それから数日後……一路クロノリアへと戻っていたレイたちだったが、
そんな折に例の女がクロノリアへとやってきていた、あのグラマラスな女である。
「クロノリアのフィールドを押してやってくるなんて、あんたやっぱりただものじゃないね」
その存在に気が付いたクラナがいち早く彼女の前に現れた、クロノリアの山道での出来事だった。
「そうなの? 確かに、この山を覆う何かが行く手を阻んでいるのはわかったけど――そういうものなの?」
クラナは呆れていた。
「あんた……案外この世界の常識が通用しないのね。
ということは……なるほど、高級精霊たちの話は割と本当なのかもしれないね」
この世界を創造した人が何らかの意図で追加したもの……
この世界のサイクルの範囲で生み出された生命ではない可能性が高いということである。
ゆえに、この世界で生み出された常識は通用せず、常に創造主の意図したとおりにしか動かないということになりそうという話である。
「それで私は正義の使者張りに動いている……とでも言いたいわけ?」
女はそう訊き返すとクラナは言った。
「そういうことだね、それがなんであんたみたいな色っぽい姉ちゃんに白羽の矢を立てたのかという点で創造主のセンスを疑うけどさ」
それについては言われた当の本人も異論はなかった、当人はそれが悩みだったようだ。
ど派手な女がクロノリアにやってきたとなるとさすがに目立ちすぎるし、
特にエロジジイのナイザーが首を突っ込みたがるので例によってアーケディスへとやってくることにした。
「創造主の意図したとおりにしか動かないという割に、
ジェラレンドってやつはこの世界を闇に陥れようとしている感じがしたんだが」
リアントスはセレイナを連れてその場にいた、仲睦まじそうな夫婦である。
「それに、そいつとウロボロスとの関係も気になるところだね――」
レイは首をかしげていた。すると、女は答えた。
「いいわ、私とあいつの関係を教えてあげるわね。
私もあいつも、同じ創造主によって作られた存在なのよ」
それは容易に想像できた、そもそもこの世界の創造主はヴァナスティアの教えにも描かれているユリシアンである、
つまり、この世界に作られた命はすべて同じ創造主によって作られている……ハズだが……
「あっ、いえ、そういう意味じゃなくて……まあ……似たようなもんか――」
なんだか裏がありそうである、しかし、クラナはなんとなく理解しているようだった。
「この世界のすべてが同じ1人の創造主だけで作ったっていうのが誇張し過ぎだってことさ。
むしろそう表現することでユリシアンの偉大さがわかるもんだけど、現実はそうじゃないってこと」
レミシアが続けた。
「それこそ、この世界を創造するプロジェクトの代表責任者がユリシアンだったってことならこの世界では偉大なるユリシアン様とたたえることでその偉大さがわかるというもの、
唯一にして絶対なるユリシアン様の台頭ね。
でも、プロジェクトの代表責任者ということは下々のものがいるってこと、
要は彼の配下で世界をせっせと作っているクリエイターたちがね。」
そういうことか――レイたちは納得した、
そのクリエイターの中に色っぽい姉ちゃんを正義の使者にしたがる変なやつがいるということか……。
「でも……それを教えに持ちだしたら……」
ウェイドは言うとレイは首を振った。
「ヴァナスティアは唯一無二の偉大なるユリシアン様でいいんだよ、
ヴァナスティアとしてもそうなっている意図があるわけだからね!
だから余計なことは伝える必要がないんだよ!」
なるほど、それはその通りか、彼に配下がいるということは、
やっぱりそれだけユリシアンは偉大ということでもあるわけだし、それで十分だ。
話を戻そう。
「ジェラレンドはこの世界の古来からいるのよ、ウロボロスは……言ってしまえば彼の部下といったところかしら?」
なんだって!? ウロボロスは部下!?
「ジェラレンドがいる限り、ウロボロスが消えることはないわ。
何が言いたいかって言うと……ジェラレンドはまだ生きているってことよ」
まさか、そんな……
「どうしたら斃せるんだい?」
クラナは訊くが彼女は首を振った。
「あれを斃すのは無理よ、あいつの存在は闇そのもの……
でも、誤解しないでほしいのは、あいつは好き好んで世界を陥れているってわけじゃないことよ」
え、どういうこと?
「好き好んで世界を陥れているようにしか見えないんだが」
リアントスはそう言うと女は答えた。
「そういう性分なのよ、あれは――
言ってしまえば世界が危機に瀕してどうにもならなくなった時に出現しては世界を終焉させる、
いわば世界のリセットをするための存在なのよ。
だから本来ならあんな邪悪なことはしないはずだけど――」
本来ならということは……
「それでも、創造主の作り出した世界にいる私たちだからね、なんらかの影響は受けるものよ。
そして、ジェラレンドのようにいつしか邪悪の影響を受けすぎてこの世界に牙をむき始めるようになる……」
それがジェラレンドが邪悪として台頭することになった原因か。
「その原因を取り除けばジェラレンドは元に戻る?」
ミュラナは訊いた。
「それはわからない……けど――」
女が言うと、レイが続けた。
「けど……原因は原因! それだけに不穏分子はこの世界に潜んでいるのは確実ってこと!
それを取り除かないわけにはいかないよね!」
まさにその通りである。
「でも、今になってなんでそんな話をしに来たのですか?」
ウェイドは訊いた。
「それはもちろん、私も使命感に駆られて言わずにはいられなかったからよ♪」
こうして、レイたちの旅はまだ続くのであった。