運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

第1章 滅亡までのカウントダウン

第3節 闇に浮かぶ星を見ながら

 救護センターでフローナルは起き上がった。
「っと……なんか変なものを食らったって思うと妙に身体がだるいな……」
 それに対し、近くにいたディルナは心配そうにしていた。
「なっ、なんだ!? おいおいおい、そんな顔するなよ、俺は大丈夫だから!」
 フローナルは焦っていた。すると、ディルナは――
「だよねー! フローナルだもん、そう簡単にくたばったりしないんだよねー!」
 嬉しそうにそう言うと、フローナルは頭を抱えていた。
「なんか調子狂うな――」

 救護センターから出てきた2人、周りには誰もおらず、広い通廊でただただ2人は窓を眺めながら歩いているのみだった。 窓から眺める景色はまさに宇宙そのもの、真っ黒な闇の中に瞬く星々の光が織りなす世界が窓の外にあるのである。
 そんな宇宙艦の内装はメタリックな色合いが織りなす世界なのが一般的だが、 この艦は大きな艦であるという事情故か少々特殊で、内装は白っぽい色合いで統一されていた。
「静かだな――」
 フローナルは言うとディルナは頷いた。
「消灯時間とっくに過ぎているからねぇ……」
 えっ、そうだったのか……よくよく見れば通廊の照明は少々暗かった、 もうそんな時間なのか――フローナルは考えた。
「休むときはセンターに戻ろうね!」
 だが、フローナルはぼーっとしていた。
「消灯時間って言われるとなんだか眠たくなってきたな――」
 そう言われてみればそれもそうだ。

 2人は窓を眺めていた。
「あのさ、フローナルって”エターニス”の精霊なの?」
 ディルナは訊いた。
「ん? ああ、珍しいだろ?」
「うん! 珍しい! だけどさ、もっと浮世離れした存在だって聞いてたから…… なんていうかこう……不思議ちゃんって言うか、ふんわりしたっていうか……」
 フローナルは頭を掻いていた。
「当たらずしも遠からずだな、実際には人による。 ただ、それに当てはまらないやつに多いのは的外れなやつだ、そんなところだな」
 それはそれでまた面倒だなぁ……ディルナは悩んでいた。
「ねえ! エターニスって”彩りの大地”ってところにあるんでしょ!?  やっぱり名前の通り、すごく素敵なところなんだよね!」
 フローナルは考えた。
「まあな、確かに色とりどりの花が咲いている、女子には人気のスポットなのは違いないな」
「だよね! やっぱりそうなんだよね! いつか行ってみたいなぁ!」
 ディアナは興奮していた。
「話に付き合ってくれてありがとう!」
 ディルナはそう言うとフローナルは頷いた。
「いいんだ、他に何もすることがないからな」
「うん! そうだって言ってたね! おやすみなさい!」
 ディルナは元気よく言うと、そのままセンターに戻って行った。

 ディルナが去った後、消灯時間故かさらに照明が暗くなった。 もはや灯りは非常灯しか点いていない。
「なんだか、とんでもないところまで来てしまったような気がするな――」
 フローナルは窓から外を眺めながらそう思っていた。 窓からは大きな惑星が見えた、緑と青の織りなす美しい星……フェルドゥーナにも似ているような星だが、 あれこそがこのあたりの宙域の名前にもなっている惑星フェレストレイアだ。 カルディアスによれば美女の多い星と聞いているが……
 すると、まさにそんなフェレストレイアから来たんじゃないかと思わせる女性がやってきた、 例のプリズム族のクルーである。
「おや、まだお休みになられていなかったのですね?」
 フローナルは何それとなく答えた。
「それを言ったらあんたのほうこそな」
「まあ、それはそうなんですが」
 彼女はにっこりとしながら返した。

 2人はそのままリフレッシュ・ルームに行った。 そこには椅子も机もあり、艦内でも緑を見ることができる癒しの空間である。
 そして2人は窓際へ、外を眺められる席へ座った。
「艦長もまだ起きていますよ」
 女性はそう言うとフローナルは頷いた。
「艦長も”ダークエルフ”族だもんな、体力が持つのか――」
「おや、流石にご存じで――」
 ダークエルフということは一応精霊族ということである。 昔は肌が褐色であることが一般的だったが、 最近はむしろそっちのほうが珍しくなってきているほどであり、 太古の昔は”ライトエルフ”だったことの名残のほうが強く出ているらしく色白とは言わないまでも、 それでもダークという感じが一切しない色合いである。
 だがその一方で、フローナルとこの女性はその”ライトエルフ”と呼ばれる種族である。 しかもこの2人、そのライトエルフの中でもかなり特殊な存在で――