とうとう現れたらしい封じられし災悪……そいつはまさしく封じられていた悪という感じだった。
「すごい力を秘めているな……こんなのがこの地にずっといたっていうのか!?」
マグアスは驚いていた。
「……古のローアの時代から封じられていた悪……
意思なき力だけの存在がこうしているのはおかしい――
ということはつまりこれは……」
クラナはそう言うとスクライティスが答えた。
「ああ、確実に第3者が……”闇の眷属”たちによって作られし存在ってこと、
ローアで世界を闇に閉ざすことに失敗したから後の世でそれが成就されるようにとひそかに仕掛けておいた時限爆弾のようなものってわけだ。
だから、もしこいつが自発的に目覚めてことを起こそうものなら――」
クレアが言った。
「世界は闇の世界に……つまり、”闇の眷属”たちの世界となってしまうわけですね――」
「だけどそうは行かないよ! この時代の勇士たちである私らがいる限り、こいつのスキにはさせないんだからね!」
レイは封じられし災悪に剣を向けてそう言い放った。
相手は流石に強大にして絶大な力を誇る敵、一筋縄ではいかなかった。
一撃一撃がとても重くのしかかり、マトモに攻撃を受けようものならただでは済まされない。
「ウェイドさん!」
「ありがとうございます、ミュラナさん! 防御膜で守りを固めないと軽く吹き飛ばされてしまいますね――」
ウェイドは盾を構えて敵の攻撃をやり過ごしていた、彼の盾にはミュラナの魔法によって強化されていた、
そこまでしないと攻撃をやり過ごすのは困難のようだ。
「だが、あの2人が崩れたらこの陣形も瓦解する――囮役に攻撃をひきつけてもらわんと成立しないが……」
だが、次の一撃が……
「なんだいあれは!?」
クラナは気が付いた、なんと、封じられし災悪は力を集中している!
「マズイ! ウェイド! 逃げるんだ!」
ディアは慌てて言うが敵の攻撃は早かった……
「うわあ!」
ものすごく長い腕による拳がウェイドに襲い掛かり彼は思いっきり吹き飛ばされた!
「ウェイドさん!」
だが、今度はそう言うミュラナに対して力が……
「ミュラナ! 危ない!」
シャルアンが言うが……
「させないわよっ! このっ!」
と、レミシアが力の限りそいつの腕に向かって槍を投げつけると、そのまま封じられし災悪に立ち向かった!
「ねっ、ネシェラ! 無茶するんじゃねえ!」
リアントスはそう叫ぶとレミシアは言った。
「してないわよっ! いいから、こいつは私がひきつけておくからさっさと何とかしろっ!」
と、なんと、封じられし災悪の攻撃を次々と交わしていた! その様を見てリアントスは悩んでいた。
「……そうだった、ネシェラには一撃すら加えられたことがなかったな。
なら安心だ! しっかりと仕事してやっからそっちは任せたぜ!」
ネシェラの”本気避け”相手に一度も命中させたことがないリアントス、言われた通り、攻撃に専念することにした。
「確かに、姉様が被弾するところはまず見ねえな! なら、今のうちにやるしかねえか!」
ディアは槍を持ち替えて封じられし災悪に立ち向かった!
そして、次々と攻撃は封じられし災悪へと集中し、とうとう……
「捕まえた! さあ、今よ!」
レミシアはタイミングよく封じられし災悪の腕に向かって剣を差し込んだ!
巨体相手にそれをやると力によって振りほどかれ、最悪そのままなぎ倒されてしまうのだが、
そこは全員で集中攻撃しているだけあって敵のほうも戸惑っているようだった。
そして、そのまま悪は斃された――
「やったな!」
「大きさの割にはなんとも大した相手じゃあなかったな」
ディアとリアントスは嬉しそうに言った。
「しかし、ちょっと拍子抜けですね、こんなもんでしょうか?」
「確かに、手ごたえはそんなでもなかったわね」
クレアとクラナはそう言うがマグアスは言った。
「それこそ、自発的に目覚めているのであればこんなもんでは済まなかったということだろう。
今回は先に駆除できて何よりということだな」
さらに……ミュラナはウェイドを優しく介抱しながら言った。
「ほら、ウェイドさんがつないでくださったおかげですよ――」
「そっ、そうですか、とにかく、良かったです……」
そして、一行はその地から帰ろうと発つことにした。
それぞれ帰る場所があるのだ、すべては終わった、また新しいを生きるために戻るんだ――
ところが……
「うん? なにこれ!?」
シュタルは気が付いた、足元には何やら不気味な魔法陣が……
「これは……また随分古い魔法だな、効果は――」
と、スクライティスは足元を見ながらそう言うと、彼らは……
そして、その場でずっと沈黙を守っていた者が現れたのである。
「くくく……時代の英雄とはなんとも単純なものだな……
このような如何にもな存在を出しておけばそれを斃そうとするわけだが……」
そいつは、まるで闇の塊と言わんばかりの不気味な存在だった。
「しかし、この時代の英雄とやらをこうも簡単に処理できるとは……
もっとも、”時の呪縛の方陣”の前にはどのような存在であろうと無力も同然……
お前たちの時は奪った、さあ、この地で永久の眠りにつくがよい! クカカカカカカ!」
そう、彼らはこいつの力によって時が止まってしまったのである、もはや絶体絶命!