そして……ようやくフェルドゥーナの民にもわかる言語による話がなされた。
「これ……翻訳されていません! フェルドゥーナ公用語で話をしています!」
ということはつまり――
「俺達に宛てたメッセージってわけか……」
フローナルはそう言うとカルディアスは頷いた。
「そう言うことになりそうだな。なら、心して聞くことにするか――」
そのメッセージはこうである。
「やあフェルドゥーナの諸君! 太陽系から遠路はるばるよくぞここまでやってきたな!
諸君がここへ来て既に500年程度経つがどうだ? 宇宙深探査計画とやらはまだ進んでおるのかね?
既に知っておるだろうが我々は滅びの運命を受け入れることにした! だが、諸君らはまだそれに抗う選択もできよう!
ついてはまず、”惑星ティルフレイジア”へと向かってくれたまえ! すべてはそこにヒントが隠されているはずだ!
さあ、タイムリミットはまだ切られたばかり、時間はたっぷりあるのだから今後についてゆっくりと考えるといいだろう!」
ど、どういうことだ……!?
「ん? ”惑星ティルフレイジア”だと!? なんだ……この妙な感覚は――」
フローナルは身体を軽くさすっていた、寒気がするらしい――
内容が内容ゆえに一同は悩んでいた。
「今のは一体……?」
「滅びの運命……? 我々も同じ目に合うとでもいうのか……?」
「惑星ティルフレイジアってなんだ……?」
すると、カルディアスは――
「”惑星ティルフレイジア”を検索してくれ――」
だが、
「調べましたが該当はありません……」
ないのか。すると、シェリアが――
「あの、その電子媒体にもう一つデータが入っていませんか?
もしかしたらその中に――」
「確かに、それはありそうだな。よし、ならばさっそく――」
とカルディアスは言うと、フローナルは静止した。
「ちょっと待った!
艦長、フェルドゥーナの連邦のデータベースで”ティルフレイジア”ってやつが存在しているか見てくれ!」
えっ、”やつ”ってことは――
「人の名前!?」
カルディアスは驚いていると、別のクルーが――
「ありました! ”セクレアート=ティルフレイジア”という人物がヒットしました!
フェルドゥーナ星の精霊ライト・エルフ族だそうですが、賢者として巡礼したこともあり、
ヴァナスティアにも相当顔の利く人物だとあります! 一体どういうことですか!?」
わけがわからない、なんでこんな遠い惑星でフェルドゥーナの人の名前を聞くことになるんだ!?
「……わかった、ちょっとだけ、時間をくれるか……?」
カルディアスは悩んでいた。
カルディアスは自室で悩んでいた。そこへフローナルとシェリアが入ってきた。
「やあ、来てくれたか。
先にフェルドゥーナに訊く前にキミに訊いておいたほうがいいかと思ってね」
だろうな――フローナルは頷いた。
「キミは”ティルフレイジア”って名前を知っていたのか――」
フローナルは頭を抱えていた。
「正確には面識もないし、そんなやつがいるということも知らん。だが――」
「かろうじて記憶の中にはある、ということか……?」
カルディアスはそう訊くとフローナルは悩んでいた。
「それがどうしてなのかは俺にもよくわからないんだけどな。
だが――その名前を聞くと無性に――」
身体をさすっていた、寒気がするのか。
「じゃあ――エターニスの精霊の感覚で答えてほしい、
そのティルフレイジアがこんな遠い地に対して何かしたと、そういう可能性はありそうか?」
フローナルは考えた。
「なるほど、ヴァナスティアの啓示で俺が選ばれたのもなんだか特別な理由がありそうだ。
その可能性はありそうだな、詳しくは当人に訊いてみるといいんじゃないか?」
ヴァナスティアが言ったのはエターニスの精霊を選んでほしいということ、
実際にフローナルを選んだのはカルディアスなのでフローナルが選ばれたのはたまたまであるが、
エターニスの精霊であり今回の計画の参加要員となりえる人物と言えば彼しかいないため、
必然的にヴァナスティアはフローナルを選んだことになるのである――何かしらの力が働いていると考えたほうがよさそうだ。
とにかく、そう言われてカルディアスは決心したようだ。
「わかった、それならそれで掛け合ってみようと思う。
キミらは惑星ティルフレイジアに降り立つ準備をしてもらっていいかな?」
惑星ティルフレイジアはまさかのフェレストレイア宙域の真っ只中にある惑星だった。
フェレストレイア星同様に太陽系の太陽と同等の星”母なる星”の衛星の一つだということが判明した。
だが、そのような星ならフェレストレイア同様、データベースに乗っていてもおかしくはないのだが、一体どういうことだ?
まずはそれについて、フェレストレイアに掛け合ってみたところ――
「先方はティルフレイジア星を認識していながらも、存在は厳重に秘匿していたんだそうだ。
ゆえに連邦のデータベースへの登録についても避けていて、時が来るまではずっと隠していたことが分かった」
「どうして隠していたんですか?」
カルディアスが言うことにディルナは訊いた。
「それは誰もわからないそうだ。
当時の関係者もすでにおらず、記録も残っていないということらしい。
ただ、確かなことは――そのやり取りが行われたのはなんと15億年も前のことだったらしい」
そんなに大昔の時代に!?
「世界は何度も蘇り、そのたびに発展しては滅亡の刻を迎える――エターニスの真理だ。
つまり、その当時も宇宙を意識して何かしらを行ったってことだな――」
「ということは、その当時も宇宙深探査でこのあたりまで来ているかもしれないってわけか――」
惑星ティルフレイジアへはフェレストレイアに掛け合ったことで降下許可が降りた。
フェルドゥーナにも話をしたところ、艦長も行ってみてはどうかと言われたため、
フローナルとシェリア、そしてディルナとカルディアスの4人で降りることになった。
太陽に相当する”母なる星”も近いせいかそれなりに温暖な惑星なのだが、
何より大気が存在する惑星ということもあり、誰しもが驚いていた。
だが、温暖ではありながらその見た目は殺風景な岩場の広がる惑星であり、
まるで山道を渡り歩いているような感じである。
「本当に降下地点としてはここであっているんだろうか?」
カルディアスはそう言った、フェレストレイアに掛け合ったところ、
彼らが今いる座標に降下するよう勧められたのでやってきた。
周囲はまさに山道の途中のようなところ、
少々平場となっていて転送降下するためのスペースとしてはちょうどよさそうなものだが、果たして――
「何だここは――どこかで見たような記憶が……」
フローナルは頭を抱えていた、急にどうしたんだろうか?
「大丈夫ですか、フローナルさん……」
シェリアは心配そうに訊いた。
「ああ、なんとかな……。とりあえず、先に進もうか――」
と、フローナルはさらに山道を進もうとした、すると――
「ふ、フローナル! ちょっと待った! こっちでいいのか!?」
そう、山道の途中ということは登り方面と降りる方面とがあるということであり、
フローナルは登り方面へと進もうとしていたのである。
「わからない……だが、どういうわけか登り方面のほうに何かがありそうだと俺の記憶が言っているんだ――
信じてもらえないようだが――」
それに対してカルディアスは頷いた。
「わかった、それならフローナルの言うことを信じよう、
ヴァナスティアさんがエターニスの精霊を連れて行けと言ったのはそう言うことなんだろうなきっと!」
改めてだが、やはり今回の件には何か裏がありそうだ。