ある日のこと、ナイザーがなんだか羨ましそうにしていた。
それは何故かというと――
「それは素敵です! ぜひ見てみたいです!」
「そうですねぇ……今はまさにちょうどいい時期ではないでしょうか、
太陽がくっきりと見えるようになりましたからもしかしたら――」
「わあ! 言われてみればそうですね! 絶対に見てみたいです!」
なんと、ウェイドがミュラナと何とも仲睦まじそうに一緒に歩いていたのである。それは――
4年前、レイがラーシュリナと塔の上で思いを話し合っている頃――
「ディアさん? 呼びましたか?」
「おう――」
ディアがウェイドを呼び出していたのである。
「プリズム族のお姉様たちが気を落としているから、だから力になってやりたいなと思ってな――」
ウェイドは頷いた。
「プリズム族の魔女としての本性の件ですよね、
でも、私としては別にプリズム族は魔女と言われてもそうですかぐらいにしか思えないですからね――」
ウェイドはさらに続けた。
「そもそも女性ってそう言うところがあるじゃないですか?
だから私としてはプリズム族ってそこまで特別な種族とは思っていないんですよね。
それこそ癒しの精霊様とまで呼ばれてその通りに自らを抑え込もうとしている……
むしろ、魅力的な女性たちではありません?」
ディアは考え、揶揄うように訊いた。
「ミュラナだろー?」
そう言われてウェイドは照れていた。
「ったく、悪い男だなぁー♪
ミュラナに気があるくせに、逆にミュラナは明らかにウェイドに気があるのにそれを無視し続ける男……
もう、ミュラナの色香に飲まれて人生ハッピーになっちまえよ! この野郎!」
ウェイドは頷いた。
「いえ、むしろ踏ん切りがつきました。
というのも、どう思いを伝えようと悩んでいたんですよ。
言っても相手は魔女とも言うような方、あんまり面白くない内容で伝えたって彼女も喜ばないですよ
……そう思っていたんですが、どうやら私の思い違いのようで、シンプルに伝えるのがいいかと思いました。
それに……伝えるのなら今が絶好のチャンスのようです、彼女のそばにいてあげようと思います」
そう言いつつ、彼はそのままミュラナのもとへと行った。
残されたディアは頭を掻いていた。
「……ウェイドってなんだかんだ言われてるけど、そばにいてあげる、か――流石は大人だな。
そう言われると、俺もシャルアンと一緒にいてあげないといけないな――」
ということで、ウェイドとミュラナの思いが成就した結果の姿がこれである。
「ウェイドさん♪ 今日はこんなのを作ってみたんです♪ いかがですか♪」
「おおっ、これは! おいしそうですね!」
「ウェイドさんのために作ったんですよ♪ お口にあえばいいんですけど――」
「もちろん! 食べますよ! ミュラナさんが作るご飯はおいしいですからこれだって間違いないに決まっています!」
「まあ! そんな――嬉しい……」
2人は木陰のベンチに座ってなんとも仲睦まじそうに話し合っていた、
これはどうやら冷房をつけないといけなさそうな感じである。
そんな一方で、ディアとシャルアンも愛し合っている……のだが――
「行ってきます」
「行ってらっしゃいな♪」
と、お互いにあいさつを交わすと、ディアが言った。
「そう言えば、姉様がクロノリアのフィールドを改良するプランを立てんのに話したいって言ってたから遅くなるよ」
ディアはそう言うとシャルアンは嬉しそうに答えた。
「はい! レミシア姉様から聞きました!
後でお昼ご飯とお夕飯を持ってきますから楽しみにしていてくださいね、ディア様♪」
そう言われてディアも嬉しそうにしていた。
「うん! シャルアンの作るご飯は格別だからねぇ♪ 楽しみにしているよ! じゃ、行ってくるね!」
と、ディアはなんともいつになくマジメな感じだった、これまでの彼にしてみれば何とも以外なぐらいである。そこへレミシアが現れた。
「やっと一人前になったって感じねあいつ。」
シャルアンが訊いた。
「レミシアさんは行かないんですか?」
レミシアは頭を抱えていた。
「女って生き物は厄介でね、今日は午前中はお休みよ。
その代わり、やることはやるからそれで勘弁してもらおうと思って。
私がいない分はあいつが穴埋めしてくれるハズだからその点でも問題ナシよ。」
所謂、生理というやつだそうで。それに、ようやくディアは彼女から聖獣として認めてもらったようだ。
「しっかりとした女がいるとやっぱり違うわね、あいつ――」
「わ、私そんなんじゃないですよ……」
「プリズム女は昔から男を立たせるだけのものを備えているのよ、
妖魔の女ってぐらいだから男をその気にさせるのが得意ってワケ。
そのうえで、シャルアンみたいな芯のしっかりしている気立てのいい女がいてくれるからあいつは聖獣として立派になってくれるってワケよ。
いわば、聖獣ディヴァイアスは女と一緒になることで完全なものになるってワケね。
これまでの聖獣ディヴァイアスもだいたいそんな感じだったみたいだから間違いないわよ。
つまり、シャルアンも聖獣ディヴァイアス、それに必要なピースだったってことね。」
シャルアンは照れていた、私が聖獣ディヴァイアスに必要なピースなんて……と。