イセリアは自分に甘えているレイの話を聞いていた。
「なるほど、運命の精霊様がそんなことをね――」
”神のいる世界から生まれ変わった存在”――果たしてどうなんだろうか?
すると、彼女は――
「当たらずしも遠からず、つまり違うといえば違うんだけど、
本当にそうじゃないのって言われたら――否定はできないわね。」
マジか! レイは驚いていた、少なくともその手の存在らしい……。
まさに異世界転生物語、その手のお話の異世界転生者は往々にしてとんでもスキルを引っ提げて世の中を均していくというのが様式美である。
ゆえに、イセリアは本来ならローアを救った伝説の勇者として名を残してもいいハズなのである。
「でも、私は名を残すつもりなんてないからね。
ただ――90億年後にレミシア=シルグランディアっていう子孫まで残しているってのは興味深いわね。
そんなやついるわけないって思ってたけど気が変わったわ、だったら女イセリア=シェール、
やれるところまでやってやろうじゃないのよ、もっとも、それを90億年続けるのは私だけの役目じゃあないんだけどさ。」
それはそうなんだが。だが、恋愛に前向きになってくれるとは……
「言っとくけど、恋愛する気は一切ないからね。
こんな女でもいいっていう変態がいたら考えてやってもいい程度の話だからね。
無論、どこぞの馬の骨はNGよ。イケメンか可愛い男の子しか受け付けないからね。
もちろん、イケメンか可愛い男の子でも性格馬の骨は論外だかんね。」
あ、レミシア姉様と全く一緒だ、本当に子孫なんだなとレイは思った。
ということで、レイは本題を切り出した。
「異なる空間をつなげる方法か……」
どうにかならないの? レイは訊くと、イセリアは悩んでいた。
「ごめん、私ではどうにもならないわね――」
そんな! だが――
「ふふっ、諦めるのはまだ早いわよ。
だって、90億年後までに間に合えばいいんでしょ?
まだ1年も経ってないから、考える時間はいくらでもあるってわけよ。」
と、得意げに話す彼女、まさか――
「90億年もあればいろんな事が起こるでしょ。
だったらそこからいろんなネタを流用して考えるまでよ。
別に私が考えなくたってほかの誰かが見事に事を成し遂げてくれるはずだわ――
言ってもみんな私みたいな性格の子孫だったらみんな同じようにしか考えないような気がするけど。」
そう、レミシアもそうだが、気分屋なのが最大の欠点である。
いずれにせよ、彼女のペースで事を運ばせるしかない……
そして……レイは戻ってきた。
「お帰り。無事にイセリアに会ってきたようだな」
と、フェリンダ……あれ? 彼女はそのまま帰ったんじゃなかったっけ?
「見送りが必要になったからずっと待っていることにしたのだ、
レイがイセリアに甘えている間もな……」
それには長い時間をかけ過ぎた……申し訳なく思っていたレイだった。
「冗談だ、ここは時の流れさえも揺らぐ空間だからね」
な、なんだ――言われてみればそれもそうか、レイはほっとしていた。
そして、レイはなんとか挨拶を済ませて戻ろうとすると――
「そっちではない。こっちに戻るんだ」
えっ、こっちって? レイは訊いた。
「別にどちらでもいいんだが、せっかくならな……」
何? よくわからない。
でも、運命の精霊様がいうのだからと、レイは運命に導かれた道筋を歩むことにした。
「わかった! ありがとう!」
レイはそう言いつつその場を後にした。
「ネシェラ……あとはあなたに任せたからね」
レイは気が付くと――
「あれ? ここはどこ?」
どういうわけか祠の入り口とは違うようだ、どうなっているんだろうか?
いや、まさか――運命の精霊様のお導きによるもの!?
「だから、だったらなんで俺がクソライトのことをよく知っているって知ってんだよ!
確かに同じ時代を生きていたのはその通りだが知り合いみたいな付き合いをしていただなんて一言も話してねえだろ!
だいたい俺はあいつのことが嫌いなんだ! お前もあいつと同じ空気を感じるだけあってテメェのことも嫌いなんだ!
おら、そいつは流石によくわかってんだろ! ティルフレイジアだからな!」
え!? あれれ!? アーケディス!?
「へっ? なんのことかな? というか、いきなり嫌われているだなんて、私はなんてつくづく運がないんだろうねぇ……」
「とぼけてんじゃねえ! このクソラティスが!」
なんか、リアントスとクソラティスが言い合っている場面に出くわしたようだ。
そうか、運命に導かれて、どうやら過去に戻ってきたようだ。
「あれ? レミシアさん、どうしたのです?」
ラーシュリナは訊いた、レミシアは何やらずっと黙って考えていたようだ。
「いや、最後にガトーラが言い残していたことが妙に引っかかってね――」
ガトーラは最後にこう言い残していたのである。
「そいつはそのうち必ず現れるハズ――それが何か?」
シャルアンはそう言うとレミシアは首を振った。
「ううん、じゃなくてその次――”いよいよその状態たる原因が明るみになる時が来るんだ”よ。」
確かに、そんなことを言っていた。
「ジェラレンドみたいなのが現れることを示唆していっているんだろう? ほかに何が?」
マグアスは言うとレミシアは悩んでいた。
「いえ、ただ……妙に引っかかるのよねぇ……」
リアントスは考えた。
「言われてみれば、なんかずっと引っかかっているものがあるといえばあるな――なんだったっけか?」
シュタルも悩んでいた。
「うーん、なんだろ……なーんかずっと忘れている気がするんだけどなぁ……」