運命の黄昏 ~エンド・オブ・フェルドゥーナ~

プロローグ 運命の黄昏し終わりの刻のはじまりの刻

 再び大きな木の上にて、2人で話し合っているところに場面は戻る。
「ったく、なんとも物好きな方だ……何故フェイタリスの肩を持つことなど――」
「しかし、実際に見てきたことについてはもはや信じるしかあるまい?  それに”肩を持つ”というのも妙なものだな……我々は世界の管理者たる存在、 一丸となって世界を裏から支える存在であり、敵も味方もないのだがな?」
 それに対してカティラスが驚いていた。
「精霊王!? お前までフェイタリスの……!」
 精霊王は首を振った。
「今回のフェイタリスと第1級精霊殿の行動を見るなり考え方を改めさせられた。 彼らは純粋……損得勘定で動いているわけではないのだ」
 カティラスは言い返した。
「我らも別に損得勘定で動いているわけでは……。 とはいえ、我々もこの世界で生きる身、つまり生きる上での最低限度の保障は必須と言えるもの、 それを必要としているに過ぎんのにそれを”損得勘定”と言われれば……」
 精霊王は再び首を振った。
「ということはフェイタリスと第1級精霊、対して我々とでは物事の価値観がそもそも異なるということらしい。 世界を管理するうえで何処に命を懸けるか、それがわからぬ限り2人とは相容れることはないということだ。 そう……我々は岐路に立たされている、これまでの精霊界に準じて世界を動かしていくか、 それともフェイタリスについていくか……」
「前にもそのような話をしていたようだな。 最も古い精霊の記憶では……話が決裂したのちにあいつ自身が去って行ったようだ、 これはいつの時代の話なんだか知らぬが――」
 すると、
「よう! なんだ、大昔のことでいつまでもいつまでもぐちぐち言ってんのか?」
 なんと、第1級精霊が!
「あ、あなたは!」
「なっ!? 何でここに!?  私はただ、昔からフェイタリスに連なる存在とはこんな感じだったのかと嘆いているだけだ!」
 そう言われて第1級精霊は考えた。
「そうだな……俺の知り得る限りだと、そもそもそりが合わない感じだな。 そもそもお前は”因果の精霊”でフェイタリスは”運命の精霊”、 言ってしまえばどちらも”運命の精霊”という同じタイプの存在のハズだが、 片や敷かれたレールを馬鹿正直に歩んでいく堅実かつ保守的なタイプと、 片やそもそも道なき道を自らの手で切り開いていく大胆かつ革新的なタイプ…… どちらも同じ運命を司る精霊のはずなのに考え方が真っ向から異なる、 だからお前らが仲が悪いのはむしろ仕方がないことだと思っているが――」

 話は続いたが、精霊王は第1級精霊に訊いた。
「そういえば、どうしてこちらに?」
「ああ、久しぶりに外に出てみるのもいいかと思ってな」
 どういうことだ? 2人は訊いた。
「この際だから俺もフェイタリスに続こうと思っただけだ。 そんな時にお前らがこうして話をしていたから立ち寄っただけだ」
 フェイタリスに続くというのはつまり……
「まさか、人間界に降りるというのですか!?」
「そんな、無茶です!  そもそもあなたは完全体、つまりは”転生”なされないことには人間界に降りることは!」
 だが、第1級精霊は――
「”転生”すりゃあいいんだろ?  もちろん、そうするからには赤ん坊から始めなければならないことはわかっている、と言いたいところだが…… そいつは流石に面倒だからちいっとばかし趣向を変えてみようと思ってな」
 何をする気だ? 2人は互いに顔を見合わせていた。
「あれ? 忘れたのか? 俺は今や第1級精霊だがそもそも叩き上げなんだよな、 言ってしまえば大昔は第5級精霊だったんだ。 だからそいつを利用して少し前から流行っている”疑似転生”とやらに挑戦してみるのもいいかと思ってな」

 ところ変わって……ここはどこだ?  そこはとにかく荒野の広がる場所、真っ暗闇の中、まさか世界は崩壊し、荒廃してしまったとでもいうのだろうか。
 そんな中、砂礫の中に2つの遺跡のようなものが……
「問題の場所はここか?」
 男はそう訊いた。それに対して女が答えた。
「間違いないわ、救難信号はこの場所から出てるはずだけど――」
 救難信号――どうやら余程文明の発達した世界観らしいが…… 男は周囲を見渡していた。
「つってもな、その割には”船”が何処にも見当たらないんだが――」
「”船”はこっちで探してみるね。 だからフローナルは問題の信号の発信先を特定してね!」
 そう言われ、フローナルと呼ばれた男は頭を掻いていた。
「やれやれ、世話の焼ける要救助者だな――」
 そう言うとフローナルは片方の遺跡の中から出ようとした。
「おっと、その前に――」
 フローナルは魔法のようなものを唱えると、自分の周囲に何かが覆われた!
「もって30分ってところか――」
 そう言いつつ、フローナルは扉のようなものを開けて外に出て行った。