その話は事実なのか、それとも虚構なのか――
「ありました、”アーカネリアス”……
ヴァナスティアの記録では確かに113億年ほど前の時代は”アーカネリアス期”とあるようです――」
シェリアはコミュニケータを見ながらそう言った、
少なくとも事実に基づいた話……虚構だとしたらあえてそんな時代を言う意図はなんなのだろうかと考えるところである。
それに”ティルフレイジア”という名前――
「そちらの時代のティルフレイジア当主は”ノディラス=ティルフレイジア”であっているかな?」
えっ? すると、それに対してカルディアスが――
「ノディラス? いや、あてが外れているんじゃないか?
”セクレアート=ティルフレイジア”なら訊いたことがあるが――」
するとスクライトは首をかしげていた。
「ふぅむ、違ったか……まあ、遠い時代のことだから多少のズレはあるだろうね、
そうか、セクレアートはまだ生きているんだね」
ん? そう言う話?
「んなことはどうでもいい! それよりお前、一体何なんだ! 一体俺たちに何の用だ!」
しびれを切らしたフローナルはそう問いただした、すると――
「それはとてもいい質問だね! ”ロイド君”!」
え? ロイド君? 4人は目が点になった。誰だそれ、フローナルは言い返すと――
「……えっ、違う?
ああそっか、ごめんごめん、似たような知り合いがいたもんだからね、
ついついね――今のは忘れてくれたまえ」
なんか得意げにそう返された、なんとも妙なやつである。
スクライトは話をし始めた。
「手始めに、そもそもどうしてこのような場を設けることになったかを話さなくてはならないね」
彼は態度を改めた。
「私らの一族”ティルフレイジア”の家はね、代々”未来予測”をする能力が備わっているんだ。
だから例えばこれからキミはそんなまさかと言うだろうね――」
というと、フローナルは――
「そんなまさか――」
と、まさにこいつの言う通りになってしまった。
「そしてダークエルフの男は顎に手を当て、女性2人は口に手を当てる……と――」
と、カルディアスはまさに顎に手を当てていて、
女性2人はその様を見て口に手を当て驚いていた……こいつ、気持ち悪い……
「言っても、あくまで”予測”でしかないから本当にことが起きるかは確証が得られないのがネックでもある。
だが――それでもどうしても腑に落ちないことがあって私はとある用意をすることになるんだ」
どういうことだ、これからするって――
「ああそうそう、これから私が話すことはこれから私がするべきことも含まれているんだ。
何故かって? まだ行動を起こしていないからだ。
だが、残念ながら、私自身が起こすことが不可能な行動も含まれている、
まあそれについては別の代のティルフレイジアが叶えてくれることを祈って……話をするよ」
自分の代で完結しない理由は?
「そりゃあ無理ってもんさ。
だって、私の生きている今の時代はそこまで技術力が及んでいないからね。
ましてや宇宙に何かを飛ばすなんてのは以ての外、
例えこっちの時代の”シルグランディア”でさえ不可能な所業さ」
”シルグランディア”?
カルディアスは訊いた、100億年前をまだ信じたわけではないが――
「そちらの時代にも”シルグランディア”がいるというのか?」
スクライトは頷いた、そちらの時代に”も”ということはフェルドゥーナにも存続しているということである。
「”シルグランディア”が宇宙に到達するには少なくともあと200年ぐらいは必要さ。
”シルグランディア”がやったって確証だけはとれないけど、
この時代で宇宙に行くって言ったら”シルグランディア”ぐらいしか叶えることができないからね。
しかもそれもようやく小包を飛ばすなんていう小さな一歩に過ぎないんだよ。
人を乗せる船なんていうのは夢のまた夢さ」
だが、世界は何度も再生して――という話題を出そうとするとスクライトは続けざまに話をした。
「ちなみに、この世界が宇宙に行こうと試みた回数は何度かあるが、
宇宙に何か飛ばした程度なら数えきれないほどあるけど、
実際に船を作って大規模な宇宙進出を試みたのはキミたちの時代までで……僅か426回程度だ。
しかもその中で最も宇宙の深い所に行ったのはキミたちの時代のフェルドゥーナ歴になるね!」
100億年の中で500回にも満たない回数しか宇宙に出てないって……
宇宙に出るのは相当大変なんだなと思い知らされる今日この頃である。
確かに、フェルドゥーナでも超大掛かりな船を作ってまで宇宙に出ている……
そこまでしないと宇宙に出られないというのもそれをある意味物語っているともいえそうだ。
スクライトは話を続けた。
「宇宙進出についての話はそれぐらいにして。
でだ、実は問題の”未来予測”なんだけど、それについてはこれからすることではなく、既に行っていることなんだ。
その結果、私はアーカネリアスの時代でクロノリアの長になることを考え、実際にその座に収まることになったんだ。
現に、私が今こうしている場所というのはまさにクロノリアの長の家でのこと、
キミたちがいる場所は私と同じような環境の場所のハズだ。
あえてお互いを同じような環境にしたのは私との交信を可能にするためと思っていい」
それでここがフェルドゥーナのクロノリアを模した場所というわけか……。
「てことはその”未来予測”があんたに行動を起こさせる発端となったというわけか。
要はその予測した未来がなんなのか……肝心なのはそこってことか?」
フローナルはそう訊くとスクライトはまさにそれだと言わんばかりに指をさしていった。
「いい質問だね! 流石はロイド君! 毎度のことながら感心するねえ!」
だから俺はロイドじゃねえって……フローナルは頭を抱えつつ、呆れていた。