廃屋の広がるその荒野へと早速繰り出した一行、
そこでスクライティスが何やら考えていた。
「今度はなんだ?」
リアントスが訊いた。
「ん? いや、敵はどんなに強大だろうなと思ってさ」
リアントスは考えつつ、呆れ気味に訊いた。
「そういやこういう肝心の時に限って役に立たねえ能力だったな」
スクライティスは呆れたような感じで答えた。
「勘弁してくれよ、本当に手厳しいんだからさ。
んで、こういう時にはなんと、お誂え向きの場所があるんだよ!」
リアントスは頷いた。
「10億年前もクソライトの野郎がほざいていたな。
どうしても封じられた邪悪が強すぎて歯が立たねえ場合は試練の祠を開放するって話か」
スクライティスは感心していた。
「へえ、10億年前もそうだったのか。
もちろん、私の話もその試練の祠の件だよ」
「つっても今だって開かれてるだろ? 許可の有無は別にしてな……と言いたいところだが、
今回はなんとクロノリアの長もいるからその辺の心配はなさそうなもんだが、
現状で開かれている以上にあの祠に何があるんだ?」
リアントスはそう訊くとスクライティスは得意げに答えた。
「そいつはいい質問だね!
それはもちろん、この世界を救った数多の英雄たちの精神を投影することで試練の祠は新たなるダンジョンを形成することが可能となるわけさ。
しかし、それにはまず、この世界で問題となっている巨悪……つまり、禁じられた災悪の間近まで行かなければならない。
何故かというと、そういった存在の周囲には確実に強力な力場が形成されるから――」
リアントスが続けた。
「”フォース・ゾーン”ってやつの話だな、
力の大きいモノがその場にあると、その周辺にも力が集まってくるというやつ……
生物だろうと無生物だろうと同じことが言えるってわけか。
確かに、ランゲイルにもジェラレンドっていう妙な奴がいて、まさにそいつの周りにいろんな羽虫共が群れていたな」
スクライティスは頷いた。
「まさにその通り。
けど、精神っていうのは人々の記憶でもある……
つまり、禁じられた災悪のそれを体感した者であれば、この世界を救ってきた英雄たちの精神が想起される……」
レイは話を聞いて考えていた。
「それで私が祠に入った時に運命の標が見えたりイセリアお姉様に会えたりしたってことだね――」
つまり、レイのその現象は彼女の中に潜んでいる英雄の精神が想起させられた結果ということである。
が、しかし――この方の解釈はそんな仕組みとは真っ向から異なる独自のものであった……。
「禁じられた災悪と対峙することで試練の祠のダンジョンが開かれるとかなんとか言ってるけどそんなのただのこじつけでしょ。
要はラスボスの禁じられた災悪を斃すと、ラスボスを斃す前の時間軸の状態で試練の祠にある裏ダンジョンに行けるんでしょ。
無論、裏ダンジョンにはラスボスをはるかに上回る強い敵がウヨウヨといるってオマケ付きでね。」
無論、発言者はレミシアである。
「どっ、どういう意味ですか!? 斃す前の時間軸!? 禁じられた災悪よりも強い敵ですか!?」
ウェイドは焦っていた。
「私らは知らなくたっていいの、禁じられた災悪を斃すことが目的。
一部の読者に伝わるように言っただけ。」
読者って……ここでまさかのメタ発言ですか、流石です。
荒野を突き進んでいく一行、途中で魔物と遭遇しながらも突き進んでゆく。
「スキありっ!」
「このっ!」
と、ウェイドを狙っている敵に対してレミシアはフェイズ・ガンをぶっ飛ばし、レイも同じく剣で敵を掻っ捌いた!
「えっ!? れ、レミシアさん、レイさん……」
ウェイドは悩んでいた。
「敵を狙っている間が一番無防備だからね、あんたのことを思う存分に利用させてもらったまでよ♪」
「そうそう♪」
別にいいといえばいいんだが、そんな露骨に――ウェイドはさらに悩んでいた。
「あんたはああいう武器は使わないのかい?」
クラナはリアントスにそう訊いた、レミシアの持つ銃という代物についてだった。
「それもありなんだがな。
ただ――使う技術もないのにこの現状、どうやらそれをやっている暇はなさそうだ。
また次の機会にさせてもらうしかねぇな――」
使いたいのは山々ということか。
「だったら私が使い方を教えてあげようか? セレイナのイケメンな旦那様なんだから特別サービスしておくわよ♪」
「え、遠慮しとく……」