クロノーラ・クロニクル

第5章 時の生み出せし申し子

第96節 暗闇の洞窟の先

 うかうかしていても仕方がないのでとにかく処理を開始することにした一行。 だが、敵の狙いはすぐにわかってしまった。
「なんだ!? おい、気をつけろ! 同じようなやつが次々と現れているぞ!」
 リアントスは注意を促した。
「えっ!? うわっ! しかも1体2体なんて数じゃないじゃん!」
 レイは注意された方向を見て驚いた、そこには似たような存在が無数に佇んでいた。
「だが、所詮は雑魚、いくら群れたところで大したことは――」
 マグアスはそう言いつつ続々と処理し続けているが――
「でも、ちょっと気味が悪くないか?  あえてこの程度の個体を無数に出している意味ってなんだ!!?」
 と、ディアが言った。
「確かに、弱い個体を続々と出し続けている意味ってなんだろうね?  どうせならドンと強い個体1体を差し向ければいいものを、この程度――」
 と、スクライティスがいうと、周囲の敵を魔法で一掃した!
「案外強いんですね、いつも力を発揮されないんで戦えないものだと思いました――」
 ウェイドは呆れ気味に言った。 それには何人かが賛同し、何人かに笑われていたスクライティス。 それに対して彼は悩んでいた。

 すると――
「すごいパワーだよ! まるで底なしみたい!」
 と、シュタルは気が付いた、どうやら力は無尽蔵にあるらしい。
「こんなの聞いてないわね! こうなったら私が抑えてくるからあなたたちはこいつらを何とかして!」
 と、ヴィラネシアはそう言うと、奥のほうへと向かっていった。
「え、大丈夫なのかな!?」
 シュタルは驚いていた。
「未だにあの子の正体はそんなによくわかっていないけど、とにかく信じるしかないさ、具体的に何するかは別にしてね――」
 と、クラナは言った。すると、レイは――
「ん……あれ!? レミシアお姉様は!?」
 彼女の存在がないことに気が付いた。
「言われてみれば、あの女がこんな状況で話に参加してねえのも妙だと思ったら……どこ行った!?」
 リアントスは言うとシャルアンも気が付いた。
「あれ!? ディアさんもいません!」
 なんだって!?

 だが、そんな心配もすぐになく、どうなったのかはすぐにわかった。
「姉様! ここにいたのか!」
 ディアは急いでレミシアの元へと向かっていった、彼女はクレーターの反対側のほうにいた。
「ん? ええ……、あいつら、意思っていうか……なんか、向こうに向かって相手を排除しようって感じがしたからね。 だとしたら、問題はその裏に何かがある……そう考えてここに来たんだけど――」
 と、彼女の前にはまさに暗闇の洞窟とでも言うべき邪悪なほら穴があった。
「一体これは!?」
 ディアは言うとレミシアは答えた。
「ええ、私も見つけたばかりよ。 だから呼びに行こうと思ったところだけど……どうやらその必要もなさそうね。」
 すると、レイたちがそこへやってきた。 彼女らはレミシアから話を聞いていた。
「つまり、さっきのあいつらって……」
 クラナが言うとレミシアは答えた。
「恐らく、この空間から外に出れることを利用して、外の世界を駆逐しようって腹なんじゃないかしら?」
 それはマズイのでは!?
「それは織り込み済みよ、そもそも入口に砲台を設置しておいたのは主にそれが理由ね。」
 あんた、ますますヤバイ人だな……。

「そういえばヴィラネシア、どこかに行っちゃったよ?」
 シュタルは言うとレミシアは答えた。
「さっき会ったよ。 クレーターの中に入ってなんかやってくるってさ。 もしかしたらさっきの連中……禁じられた災悪の力の根源でも暴けるかもしれないわね。」
 そんな、クレーターの中は危ないというのに……
「でも彼女、なんか特殊な存在だったよな、もしかしたら彼女なら大丈夫なのかも?」
 ディアが言うとクラナは頷いた。
「確かに、信じるしかないね――」
 となると、問題は洞窟だけということか。
「この先にはなんとも怪しげな空間が広がっているな、 詳細はわからんが、この先からは特に何も感じられん…… いや、何かがあったとしても、我らの力ではそれを感じることができないようだな――」
 と、マグアス、聖獣の力をも通さないということか。ということはつまり――
「言うまでもないよね、私の力でさえも通用はしないようだ。 もっとも、ここに来てからというものの、私の力なんぞではやつの存在をつかむことすら不可能だよ。 もしかしたらこの中の空間の何かが関係しているかもしれないね――」
 スクライティスが言った。さらにリアントスは考えていた。
「ってことは――入って確かめるしかねえってことだな。 しかし、入って無事でいられるかどうかだな。 あのジェラレンドってやつが闇に感化されやすかった、 しかもやつの闇を受けて何人かが正気を失った―― それを考えると何とも入りづらい空間だな」
 確かにそれもそうだ。いや、待てよ……?
「レイ、このタイミングでその剣を使ったら?」
 レミシアは促した、そう――
「時を刻みし刻の運命の標の出番だね!」
 シュタルは言うとレイは力強くフェイタル・クロニクルを振りかざした!
「やっぱりな……だから最初からこの女共に任せておけば良かったということだな」
 リアントスは愚痴っぽく呟いていた。

 レイが力強く振りかざしたフェイタル・クロニクルから一筋の光が放たれると、 それは洞窟の中へと吸い込まれるように突き進んでいった。
 その光の筋の通りに進んでいく一行は離れることなく奥へ奥へと進んでいく。 そして――
「ん? 出口じゃないか?」
 ディアが言うとシュタルはそこへと駆け寄った。
「なんか、外へと通じているみたいだよ?」
 洞窟を抜けて外――
「あら? みんなもここに来たのね?」
 と、出口で待ち受けていたのはヴィラネシアだった。
「ここにいたのね。で、そっちはどんな感じだった?」
 レミシアは訊いた。
「うーん、一応エネルギーの元みたいなのは断ったつもりなんだけど…… ただ、どうも他の場所にも散らばっている感じなのよね――」
 つまり、1つ断つだけではダメってことか。
「まあいい、いずれにせよ、突き進むだけだな」
 リアントスはそう言った。

 ということで、一行は再び荒野を進み始めた。
「洞窟を抜けてもまだしばらくかかりそうだな」
 マグアスはそう言うが、スクライティスは悩んでいた。
「どうしたんだい?」
 クラナは訊いた。
「うーん、よくわからないけど……なんか妙な感じがするんだよねぇ――」
 しかし、考えていても仕方がなさそうだ、こいつの能力も通じないようだし。
 すると――
「あれ? また赤い谷じゃあないですか?」
 ラーシュリナは気が付いた、例の少々不安な橋がかかっていたあの谷である。
「いずれにしても、渡るしかありませんね――」
 ウェイドはそう言いつつ、一行は悩んでいた。