ランゲイルに眠る邪悪の存在については実際にはあまりよくわかっていなかった。
10億年前のアーカネリアス期の封じられた邪悪と関連するように考えられているのもあくまで推測に過ぎない。
とはいえ、此度のウロボロスといい、関連性は高いのだが。
それに、クレアやリアントス、そしてセレイナとしても10億年前の封じられた邪悪は非常になじみのある存在でもある、
彼らは当時のそいつを破っているのだから。
そして――
「これはなんだ?」
マグアスは訊いた、それはどんな光をも通さないような真っ黒な空間とも言うべき物体――
「さあねえ、こんなの見たことがないよ」
クラナはそう言った、聖獣たちを以てしてもそれの正体はわからずにいた。
するとその黒い物体は空中に浮き始め――
「なっ、なんだ!?」
ディアは驚くと、そこから声が――
「ぐっ……どうやら少しはやるようだな、ほめて遣わそう。
だが……この程度のウロボロスも斃せぬようでは結局同じこと――」
なっ!? すると、先ほど停止していたウロボロスが再び動き出し――
「ウソだろ!? マジかよ!?」
リアントスは背後に警戒していた、だが――
「フッ、いや――面白い遊びを思いついたぞ!」
すると、その場は急に闇の空間が広がった!
「これは一体!?」
マグアスは驚いた。
「これが世界の真理と知るがよい! フハハハハハ!」
その場は完全に闇に包まれた――
「うわあああああ!」
レイは気が付いた、その場は何事もなく、空は少々薄暗いが緑の草原が広がっているだけの光景だった、
あれ? ランゲイル島で戦っていたんじゃなかったっけ? そうか、どこか遠くに飛ばされたのか――レイはそう思った。
「レイさん、気が付かれましたか?」
声をかけてくれたのはラーシュリナだった、あれ、ほかのみんなは? レイは訊いた。
「さあ? 気が付いたら私とレイさんだけの2人でした――」
2人か――レイは悩んでいた、これは大変なことになったもんだ。
しかし――
「ここ、なんていうか、平和で何もないところですね――」
ラーシュリナはそう言った、確かにその通りだ、あたり一面緑の野原だがほかは何もない、とにかく、緑だけが広がる大地だった。
「こんなところでレイさんと2人きりだなんて――なんだか嬉しいですね――」
言われてみればそれはそうかも、レイもそう考えた。
少しぐらいラーシュリナと2人っきりっていうのも悪くはないか。
すると――
「ラーシュリナ?」
彼女はレイのことを優しく抱きかかえてくれた――
「つらい戦いが続いたせいでしょうか、レイさんとしばらくこうしていたいです――」
これは……レイもしばらくこうしていたかった。
ラーシュリナは思いのたけをぶつけていた。
「私、本当はレイさんのことが――」
えっ、それというのはまさか――
「こんなこと言うと、レイさんが嫌がるかもしれないから言うことはできませんでした。
だからレイさんとは姉妹のような関係でいようと思っていたんです。
けど、本当は――」
だが、それについてはレイが――
「ラーシュリナ! それ以上は言わないで!
実は――私もそう思っていたんだよ、ラーシュリナは私にしてみればいいお姉ちゃんだけど、
でも――案外そういう関係もいいかなって。
それこそ、ラーシュリナは言ってしまえば男――って言ってもいいのかわからないけど、
でも――それならそれで私がラーシュリナを受け入れてもいいなって思ったんだ」
なんと、まさかの――
「レイさん――」
「こんな美人のおねーさんと一緒になるなんて私としてもうれしいよ!
ねっ、ラーシュリナ! おいで!」
「レイさん!」
多様化の時代とはよく言ったもんである、それ以上は言うまい。