運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第1章 滅亡までのカウントダウン

第13節 タイムリミット

 スクライトの未来予測だが、なんともそっけないものだった。
「で、何を見たんだって?」
 それは――
「いいや、特になーんにも見えなかったよ」
 ……揶揄っているのかコイツ……フローナルは呆れていたが――
「いやいやいや、何も見えないんだよ? それこそ大きな問題と思えないかなあ?」
 ……どういうことだ? フローナルは訊いた。
「わからなかったようだから、もう少し順を追って説明する必要がありそうだね、いいだろう――」
 スクライトは説明をした。 最初にもこいつ自身が説明した通り、こいつができるのはあくまで”未来予測”である…… ”予測”であるため外れるということである。
「私のこの能力については様々な要素を元にして起こりえる事象を見るという手法をとっている。 他にも似たような能力を持つ者もいるようだが、 私の場合は自然界の”マナ”や”エーテル”といった構成要素を基にして可能性を見るというものであり、 計算するとかそう言ったものではなく、 あくまで事実となるであろう事柄を直に見ることができるというわけだ」
 なんともヤバイ能力を持っているやつだな。
「それだけの力を持っているなんて……すごいと思われません?」
 ディルナは訊くとスクライトは頷いた。
「まさにその通り、これだけの力だからね、人々に羨ましがられるし、 疎まれたり悪用されることも十分にあり得る話さ」
 それに対してまたしてもフローナルは核心を突いた。
「なるほどな、それでテメエはそんなクソみたいな性格してんのか。 それならテメエには不用意に関わり合いになりたくないと思いたくもなるわけだ」
 それに対して3人はとても焦っていたが――
「流石はロイド君だね! いつの時代のキミでも私のことなんか常にお見通しってわけか!」
 だから俺はロイドじゃねえとあれほど……フローナルは再び呆れており、 他の3人はフローナルの発言に対して本当にそうなのかと悩んでいた。

 なんとも意地が悪そうな顔をしているのが特徴のスクライト、 第1印象から敬遠したそうな特徴を併せ持っていた。 それに……スキを見せたらどう考えても足元を見られそうだし、 とにかくこいつは関わり合いになったらダメっていうオーラがとにかくにじみ出ている…… まさに文字通りの”クソみたいなやつ”という雰囲気しかしない。 確かに、これならこいつがそんな大層な能力を持っているようにも思えないし、 フローナルの言うように関わり合いになりたいと思うやつも少ないことだろう。

 話は続いた。
「それで、その予測がなんにも見えないというのはどこが問題なんだ?」
 フローナルは訊くと、スクライトは息をのんだ。
「そうだね……予測がなんにも見えないというよりは、 予測した結果、見えるものが何もなかったというのが正確かな?」
 は? 何が違うんだ? フローナルはさらに訊いた。
「予測というからには何かしらが見えてしかるべきなんだよ。 例えば正確な予測ができない場合……それでも、何かしらの出来事がねじ曲がってでも見えてしまう―― つまり、少なくとも何かしらが見えているということなんだよね」
 つまり、それが見えないということは……?
「そうだね、言い換えるとこういうことになるだろうね、 予測して見えた結果が”何もない世界だった”……といえば私の予測した未来が如何に深刻かわかるだろうね」
 なんだって!?
「世界がなくなってしまうってか!?」
 フローナルは驚いていた。
「確証はない……具体的に何が起きているかはさっぱりわからないけど、 こんな予測が見えることはあり得ないんだ、だから……それがどうしてなのかを考えると、 私の能力の性質上、世界が消えてしまっていること以外に説明がつかないんだよ」
 まさかの話だった、なんともとんでもない話を聞かされたもんだ。
「なるほど、話は往々にして理解したつもりだ。しかし、解せないのがそんな話をどうして我々に?  もっと別の、ほかの者でも良かったろう? 我々でなんとかできるものだというのか?  それに……それはいつ起こるというのだ?」
 カルディアスは訊いたがスクライトは何も答えなかった……いや、まさか――
「おい、テメエ、まさか――」
 スクライトは頷いた。
「ああ、そのまさかだよ―― フェルドゥーナ宇宙歴699年に相当するその刻にて、 虚無の空間となるため、この世界は確実に滅亡する!」
 そう、約2年後――フェルドゥーナはまさに世界の終焉を迎えようとしているのであった――。