リアントスはダークエルフの女と話をしていた。
「結局、何がどうだっていうんだ? あれは一体何だったんだ?
流れを感じたからには明らかに異常ってことだろ?」
女は考えた。
「うーん、それが、あっちでもよくわからないんだよね。
だから、もしかしたらこの世界を創造した人が何らかの意図で追加したものかもって言ってたんだ」
どういうことだ? リアントスは訊いた。
「だって、大昔からあるものだったら精霊会でも把握しているような封じられた邪悪みたいなのがいるわけじゃん?
でも、ウロボロスもそうだけどさ、精霊会でもどうもそれとは違うものって意見が分かれているんだよね」
それはそうと、クラナが話をしだした。
「話しているところ悪いけど、その口ぶりからすると、あんた高級精霊かなにかかい?」
クレアが嬉しそうに言った。
「久しぶりですね、シュタルさん! 高級精霊ですか!? とうとう昇るところまで昇ったんですね!」
なんと、彼女もまた10億年前の勇士の一人なのだという。
「クレア! 久しぶり! 元気してたー!? また顔ぶつけたりしてなーい!?」
「うっ……シュタルさんのおまじないか何かでこの呪い、何とかなりませんかねぇ……」
呪いなのかよ。
「言ってしまえば俺とセレイナとクレア、そしてシュタルは10億年前の同期ってわけだな」
とリアントスは言うと、シュタルはリアントスに訊いた。
「あっ! セレイナ! もちろん、元気しているよねぇ!?」
レミシアが答えた。
「セレイナなら元気よ、あとは愛しの旦那様が帰りさえすれば完璧ってわけね。」
彼女に対してシュタルは驚いていた。
「えっ……? ウソ!? もしかして、ネシェラ姉様までいるの!?」
レミシアは悩んでいた。
「……何よ、本当に私みたいな女が10億年もの時を経て子孫残しているってことなの!?」
言うべきことはそれですか。てか、あんたも子供作ってんだろ。
「私のは奇跡よ!」
ところで……この先はどうなるのだろうか、クラナはリアントスに訊いた。
「俺が感じた邪悪っていうのとはちょいと違うみたいなんだよな、あのジェラレンドってやつ……」
つまりはまだ終わっていないというわけか。
「あれは結局なんだったのだろう?」
と、今度はシュタルに話を振りつつ、彼女に訊いた。
「それよりも、高級精霊が不用意にこっちに外出してきて大丈夫なものなのかい?」
シュタルは頷いた。
「うん! むしろ私だから行けって頼まれたんだ!
私は精神の器のコントロールがうまくできるんだ! だから適任なんだってさ!」
精神の持ちうる大きさで世界のパワーバランスに悪影響を与えてしまう、
聖獣のその話を思い出したレイ、つまり、高級精霊程となるともっとということか。
だが、彼女はそれをコントロールできる能力を持っている、そういうことらしい。
「それにしても、また随分と可愛らしい高級精霊様ね。」
レミシアは嬉しそうに訊くとリアントスが言った。
「俺らの中でも可愛い担当やってたからな。
それこそいつもいつもネシェラにずっと甘えていたぐらいだしな」
というと、シュタルは――
「えっ――」
目にもとまらぬほどのものすごいスピードでレミシアの懐へと大接近!
「うわぁい♪ レミシアお姉様ぁ♪」
いきなりレミシアに甘えだした……。
「……一応、人妻なんだよな?」
リアントスは悩み気味にそう言うとレミシアはシュタルを抱いて彼女の頭をなでていた。
「あらあら、世の中随分とまあ可愛らしい人妻がいたもんね。
ったく、しょうがない子ねぇ。」
レミシアは得意げだった。
その夜……再びアーケディスへと戻ってきて夜を明かそうと考えたレイたちだった。
「ここも久しぶりだなー♪ 町なんて跡形もないけどさー♪」
シュタルはアーケディスの光景を見ながらも、崩壊しているとはいえ何だか楽しそうだった。
「完全に10億年前勢の話中心だな」
マグアスはそう言うとクラナが言った。
「仕方がないだろうさ、この世界にはびこる因縁は大昔から続いている、
私らよりもより大昔からの存在の方がその点では上手なのさ」
「そうか? 私は500年生きているハズだが、お前たちと一緒にいても自分をそう思ったことはないが」
「だろうね、だから頼りないのさ」
そう言われたマグアスは悩んでいた。
そんな話をしている一方で、プリズム族3名はなんとも元気がなさそうな様子だった。
「世が世なら自分たちが魔女にだってなることもあり得るということだよ、それが彼女らの本性さ。
でも、それに対して掟を作り、自分を抑えて生きていることで彼女らが成り立っている……
だからこそ、プリズム族は隠れ住んでいるというわけだね」
クラナはそう説明するとレイは納得した、自分たちの本性を暴かれたせいで元気がないのか。
「それをジェラレンドがそそのかしたから……私、そういうのは許せないな――」