運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第1章 滅亡までのカウントダウン

第4節 はじまりの地と流星の騎士団

 その日、カルディアスはとある執務室に呼び出された。
「お呼びですか?」
 そこにいた者は……ウィドラスだ、彼はカルディアスにソファへと座るように促していた。
「よし。それでは早速始めてくれ」
 ウィドラスは別の者にそう言うと、その者は何かしらの機械の準備をしていた。
「はい、これでOKです。お願いします――」
 すると、カルディアスとウィドラスが向いている空間にスクリーンが現れた。 そのスクリーンはまるで会議室のような場所が――
「ん? あれはまさか、”ヴァナスティア”の!?」
 ウィドラスはその光景に驚いていた、会議に”ヴァナスティア”と呼ばれる場所の使いがいることに非常に驚いていたのである。
「うむ、ヴァナスティアさんの話については一旦後にしようか。 その前にまず、今後の主目的について話さねばなるまい――」
 会議室の真ん中に座っている間違いなく一番偉い人がそう言うと話は進められた。

 一番偉い人、”ヴェラール”と呼ばれる都の政府組織のお偉方である。 スクリーンはそれだけでなく、ほかの都の政府組織のお偉方たちも映し出されていた。 そして、いずれの組織もウィドラスよろしく”ヴァナスティア”が参加していたことに驚いていたらしい。
「さて、今回の議題については前回の会議に参加している者ならいずれもが承知していると思うが、 今後の”宇宙深探査計画”についてだ。 今後はもっと深い領域まで範囲を広げようということだが、ついに見通しが立ったため実行に移そうということだ」
 ヴェラールの偉い人がそう言うとウィドラスは考えた。
「なるほど……ということはついに”艦”が完成したということですかな?」
 それに対し、他の政府組織のお歴々が声を上げていた。
「おぉ、いよいよできたのか――」
「なんと、とうとう実現しよったか……」
「これでまた、宇宙深探査の技術が進歩したということだな――」
 そこへカルディアスが訊いた。
「それで……私を呼んだのはどういったことで?」
 ウィドラスは答えた。
「ああ、それなんだが今後の宇宙深探査計画の陣頭指揮を取ってもらいたいと思ってな」
 なんだって!? 自分がそんな大役を!? カルディアスは驚いていた。
「カルディアスはこれまでの宇宙深探査計画でも数々の実績があるから選ばれたのだ、 彼こそが相応しい、依存はあるまい?」
 ウィドラスはそう言いつつ、彼の華々しい経歴のテキストをスクリーン上に乗せた。 カルディアスは照れ臭かった……
「なるほど、しかもダークエルフ族ですか、確かにちょうどよい人選ですね……」
「種族差別したいわけではないが、欲が薄いとされる精霊系でここまでの武勲を併せ持った者ということならまさに適任だな」
「体力も人間族の倍はあるらしく、知人も一晩程度は寝ずとも動けるとは聞いたことがあったな」
 無論、カルディアスは反論した。
「おっ、お言葉ですが、私よりももっと適任の者がいるのでは!?  例えば……そう、ヴェラールの”ドラウス”とか、”ドーアニス”の”バルトラ”とか!」
 するとドーアニスの者が話した。
「確かにバルトラも適任と言えば適任だが、彼は引退を間近に控えている―― その点では寿命も長いキミのほうに分があるようだな」
 それは――
「ドラウスは確かにキミと同じダークエルフだが―― 今回あえてキミを推しているのは他でもない、”ドミナント”の者だからだ」
 そう、ウィドラスとカルディアスはドミナントの組織の者である。
「すべてのはじまりし地のはじまりの教え、 ヴァナスティアの教え第1章第1節、世界に等しく生を成す者はすべて等しくあれ――」
 これまで沈黙を守っていたヴァナスティアの女性の方が話を始めた――

 ドミナントはヴァナスティアの女性が言う通り、”すべてのはじまりし地”と呼ばれている。 太古は”ローア”と呼ばれる時代、この世界はドミナントの地から始まったとされている。 そう、今回の計画でもまさにドミナントから始まって成り立っていたというフェルドゥーナの歴史になぞらえ、 宇宙探査クルーの代表もドミナントの者にすべしと決まったのだという。
 そして、ドミナントの組織員の中では最も成績を修めている者といえば、 カルディアスを置いて他になかったのである。
「なっ、なるほど……わかりました、そういうことならこの私が引き受けましょう…… いえ、私にやらせてください!」
 カルディアスは堂々と言った。それには誰しもが拍手をしていた。
「決まったようだな、よし。 そして、貴官に預けることになる船の名前だが、それだけはこちらで決めさせてもらうことにした。 それは大昔にこの世界の邪悪をうち滅ぼし平和をもたらしたとされる伝説の騎士団”メテオ・ナイツ(流星の騎士団)”だ。 ということで貴官はこれより”メテオ・ナイツ”に乗船し、宇宙深探査計画の陣頭指揮に当たってもらいたい」
 カルディアスは深く頭を下げ、承知いたしましたと元気よくあいさつした。だが、そう言えば――
「ん? あの、そういえば、ほかの人選はどういった者を?」
 カルディアスは不思議そうに訊いた。
「それについてはこれまで通りに選ぶとよいだろう。 ああそうそう、それからヴァナスティアさんは特別な人材をご所望のようだ、聞いてはもらえぬだろうか?」
 えっ、特別な人材?