レミシアはクロノリア側にあるテレポート装置のところへとやってきた。
「とりあえず、フィールドの異常はなかったことは確認できたから転送装置はONにしてもいいよな?」
ディアはそう言うが、レミシアは遮った。
「いいえ、私らはその結果だけをレイに伝えましょ。
ONにするかどうかはクロノリア民の判断に委ねるしかないのよ。」
それもそうだ、クロノリアとの行き来を認める判断をするのはクロノリア民たちだ。
「んじゃ、俺らのすることは……」
と、ディアはいいつつ戻ろうとすると、別のクロノリア民たちが――
「ん? あっ! そういえばまだやることがあったな!」
レミシアは頭を掻いていた。
「そういえば忘れていたわね。
しゃあない、もう少し付き合ってやるか。」
クロノリアはこれまでの古臭いしきたりの町から文明都市へと移行しようと考えたのだった。
そう、レイやクラナの言うように、時代は変わっているのだ、クロノリアは前進しなければならない時が来たのである。
それには、アトローナシアからやってきた2人の職人が携わったこと――後のクロノリアでは未来永劫語り継がれることになったのである。
レイは祠から飛び出してきた。
「ふう、疲れたな……」
といいつつ、はっとしながら自分の左腰に目をやると――
「しまった! この剣、どーしよーか考えてないっ!」
祠の中でどうするか考えようとしていたがすっかり忘れていた彼女だった。
「ま、まあいいか……次入った時にまた考えよ――」
というより、祠の中に入って運命の精霊様が現れないかなと彼女は期待していたのだった、次回こそ!
そして、彼女はそのまま帰路につこうと階段を降り始めようとしていた。
すると、そこには――
「あ! レイさん!」
そう、そこには一度里に戻ったはずのラーシュリナの姿が――
「ラーシュリナ!」
そう、彼女はいよいよ処置を施してきたのである、
プリズム族として――否、女性として、彼女ら本来のしきたりに沿って彼女はしかるべき処置をしてきたのである。
これまでは使命感だけでやってきた彼女だったが、今回の処置の目的は自分がプリズム族であるということと、
プリズム族の使命というケジメをつけるための決断だったのである。
そして彼女は――此度はリミュールではなく、
今後はクロノリアの番人としてレイと共に生きる選択をするために戻ってきたのだ、否――
「レイさん、初めまして! 私はラーリュシナ=ラーヴィス、プリズム族の女児でございます!
よろしくお願いいたします!」
と、彼女は丁寧にあいさつをすると、
レイは嬉しそうに駆け寄り、彼女を抱きしめて言った。
「初めまして、美人のお姉さん! これからもずっとずっとよろしくね、ラーシュリナ!」
そう……こうして、2人は出会ったのだ。
時の流れというのは何とも複雑なもので、時には思わぬ悪を引き起こすこともある。
だが、それでも時の英雄たちは悪に立ち向かい、世界を救うことを諦めないようだ。
此度もまた、時の力を味方につけ、運命の赴くままに悪と対峙し、そして貫いた英雄たちがいた。
とはいってもそれはそのような力を味方にすることができるような特殊な英雄だったのかもしれない。
だが――そういった者だからこそ英雄に選ばれたのかもしれない――
そう考えるとこの世界はなんともうまくできているといっても過言ではなのかもしれない。
つまり――この世界はたとえ何者に脅かされようと、我々は安心して眠ることができるようだ。
それは何故か? そう、時代にはその時々で常に最適な英雄が選ばれ、巨悪に立ち向かうからだ。
クロノーラ・クロニクル
Chronola Chronicle
~完~