問題は亜空間の入口で何が阻んでいるのか……
レイは早速試練の祠へと向かったのだった、どうやら心当たりがあるようだ。
「運命の標! この間追っている時に見たアレのハズだ!」
おっと、既にヒントに接近していたのですか、すると――
「そうそう、これだ!」
というと、
「空間を隔てるものが現れし時、再びここに来なさい――」
この間は”空間を隔てるものが現れし時”などという言葉を軽く聞き流していたのでその時の印象は対して残りはしなかった、
所謂、妄言の一つ程度にしかとらえていなかったものである。
が、今回は違う……恐らく、試練の祠での妄言……いや、出来事だから意味のあるものであるはずだ、
そう思ってレイは考え直してその場所へとやってきた。
本当はもっと早く着てもよかったのかもしれない、それこそランゲイル島へと上陸する際も空間を隔てるものである障壁に遮られていたのだ。
だから……とりあえず、過ぎ去ったことはどうでもいい、今回こそはこれに賭けてみようか、レイはそう思ってやってきた。
そこにはどこかで見覚えがありそうな老婆が立っており、そんなことを言っていた。
「そう! だから来たんだよ!」
すると老人は頷いた。
「そう。レイ、そもそもお前のこれまでの旅はすべてこの祠の中に刻まれている……」
言われてみればそんな気がする。
というか、そもそも試練の祠が見せる光景は入っている人の深層心理であるため、
彼女が入ればそうなるに決まっているのである。すると――
「流石は”時が生み出せし申し子”だね、試練の祠のを理解しているのか……」
何言ってるんだこのババァ……そもそもそういうもんだって教えられているんだが、レイは呆れていた。
「あの……なんでもいいんだけど――」
レイは呆れながらそう訊くと老婆は改まった。
「本題に入りたいようだね? だけど残念ながらヒントはない、自分で見つけてくるものだよ――」
そう言われてレイは気が付いた。
「ん……? もしかして、クラナ……?」
老婆は頷いた。
「それは今の時代のクロノーラを担う者のことだね?
私は過去にクロノーラを担った者だよ。
名はクラーネア=オンティーニ、史上初めてクロノーラを担った存在さ」
なんと! まさかの初代クロノーラだって!?
それに、それでもオンティーニの者がずっとクロノーラをやっているのか……レイは驚いていた。
「初代クロノーラの精神がこの祠の中に!? 90億年も? いや、聖獣って確か――」
「そう、聖獣の仕組みが成立したのは70億年前だからそれからということだね」
そうだった、そう言ってた、それそれは……レイは改めて驚いていた。
「それで……そんな人が私に何の用だったの?」
レイが訊くとクラーネアは言った。
「むしろあんたがここに用があってきたんだと思うけど、それはどうでもいいか。
私はその70億年前に新たな悪が生み出されたことでこの時代での修復を図っているところなのさ」
新たな悪!?
「あんたらが”禁じられた災悪”と呼んでいるのがそいつなんだよ。
だけど、70億年前に生み出されたそいつのことは他の誰もが知りっこないんだ、何故だかわかるかい?」
えっ、それはそもそもどういう話なんだろう? レイは訊いた。
「70億年前に……”禁じられた災悪”が生み出されたって?」
クラーネアは語りだした。
「この世界には変な不具合があってね、
巨悪がひとたび葬り去られれば新たな悪が生じるようになっているんだ、
まるで魔物が生み出されるかのようにね」
この世界に魔物はつきもの……それと同じように巨悪も存在する?
「70億年前に一つの巨悪が現れた、”封じられた邪悪”というやつだよ。
だけどそいつは時の英雄たちによって葬り去られることとなったんだ。
しかし、そいつはそれから60億年……今から10億年前に目覚めた。
もちろん、その際も時の英雄たちによって葬り去られることとなった。
だけど……その邪悪なる思念は時を超えて70億年前に現れることとなったんだ」
えっ、それというのはつまり――
「悪の連鎖というやつだね。
もしかしたらもともと”禁じられた災悪”というのがこの世界に潜んでいて、
”封じられた邪悪”の存在をフラグにして現れただけなのかもしれない。
まあそれはともかく、とにかく、時代はその”禁じられた災悪”がいないハズの時間軸で時を刻み続けるはずだったのに、
今では70億年前からそいつが存在する時間軸になってしまっているようなんだ。
もちろん、元からいないハズのやつが存在する時間軸で時を刻むようになってしまったことからいろいろと世界に不都合が生じることは必至だね。
所謂、タイム・パラドックスと呼ばれる現象が起きてしまうのさ、
歴史を書き換えてしまうような出来事が起きてしまうんだよ」
つまり、クラーネアはそういうことが起きないように、
これまでの出来事がつじつまの合う時間軸になるようにとなんやかんややっていたということらしい。
時渡る翼と呼ばれる聖獣クロノーラ……そんなことまでしているとはなんだかすごいな……
いや、そういえば自分が次代のクロノーラ候補なんだっけ!? 自分がクラーネアみたいなことができるというのか!?
……それはやばい、聞けば聞くほどヤバイ内容である。