運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第1章 滅亡までのカウントダウン

第6節 フローナルとシェリア

 そういえば――カルディアスは女性のほうに訊いた。
「彼女は?」
 フローナルは答えた。
「シェリアだ、知らんかもしれんがプリズム族ってやつだ」
 プリズム族はカルディアスは訊いたことがあった。
「実在していたのか! なるほど、まさに訊いた話の通りか――」
 カルディアスはシェリアをじっと見ているとシェリアは困惑していた。
「ああっ、これは申し訳ない――」
 カルディアスは悪びれた様子で言った。
「キミらはどういった関係?」
 カルディアスは訊いた。
「単なる知り合い同士だな。 プリズム族には世話になっていてな、ついでに彼女を外の世界でも面倒を見てやってほしいって言われて今に至るのさ」

 プリズム族はライト・エルフの一部であり、 容姿端麗な美人しかいなくて女性中心で社会が成り立っているって構図とは訊いたことがあった。 だが、それは大昔ですでに絶滅したとされていた、フェルドゥーナの定説である。
「昔からの里のしきたりで不用意に里の外に出ることは禁止されている……女しかいない種族ゆえの縛りってわけだな。 だが、その中でも”プリズム・ロード”と呼ばれる一族の未来のために外の世界で修行をするものが選ばれることがあるというわけだ」
 フローナルはそう説明した、それで選ばれたのがシェリアなのか。
「だが、プリズム族ってのは昔ながらの種族ゆえなのか、 今の世界の文明には追いついていくことが困難でシェリアもまたそのうちの一人、 森を出て間もなく右往左往してどうしていいかわからない。 それでちょうど里で御厄介になっていた俺に里の者たちが泣きついてきてな――」
 そんなことがあったのか。 そういうことで、フローナルにとって彼女はほぼ妹のような関係であり、 シェリアとしてもそれに依存はないらしい。

 翌朝、フローナルとシェリアは呼び出された。
「さあ、こちらに――」
 なんだろう……2人は車の中へと促された。
「現地か? 何処へ行くって聞かされていないんだが――」
 フローナルはそう言うとお偉方が言った。
「重要なミッションだ、任務は現地で聞いてくれとのことだ」
 そういうことか、フローナルは頷いた。
「わかった、承知した」

 すると、ついた先は――
「大統領府!? どういうことだ!?」
 フローナルは目の前の大きく白いものが大量にかぶさった建物を見て驚いていた。 アルディーニアは雪国、かぶさっている大量の白いものはもちろん雪である。
 警備の者に誘導され、2人は大統領府の中の一室へと招かれると、そこにはカルディアスが……
「あんたまさか……!」
 カルディアスは首を振った。
「私は政府の人間ではないよ、政府の密命を受けてはいるけどね」

 ということで、フローナルとシェリアの2人はその密命を聞いていた。
「”宇宙深探査計画”……もっと遠いところまで行くプロジェクトか――」
 フローナルは言うとカルディアスは頷いた。
「ようやく”宇宙深探査艦メテオ・ナイツ”が完成したそうだ。そこで提案なんだが――」
 フローナルは間髪入れずに言った。
「俺らをそこのクルーに引き入れようってことだろ?」
「察しがいいね、まさにその通りだ」
「あんたみたいなのがわざわざこんなところで密命をバラしてまで話をしようってんだ、 相場は大体決まってるだろ?」
 なるほど、改めてだが、これは単純なエターニスの発想では成しえない人柄である。
「いいぜ、その任、引き受けることにする」
 え……カルディアスは驚いていた。
「そんな、あっさりと2つ返事で引き受けてしまっていいのかい?」
 フローナルは話した。
「新しいプロジェクトのための人選だということはなんとなく察しはついていた、 それが”宇宙深探査計画”というのは別としてな。 それに昨日のやり取りと、わざわざエターニスの人間相手に話をしていること……どうやら必要要件らしい。 だからここに来るまでに覚悟は決めておいたんだ。 そもそも俺らは現状何処に身を寄せるでもない身の上だからどこに飛ばされても問題はない。 シェリアの修行のためにも……ちょうどいいんじゃないか?」
「……はい! どこへでも行きます!」
 なんと、2人はすでに決意が固まっていたようだ。 ということで2人はそれから半年後、宇宙深探査艦メテオ・ナイツに乗艦し、 ”宇宙深探査計画”に参加することとなったのである。

 それから5年後、2人はそのメテオ・ナイツのリフレッシュ・ルームにいた。
「あれから5年、だいぶ慣れてきたみたいだな」
 フローナルはシェリアに訊いた。
「おかげさまで――」
「今でも男の視線が気になったりするんじゃないか?」
「それはもちろん。ですが――それも私がプリズム族であるが故のものですから仕方がありませんね――」
 ずいぶんとしたたかだな――でもそんなもんか、フローナルは考えた。
「それより、フローナルさんは記憶を取り戻せたのですか?」
 フローナルは考えた。
「いいや、全然。 ただ、最近は記憶がなくなったというよりも、”どこかに置き去りにしてきた”と思うようになってきたな。 最初からなかったとか忘れちまったとかそんなんじゃない―― なんていうかこう――何かを思い出そうとすると、 そこにあったはずの記憶が抜けているような感じがするんだよな、その過程と結果、どうなったんだって。 それを単に忘れているだけと言われればそうかもしれんが――」
 シェリアは首を振った。
「フローナルさんがそう言うのであればそうなんだと思います。 私でフローナルさんの手助けができるのならしてあげたいぐらいです――」
 フローナルは首を振った。
「いや、これは俺の問題として受け止めたい。 気持ちだけはありがたく受け取っておくけどな――」