運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第1章 滅亡までのカウントダウン

第8節 遺言に従い

 惑星TRC063810へと向かうことにした船、例によって小型艦に乗り換えて着陸するわけだが――
「今回の星は安定軌道しているな、空間転送でいけそうか?」
 ディルナは頷いた。
「うん! 今回は着陸しなくてよさそうだね! それで、2人で行くのね?」
「お願いします!」
 シェリアがそう言うとディルナは得意げに答えた。
「任せて!」

 駆け足だがなんとか地に降り立ったフローナルとシェリア。 周囲は何もない平原のような大地の広がるところだが、大気があるようだ。
「寒いな……」
 フローナルは肌をさすっていた。
「以前は温暖な所にあったからこのような光景が広がっているのでしょう。ですが……」
 今回は太陽に相当する星が遠くなってしまったせいで気候が寒くなってしまったようだ。
「要ります?」
 シェリアはいつもの服装の上にオシャレにストールを身にまとって対策し、 もう一つのストールをフローナルに差し出した。
「悪いな、とりあえず、これで何とかなりそうだな」
 と言いつつ、フローナルはそのストールを巻くと、さらに自らに炎の魔法で膜を張っていた。 シェリアも同じように自らに幕を張っていた。
「これで何とかしのげそうですね」
 その光景を小型艦のカメラ越しにディルナは羨ましそうに見ていた。
「便利だねぇ、魔法……オシャレには必需品だねぇ……」
 かくいう彼女は所謂スウェットスーツ型の宇宙服で身を包んでいる。 他方、フローナルはまるで黒の戦闘服のような服装で身を包んでいる、 スウェットスーツというよりは昔ながらの冒険者に近しいベルトやガントレットのような小手(籠手)のスタイルである。 それでも宇宙服というには少々物足りない武装なのはエターニスの精霊ならではの服装であるが、 他の者と比べると非常にオシャレに着こなしているのは彼ならではと言ったところ。
 だが、そのような服装で宇宙に出るものはまずいない……魔法でカバーできる者だけの特権であるといえる。

 フローナルは早速何かを見つけた。
「見ろよあれ、早速何か置いてあるぞ?」
 フローナルとシェリアはコミュニケータを取り出して分析していた。
「何かの容れ物のようですね?」
 シェリアはさらに分析を進めると――
「中に入っている空気はトラジアータ共和国星の成分とほぼ一致するようです」
 ということは……
「トラジアータ共和国星の遺言ってわけか――」
 どうやらそう言うことらしい。

 とりあえず、何かの容れ物らしき物体は転送収容させ、2人は引き続きその星を散策していたが何もなかった。
「ディルナ、そっちからは何か見つかったか?」
 フローナルはコミュニケータ越しに訊いた。
「うーん……特に変わったものは見つかっていないよ。 でも、もうじき日が暮れるから早く帰ってきたほうがいいよ?」
「確かに、日没まであと1時間ってところでしょうか、 没後の想定気温は氷点下50度と出ていますね――」
 それは寒い……流石に魔法でも限界があるな――フローナルは頷いた。
「ディルナ、20分後に着陸地点に戻るから収容してくれ」
「うん! わかった!」

 そして……
「中には何かの電子媒体が入ってるようですね……」
 何かしらの研究施設にて、別のクルーがあの物体を分析していた。
「なるほど、中は取り出せるか?」
 カルディアスは指示していた。
「大丈夫です、これなら簡単に取り出せそうです――」
「わかった、頼む」

 あの後、3人は呼び出された。
「どうしたんだ?」
 フローナルは訊いた。
「せっかく見つけたのだからみんなにも見てもらおうと思ってな」
「トラジアータの遺言書だろう? 重要なことでも書かれているんじゃないのか?  そんなのを俺らが見てもいいのか?」
「だからこそなおのこと見てもらいたいんだよ、言ってしまえば彼らの生きた最期の証そのものだからね」
 そう言われると見るべきか――フローナルは考え直した。
「よし、では早速始めてくれ――」
 カルディアスは別のクルーに頼んでいた。

 だが、実際に見てみたが、何を言っているのかわからない部分が多かった。
「翻訳できないのか?」
「ダメです、当連邦のデータベースには登録されていない言語で話しているようです――」
 だが……語っている内容について、フローナルはイヤホンをつけてマジメに聞いていた。
「こいつの言っていること……」
「なんだ? まさか、わかるのか!?」
 カルディアスは期待していたが――
「いいや、全然わかんねえ」
 カルディアスは落胆していた、でも――
「だが……なんとなくだがトラジアータに生まれてとても幸せだったんだろうな…… しゃべっている背景からそんな感じに聞き取れるような感じがする――」
 ということは、トラジアータでの生活など他愛のない話しているのか、カルディアスはそう思った。
「つまり、トラジアータの人たちは母星を離れず星と運命を共にした可能性が高そうか?」
「かもな、トラジアータ人であることに誇りを持っている感じだ、 だから最期は星を離れず、星と共に生き、星と共に死ぬ選択をしたって感じだな」