クロノーラ・クロニクル

第4章 古の時代との邂逅譚

第73節 展開が滅茶苦茶

 クラナは気が付いた。
「ちっ、してやられたって感じだね……」
 あたりは真っ暗だった。するとそこへ――
「クロノーラ、気をつけろ、やつの闇がこのあたり一帯を覆いかぶさっている――」
 マグアスが注意をしていた。
「あんた――ほかのみんなは?」
「突然のことだったからな、何とかする余裕はなかった。 さて、どうしたもんだか――」
 そこへリアントスが加わった。
「ちっ、ふざけた野郎だ――いい加減にしやがれ!」
 そういいつつ、リアントスはボウガンを上空に向かって射抜いた!  すると闇が晴れ、元の光景に戻っていった――
「ほう、貴様らはこの世界の守り神とやらなのか、ゆえに、我が闇にのまれずに済んだわけだな?  なんとも忌々しい存在だな――」
 リアントスは言い返した。
「ふん、忌々しいのはテメェのことだろ? 鏡を見てから言ってほしいもんだ」
 すると邪悪なるものは楽しそうに言った。
「クククッ、だが、この者たちは違ったようだ!  我が闇の虜となり、闇の住人となったのだ!」
 なんだって!? まさか――

 すると、邪悪なるものの闇の中からレイが――
「ウヘヘヘヘ……ラーシュリナお姉ちゃんは私のものだぁい♪  ラーシュリナお姉ちゃんのためなら何でもするんだぁい♪」
 なんと! しかし、そのラーシュリナも闇から現れ――
「ウフフフフ――ええそう、レイさんは私のもの。 そしてレイさんに言われた通り、私は稀代の魔女に相応しき者―― 今日から魔女ラーシュリナを名乗り、この世を私の美貌で支配いたしますわ、ウフフフフ――」
 なっ、なんと! ラーシュリナから誘惑のオーラが、自重することなくあふれ出していた!
「ちっ、そう来たか――」
 リアントスは悩んでいた。それが示すかのように、闇から出てきたシャルアンとミュラナも似たような状況に陥っていた、 いや、ミュラナもそうだが、ラーシュリナもシャルアンもミュラナよりも一段と魔女っぽく振舞っていた。 そして、その色香に間もなくやられているのが同じく闇から出てきたウェイドとディア――
「お美しい――なんとお美しい、ミュラナ様、ミュラナ様――」
「フヘヘヘヘヘ……シャルアン様ァ――俺様は麗しいシャルアン様の一番の下僕だぜぇ……」
 ん? ディア――
「あんた聖獣だろ!」
 クラナは突っ込まずにはいられなかった。
「やつはまだ日が浅い、守り神と呼ぶには程遠い存在だから仕方あるまい――」
 マグアスは呆れていた。だが、それとは別に――
「が、少なくとも、あの厄介女と顔面女は無害と考えればよさそうだな」
 リアントスは胸をなでおろしながら言った、それはレミシアのことだった。 レミシアは何やっているのかよくわからないが、その場でなんか変な塊を丹念に調べており、 いろいろと書き綴っていた。さらにクレアも――
「あははっ♪ これでもう顔をぶつけずに済むんだなぁ♪」
「ふふっ、やっぱり私のおかげでしょ♪」
「はぁい♪ 流石はレミシア様です♪ 今度は何をお作りいただけるんです?」
「うふふっ……それはできてからのお楽しみよ!」
「わあ! すっごく楽しみです♪」
 レミシアと共に無茶苦茶嬉しそうである、彼女も元聖獣のハズなんだが。
「……なるほど、闇の力で欲望を刺激したというわけか」
 レミシアは根っからのクリエイター気質ゆえの行動と、 クレアも顔をぶつけずに済むとあらばという欲望を優先した結果の姿だったというわけか、 しかし、いずれからもそれ以上の敵意みたいなのは一切感じない、 世界の守り神たる聖獣よろしく精神力の高さ故ということか。 マグアスはそう言うと邪悪なるものは答えた。
「その通り。各々、いい感じに野望を秘めているようで、なんとも未来は明るいではないか!  そして我はその野望を満たすために背中を押しただけのこと!  我が闇の世界ではその衝動を抑える必要はない! 己が欲望を望むままにかなえればよいのだ!  役に立たぬものも2名いるようだが些細なことでしかない! さあ行け! 新たなる闇の眷属たちよ!」
 レイたちが襲い掛かってきた! だが、しかし――
「あーあー、趣味が悪いなぁもう……思わず飛び出してきちゃったよ――」
 それにはリアントスが驚いていた。
「この声! いたのかお前!?」
 すると、そこにダークエルフの女が飛び出してきて、レイたちを一網打尽に!  どうやらその場から身動き取れなくなってしまったようだ……。
「なっ!? 何者だ!?」
 邪悪なる者はそう訊くが、その女はリアントスに言った。
「いたのか、じゃないでしょ!  ランゲイルが妙な状態だから探りを入れてほしいって頼んだでしょ!」
 彼女はリアントスに迫ってそう言った。
「わ、悪かったよ。だけど、どうしてここに? 直接来ていいのか?」
 女は腕を組んで答えた。
「いるものはいる、そうである以上はどうしようもないじゃん?  それに、この地に妙な流れが見えたから誰か行ってきてほしいって言われて私が見に来ることになったんだよ!」
 妙な流れ? リアントスは訊くと邪悪なる者が――
「貴様ら! 我を無視している場合ではなかろう!  くっ、新たなる闇の眷属共は役に立たんようだがわれの存在を忘れてもらっては困るぞ!」
 すると、先ほど動きを止めていたウロボロスが動き出す!
「えっ!? ウロボロス!? いたの!?」
 ダークエルフの女は驚いていた。
「フハハハハハ! さあ、仲良く死ぬがよい!」
 全員、ウロボロス相手に構えていた。そんな中、ダークエルフの女は――
「うーん、なんだろ? この流れってウロボロスのせいって感じじゃないんだけど――」
 というと、リアントスは訊いた。
「なんだ? 何かあんのか? それならこの状況、何とかしてほしいもんだな!」