そして……その場には何やら亜空間らしきものが……
空間であって空間ではない空間、ゆえに亜空間――
「ったく、展開が追い付かなくて私にはさっぱりよ、なんなんこれ?
いろいろやっといてなんだけど、要はどういうことなん?」
レミシアは訊くとリアントスが答えた。
「強力な力をぶつけることで無理やりこじ開けることが可能になっているんだよな。
それこそ10億年前も”封じられた邪悪”が亜空間に闇の世界を展開して、
その亜空間こそを真とするとかたくらんでやがった」
シュタルが続けた。
「だけど、”封じられた邪悪”は亜空間に逃げ込んで入口を閉ざしちゃったんだよね。
だから、それでいろいろと必要なものがあって無理やりこじ開けて封じられた邪悪を斃すことまでは成功したんだよね。
でも、この世界を脅かそうっていう存在はいろいろといて、
亜空間からその機会をうかがっているはずだって提唱した精霊様がいてね、
それで考えられたのが”鍵の魔術”ってやつなんだって!」
”鍵の魔術”? レイは訊くとクラナが答えた。
「文字通りの鍵の魔術ってことさ。
この世界の管理者たる存在には必ずと言っていいほど含まれているもの……
端的に言えば”精霊力”、高級精霊の魔力ともいうべきもののことだよ。
魔法にその力を含ませることで亜空間に直接攻撃することが可能になるんだよ」
なんと、そんなことが。ただし、
「といっても直接空間を殴れたところでそこまで大きな影響を与えることはかなわない。
せいぜい亜空間を揺るがす程度が関の山ってところだな」
と、リアントスは言うとマグアスがさらに続けた。
「ところが昔に多くの亜空間を吹き飛ばすことに成功したのだ。
そう、それが200年前の話だな」
200年前って世界崩壊!?
「この世界の管理者たる存在に含まれているということは、言ってしまうと聖獣にも含まれている力ということでもある。
そこで世界崩壊の兆しに目を付けた聖獣がいた、”エイクリアス”だ。
無論、我々の使命は世界を守ること、世界の守り神たる聖獣だからな。
だが、やつは違った、あいつは無謀にも世界の滅亡を派生させる”テラ・フレア”の開発については前向きでな、
人間界でそれが開発されることが禁じられていることを知っててやつは自分の町に研究者を招いては”テラ・フレア”の完成にこぎつけたのだ」
なんと、まさか――
「そう、やつは世界崩壊に加担したといってもいいだろう、聖獣自らな。
無論、やつの最大の目的は”テラ・フレア”の発動によって悪しき者がくすぶっているすべての亜空間を吹き飛ばすこと、
自らが持つ”鍵の魔術”を”テラ・フレア”に乗せてそれを実行したのだ――」
聖獣自らそんなことを――。
そして、エイクリアスは”テラ・フレア”と共に自らの存在を滅ぼしたのだった、”鍵の魔術”を解き放って――。
「世界崩壊はいずれかは起こる、それは避けられないことだ。
それなら、できるだけ意味のある行動をするべきだ――やつの口癖だった。
言うことは私も賛成だ、だが――計画が計画だからな、我も流石にその行動だけにはなんとも言えなかった。
我はあの時、どうしたらよかったのだろうか――今でも正解が見つからんのだ……」
なんと、このクソ鳥にそんなことを思うような心があったとは――レイはマグアスを見直していた、ほんの少しだけ……。
だが、このクソ鳥の心のうちはよくわかった気がする、それはそれで同情してやることにするか。
「とはいえ、今回のパワーも当時の”テラ・フレア”ほどではないとはいえ、相当のエネルギーだったはずだ。
それでも破壊しきれなかったということは――」
リアントスはそう言うとヴィラネシアは頷いた。
「そういうことね、ここに潜んでいるやつは相当に闇が深いやつ……
ウフフッ、そんな悪い子にはたっぷりとオシオキが必要ねぇ……」
レイは前に出た。
「諸悪の権化にはきっつーいオシオキが必要だぁ!
ようし、待ってろよー! 邪悪ー!」
そう言いつつ、レイはそのままクロノリアへと引き返して――
「えっ!? レイ!? どうしたんだよ!? 行くんだろ!?」
ディアは驚いているとクラナが呆れながら答えた。
「あんた、いい加減にしないとレミシアからまたお叱りを受けるよ――」
というが、どうやら手遅れだった。
「この前に魔がさして聖獣扱いしてやったけどやっぱり前言撤回するわ。
さあ、行けるもんなら行ってみなさいよ。」
えっ……ディアは悩んでいた。そこへそっとシャルアンがフォロー……
「あちらの空間の手前に薄い膜が張ってます! あれは行く手を阻む何かだと思います!
恐らく、魔法の力だけで破ることはかなわなかったんだと思います!」
あ……ディアは唖然としていた。
「やっぱりディヴァイアスにはシャルアン様が必要だねぇ……」
クラナは呆れていた。が、その傍らで……
「ふう、危ない危ない……私も気付いてませんでしたから危うく顔面を衝突させるところでした――」
誰とは言わないけど、あんたの場合は持ちネタ的に気付いていないのが正解だな。