スクライティスは考えていた。
「闇はそこかしこに存在する、か――まったくもってその通りだね……」
それに対してガトーラが言った。
「闇もあらば光も存在するものだろう? まさに表裏一体ということだねぇ……」
スクライティスは悩んでいた。
「それはそうだけど、でも、どうもこの世界の闇は深いようだ、
どういうことだろう? この謎だけは私にも解けないよ」
ガトーラは答えた。
「簡単だよ、それはすべて”創造主の意思”というものさ」
”創造主の意思”……
「神のみぞ知るってやつだね、まったく、創造主も面倒を押し付けてくれたもんだ――」
すると、ガトーラは明後日の方向を向いて呟いた。
「そう、この世界の闇は深いんだ、いずれ、大きな闇が押し寄せてくる日がやってくる、
その時、我々の立ち位置は何処にあるのだろう――」
それに対し、スクライティスは悩んでいた。
「そっか……妙だな、だとしたら私のご先祖様のあてが外れることになってしまうが――」
そう言われてガトーラはスクライティスの方へと向き直った。
「いや、私のほうのあても確定しているわけではない、あくまで噂だからね。
それに……最悪の場合はどちらの自体も起こってしまうことになりえるんだよ」
スクライティスは考えた。
「時代の英雄……」
ガトーラは頷いた。
「いずれにせよ、今の我々で考えることではないね。
その時代の英雄にすべてをゆだねるしかないね――」
ヴィラネシアは考えていた。
「この世界の闇はだんだん深くなっていくわね。
ということは――いずれジェラレンドとは決着をつけなければならないってことか……。
あいつはこの世界の闇を吸収する存在……
やりたくはないけど、あいつがあいつでなくなったときにちゃんと仕留めてあげるから、覚悟しときなさいよね。
でも……そうなったら私の立ち位置も……変わっているといいわね――」
そして、彼女の周囲……ハーハラルは次第に消えていった、彼女の姿さえも――。
「どうやら無事に役目を終えられたようね、
次に目覚めるときはいつのことになるのやら――」
そして――時は動き出す! それはとある刻において、船で旅をしている一団のところにある女性が――
「どうもこんにちは!」
その女はローブを身にまとい杖を携えた賢者風の女だった。
しかしそのいでたちと装いといえばなんとも妖しく、
ローブの中の上半身は豊満なバストサイズを隠すこともなく白い服の布一枚で隠されていた。
さらにはそれっぽいサークレットも身に着け、さながらどこそかの某女賢者様である。
そんな見た目に、なんだか妖しい色香をまといし彼女、まさか――
「こんな時にフェリシアに渡ろうだなんて――巡礼ですか?」
彼女はそう訊いてくると一団の女は言った。
「まあね、そんなところ――と言いたいところだけど――」
彼女はにっこりとしていた。
「はい! 巡礼というには少々物々しい感じのするメンバーさんたちですからね!」
こっ、この女――その一団はほぼ全員がその女性に対して警戒していたが、訊かれた一団の女は――
「そうね、ちょっとしたワケアリってところよ。
流石にそのあたりは見抜かれている気がするわね。それにあなた――」
彼女はにっこりしながら答えた。
「はい! オーナー様! 私はリミテッド・ホルダーのラーシュリナと申します!」
ラーシュリナってまさか! もとい、一団の女は頷いた。
「ああ、うちに登録していたんだ、しかもリミテッド・ホルダーってなかなかの腕前ね――」
よくはわからないが、一団の女の営む企業の一スタッフということらしい。すると――
「なんだ、この怪しい女――」
「なんだあんたは――敵か?」
と、一団の男2人は怪しんでいるが、一団の女は――
「違うわよ、この方は見ての通り賢者ラーシュリナ様よ。
そんな方が私に接触してくるなんて――どうしたいの?」
どうしようかな、ラーシュリナは悩んでいた。
すると、一団の女は気さくに――
「ならこうしましょ。ついてくる?」
なんだって!? この怪しい女を!?
一団の男2人は驚くと、一団の女は言った。
「まあまあ、落ち着きなさいよ。
怪しいも何も、賢者ラーシュリナ様は賢者ラーシュリナ様よ、それ以上でもそれ以下でもないわ。
彼女の身元は私が保証するから安心しなさいよ。
そういうことだからよろしくね、賢者様♪」
と、なんともきさくだが緩い調子で得意げに言い放った一団の女に対し、ラーシュリナは――
「はい! しっかりと頑張らせていただきますので、よろしくお願いいたしますね!」
なんとも前向きだった。しかし、その時――
「魔物だー! 魔物が来たぞー!」
と、注意を促すアナウンスが――サンダー・フールだ!
「おいでなすったな――」
一団の男2人は剣を構えていた。
そして、一団のメンツが次々と武器を取り出して構えていると――
「でかいのが来たぞ!」
なんと、そこには大型の鳥が――
「ハルピュイア――また面倒なのが出やがったな――」
一団の男は構えていた、見るからに如何にも大いなる力を持っていそうな感じのやばい魔鳥だった。
「そいつはガードが硬いからな! 気をつけろ!
おい! こういうのはお前の出番だろ!?」
と、一団の女はそう振られたが、
「そうね、あいさつ代わりにやってみたらどう?
お誂え向きにちょうどいい武器もここにあるし――」
と、一団の女は剣を取り出すと、ラーシュリナはそれを受け取り――
「わぁ! オーナーお手製の最強武器ですねー!」
と、嬉しそうに言った。
「おっ、おい――魔法剣よりも空襲撃を期待して言ったんだが!?
だから魔法じゃなくて――」
一団の男は狼狽えながら言うが、一団の女は――
「そうよ、だから彼女に任せることにしたのよ、彼女の実力をあんたたちに教えるためにね――」
まっ、まさか――するとラーシュリナは剣を用いてそのまま突進!
「えいやっ! このっ!」
と、剣をふるいつつ、ハルピュイアを牽制! だが、その剣裁きといえば――
「あの女、マジか――ただ者じゃねえな――」
一団の男は唖然としていた。
「だが、肝心の敵にはまったく通じてねえぞ――」
別の一団の男はそう言うが――
「だそうよ。そろそろトドメ刺しちゃう?」
と、一団の女は促すと――なんと、ラーシュリナは飛んだ!
「なっ!? マジか!?」
一団の女は得意げに言った。
「あれでもああ見えて”フェザー・ブレイド”を語るお方だからね。
しかも昔っから跳ねっ返りのお転婆娘だったみたいよ。」
と、ハルピュイアの脳天に一撃! って、えっ!? 知り合い?
「いいえ、これでも初対面ですね。彼女は私のことを知っているって言うだけの話ですね!」
と、ラーシュリナは得意げに言った、跳ねっ返りのお転婆でラーシュリナという名前、
そして”フェザー・ブレイド”……それはラーシュリナというよりもむしろ――
この世界は多くの名もなき英雄たちの物語があるらしい。
次はどんな英雄の物語が待ち構えているのだろうか。
- fin -