それから数年後のこと……
「レイさんはどこですか?」
ウェイドは彼女の家に赴いたがそこにいたのはクラナだけだった。
「今はいないよ、また試練の祠に行ってるんじゃないかねえ?
多分数か月は戻らないハズだよ」
それは残念だ……ウェイドは肩をがっくりと落としていた。
その様子を察してクラナは訊いた。
「あれかい? もしかして、町を出るのかい?」
ウェイドは頷いた。
「それでみなさんに挨拶しようと思ったのですが――」
クラナは考えた。
「そうだねぇ、世界の復興を考えているハンターとしてはこのままここに居つくのはよろしくないだろうからねぇ――」
ウェイドは再び頷いた。
「おっしゃる通りです。
ここでの私の役目はもうなくなったことですし、そろそろ本業のほうに戻ろうかと思いまして――」
クラナは頷いた。
「レイに伝えとくよ、あの子ならきっとあんたに会いに行こうと考えるだろうさ。
ミュラナと行くんだろう? リミュールの里に行くことがあったら顔を出しなよ、
いずれまた、みんなと会える日が来るだろうさ」
ウェイドは考えた。
「そうかもしれませんね。
ですが――私としてはそれよりも、アーケディスのほうが皆さんに会える可能性が高いように思いますね、
だって、古の勇士たちの集う場所だったのでしょう?
現世でもそれは同じだったように思います」
言われてみれば確かに……クラナは考えた。
「確かに、それもそうだね。
さあさ、いつ発つつもりかわかんないけど、まずはドミナントに戻りなよ、
新たな門出を切るつもりなら行ってくるんだろ?」
「もちろんです、それに……ミュラナにもあの太陽の祭壇の光景を見せてあげたいんです、
最近はとてもいい天気が続いているようなので――」
一方のミュラナはクロノリアのふもとでヴィラネシアと話をしていた。
「そうなのね! やっぱり彼と一緒に行くのよね!」
ミュラナは頷いた。
「それが私の役目ですから――」
役目――ヴィラネシアは考えた。
「ヴィラネシアの役目は……」
ミュラナは心配そうに訊くと彼女は答えた。
「ええ、そう――つまりはそう言うことね。
とりあえず、私の役目は一区切りついたようなもんだからね。
だから――とりあえず、この世界から一旦退場することになりそうね――」
「なんか、世界に縛られているような気がするのですが――」
「そうかしら? まあ、言われてみればそんな感じもするけどね。
でも、それってあなたたちだってそんなに変わらないことなんじゃないかしら?」
言いようによっては確かにその通りか――ミュラナは考えた。
「言いたいことはわかるけどね。
でも……まあ、そうね……私の役目が終わることになったらあなたたちと同じように生きることができるかもしれないわね――」
なんとも特殊な存在である彼女だが――果たして、彼女はその通りに生きることができるのだろうか。
「さあさ、それよりも彼がお待ちかねよ。行くんでしょ?」
ミュラナは頷いた。
「ヴィラネシアも元気で!」
「ええ。もう二度とあなたには会うことはないと思うけど――でも、あなたたちのことは忘れないからね――」
レミシアたちは船に乗っていた。
船にはディアとシャルアン、リアントスとシュタル、さらにはマグアスと、何故かスクライティスの姿も。
「なんか、ろくに挨拶もしないで出てきてしまったな――」
ディアはそう言うとレミシアは答えた。
「そうなんだけどね。
でも、私としてはいつでもレイに会えるような気がしているからね。
ウェイドだって、本業や彼の目的を考えればアトローナシアにやってくるのは時間の問題……
あいさつも軽く済ませるぐらいで十分でしょ。」
それもそうだな、ディアは考えた。
「で、とりあえず”アルティニアの港”でいいのかしら?」
レミシアはそう訊くとリアントスは答えた。
「アルティニア……懐かしい言い方してくれるな」
だが、
「何言ってんのよ、アルティニアはアルティニアよ。」
リアントスは耳を疑っていた。
「世界崩壊前は”アルティオリア”と呼ばれていたらしいが、
それこそシルグランディアの手の者がアルティニアを復興させるに当たってそう名前を付けたらしい。
言ってもアルティニアは”テラ・フレア”の爆心地からは少々遠目ということもあってか被害も少々で、
それゆえにだったら早いほうがいいということで早めに復興したんだがな」
マグアスはそう説明した、そうだったのか――リアントスは考えた。
「そっか、シルグランディアの手の者――
ネシェラお姉様はアルティニア育ちだからシルグランディア的にも思い入れがある場所だった、
だから早く復興させたんだろうね!」
シュタルはそう言った、そういうことか。
だが――リアントスは青ざめていた。
「……そう言われると俺的にはろくな思い出がないんだが」
ああ、ネシェラのせいでか、お察しします――。
しかし、今となってはいい思い出……になればいいんだが。