レイはディアを呼び出そうとしたが……
「あれ? ディアどこ?」
クラナが答えた。
「さあねえ? ウェイドと一緒に出掛けてくるって言ってたよ。何か用?」
レイは悩んでいた。
「そう……じゃあいいか、仕方がない」
と言いつつ、レイは塔の方へと向かっていった。
「なーんかありそうな感じだねぇ……まっ、いいか、全部レイに任せておけばいいみたいだ」
マグアスが訊いた。
「なんだ? また厄介事か?」
クラナは嬉しそうに答えた。
「どうやらそれがまーるく収まるみたいって話だよ、多様化の時代ってやつだね」
マグアスは首をかしげていた。
レイは塔の上までやってくるとそこにはラーシュリナがたたずんでいた、
なんとも絵になる光景である、レイは彼女に見とれていた。
「うーん……これはむしろ、ラーシュリナじゃなくて私のほうが男だよね――」
と言いつつ、レイはラーシュリナの元へ――
「あっ! レイさん……」
「人のこと呼んでおきながら待たせてごめんね――」
お互いに申し訳なさそうにしていた。
そして、レイはラーシュリナの隣にやってきた。
「ラーシュリナ、大丈夫?」
ラーシュリナは悩んでいた。
「とうとう見られてしまいましたね、私たちの魔女としての本性を……。
私たちはああいう思いを秘めながら常に生きています。
それこそ、私とシャルアンは元の性別もあって、なおのことです。
そう、私は魔女ラーシュリナなんです、こんな本性を抱えて生きているのが私という存在なんです。
やはり、私たちは森を出るべきではありません。
だから……しばらくしたのちに森に帰ろうと思います――」
レイは何も言わずにラーシュリナの話を聞いていた、そして――
「うん、ラーシュリナの本性はよくわかったよ。
そうだよね、自分の里に男を持ち込まないといけない魔女として育てられているもん、
当たり前と言えば当たり前だよね」
といいつつ、レイはラーシュリナの方へと向いた。
「じゃあさ、今度は私の本性を教えてあげるね!」
といいつつ、レイはラーシュリナを――
「えっ――」
「ウヘヘヘヘ……ラーシュリナお姉ちゃんは私のものだぁい♪
ラーシュリナお姉ちゃんのためなら何でもするんだぁい♪」
レイはラーシュリナをしっかりと抱きしめて楽しそうに言った。
「れっ、レイ……さん……!?」
そしてレイは態度を改め、懇願するかのように言い放った。
「そうだよ! ラーシュリナお姉ちゃんは稀代の魔女に相応しき者だもん!
だからいつでも魔女ラーシュリナを名乗ってこの世をお姉ちゃんの美貌で支配したっていいんだもん!」
そっ、そんな――ラーシュリナは困惑していた。
「レイさん……私はそんな――」
「ラーシュリナ! ラーシュリナは私のことどう思ってるの!?」
そっ、それは――ラーシュリナは悩んでいた。すると彼女は――
「……あの、言っていいというのなら……。
もちろん、私もレイさんのことは好きです、それこそ、気持ちはレイさんと同じです……。
だけど私、こんなこと言うとレイさんが嫌がるかもしれないから言うことはできませんでした。
だからレイさんとは姉妹のような関係でいようと思っていたんです。けど――」
「ううん、それ以上は言わなくていいよ。
確かに、ラーシュリナは私にしてみればいいお姉ちゃんだけど、でも――
それに、ラーシュリナよりも私の方が男みたいなもんだよね。
いろいろとチグハグな私たちだけど、それだけにとっても仲良しだし、
いつまでも一緒にいたいなって思っているんだよね、だから――」
すると、ラーシュリナはレイの胸の中へと飛び込んでいった。
「いいんですねレイさん――私はずっとレイさんと一緒にいていいんですね!?」
そんな華奢な身体の彼女の身をレイはしっかりと抱きしめていた。
「おいで、私のラーシュリナ……私の前でなら何を気にしなくたっていいんだから――」
クラナはティンダロス邸の屋上へと昇ってきた、そこでは――
「なんだい、あんたは本性そのままって感じねぇ――」
レミシアはひたすら剣を打っていた。その傍らでクレアがえんえんと泣いていた。
「ったりまえでしょ、私は自分正直に生きてんのよ。それよりクレア、大丈夫?」
すると、クレアは態度が180度変わり――
「はぁい♪ レミシアさんに心配してもらった途端に一気に痛みが吹き飛びましたぁ♪
案外顔ぶつけるのも悪くないもんですね! 10億年生きてて初めてそれに気が付かされましたぁ♪」
どういうことだよ……とにかく、今度はレミシアにべったりと甘えてきた。
「ちょっと! 仕事の邪魔でしょ! ったく、しょうがない子ねぇ。」
そして今度はレミシアも楽しそうにクレアの頭をなでていた。
そしてそこへ――
「あー! クレアばっかりずるーい! 私もー!」
シュタルも甘えていた。
「こーら! あんた人妻でしょ! ったく、あんたたちって本当にしょうがないわねぇ。」
やはり得意げなレミシアだった。そんな光景にクラナは唖然としていた。
「確かに……自分正直に生きているね――正直過ぎて逆に恐怖さえ覚えるよ」
裏表なく堂々とし過ぎているがあまり、もはやなんでもどんとこいという感じしかしない――
こんなの敵に回したらヤバイに決まっている。