが――
「どのぐらい深く埋まっているのか聞いてもらってもいいですか?  惑星メレーナの生まれた年代と埋まっている深さからはじき出される地質代、 そこからいつその場所にボックスが置かれたのか特定するんです!」
 確かに、その方法があった、こういうところに気が付くのよねこの子……。
「……どうだ、いけるか?」
 カルディアスは訊いた。
「はい! 少しお待ちください!」
 すると――
「出ました! 問題のボックスは今から大体30億年前にあることは間違いないようです!」
 フローナルはコミュニケータを見ながら考えていた。
「今回見つかった中では一番新しい代物だがそれでも30億年前――”フェルドラシア”の時代か……。 それに、”メレーナ”ってわざわざ惑星の名前がつけられているところも何か秘密がありそうだな」
 カルディアスはそう言われてさらに悩んでいた。
「これだけのものをこれまで宇宙に飛ばしてきたということか……」
 フローナルは頭を掻いていた。
「メレーナのブツも一応最初からその場所にあることを知っていたという見方もできなくはないが――」
 というと、カルディアスは頷いた。
「だが……ここまで製造年代がバラバラなものを宇宙に飛ばしてまでことを成し遂げようとなると、 もはやただのハッタリとは考えにくいな――」
 と、フローナルに賛同を求めようとして訊くと、彼は頷いた。
「やつに賛同したいわけじゃないが俺もそう思う。 ここまで手の込んだことをしてまで言うってことはどうやらマジのことを言ってるらしい――」
 なんとも面倒なことになってきたようだ。
「ディルナ、問題の内容物について特定はできたか?」
 カルディアスは訊くが、ディルナは――
「うーん……私にはわからないなぁ……多分、ただのゴミというかただの生活用品?  みたいなものにしか見えないんだよねぇ――」
 フローナルは頭を掻きつつきいた。
「”本家”に訊いてみないことにはわからないか?」
 ディルナはため息をついた。
「そうだね、詳しくは”本家”だね――」
 カルディアスは頷いた。
「わかった、私のほうから鑑定依頼を打診してみよう。 さて、問題は――今回の件をどうフェルドゥーナに報告するかだな――」
 確かに……世界滅亡の可能性をどう説明すればよいのか……そればかりが悩みどころである。 だが、それでも作業報告として何らかの話をしなければいけないだろう――そう思いつつ、 カルディアスは別のクルーに促した。
「すみません、少々お待ちください――」
 ん、どうしたのだろうか、カルディアスは訊いた。
「いえ、それが3分ほど前から掛け合っているのですがフェルドゥーナからの応答がないのです……」
 なんだって!?