その存在には誰しもが圧倒されていた。
その存在はヴァナスティアの教えの話にも登場するほどの存在だった。
「前回は10億年前に表れているからな、だから回復具合で言えば大したことはないと思ったんだが、
どうやらそのアテが外れたらしいな」
そう、そいつは海より出でし破壊の悪魔とも呼ばれる”ウロボロス”という伝説の魔物だった。
と、その時……
「なっ!?」
一行の目の前に激しい雷が降り立った! それにはディアがとても驚いていた。
「ひっ、ひええええ……しびれる……」
ディアの毛は逆立ち、静電気を帯びていた。
「こんなん受けたらひとたまりもないね、まとまってたらそこに打ってくださいって言っているようなもんだ、散会するよ!」
クラナはそう言うと、レイたちは散会してウロボロスに挑むことになった。
「で、でもなんでこんなところにウロボロスが!?」
「わからん。わからんが、とにかく裏がありそうだ」
クレアとリアントスはそう話をしていた。
だが、そのウロボロスには何をしても歯が立たず、レイたちは一方的に蹂躙されているだけだった。
「どうなっているのあいつ!? 全然攻撃を受けていないみたいだけど!?」
レイはそう訊くとラーシュリナは言った。
「確かに、まるで堪えないようです。ですが、弱点は見えました」
弱点? ラーシュリナは指をさした。
「何度か狙っていますので決定打に至るかは微妙ですが、もし、あれが結界の守りだというのなら――」
あ、そうか、結界の守りなる役目を担っているんだっけ、レイは思い出した。
そしてそれが、ウロボロスの頭頂部にある赤い光と関係があるって? レイはそう訊いた。
「あの光があの空の波動に通じているのはなんとなくですが見えます。
あれを断つことができればもしかしたら――」
ウロボロスを斃さないと始まらない――とにかく、やってみるしかなさそうだ。
「レミシア姉様!」
レイは叫んだ。
「オッケー。よっしゃあ! こいやぁ!」
レミシアがウロボロスの前に立ちはだかった! するとそこへ破壊の雷が!
「ったく、加減しろっつーの、お前、伝説に名を残す存在なんだろ……?」
レミシアはさらっとそれをかわした!
「さすがネシェ……の系譜の女だな、伝説に名を残す存在の直撃を受けられずとも、それでもいなすことは朝飯前ってわけか」
リアントスは唖然としていた。
「おや、当時のその娘もそうだったのかい?」
クラナは訊いた。
「そうだったもなにも、あの女は当時のウロボロスを1人で斃してしまいやがった。
当時のヤツは一応弱っていたとはいってもアーカネル騎士が束になってもかなうことはなかった、
なのにネシェラは――」
す、すげえエピソード、1人でって……。
「レイ! 今だ、行け!」
リアントスはそういいつつ、ウロボロスの頭めがけて正確にボウガンを打ち込んだ!
「よっしゃあ! いっくよー!」
と、レイはウロボロスの背後へと飛び上がっており、ウロボロスの頭頂部で僅かに光っている赤い光めがけて思いっきり掻っ捌いた! だが――
「えっ――」
ウロボロスはレイの方へと向き直り――
「やばっ!」
そこへ破壊の雷が!
「そうはさせん!」
そこへマグアスのバリアが展開される! バリアは破壊の雷に抵抗している!
「長くはもたん! 早く逃げるのだ!」
そういわれ、慌ててレイはその場から逃げ延びた。
するとバリアは消滅し、地面に激しい雷が降り立った!
「うわあああ!」
レイは雷が直撃した際の衝撃に巻き込まれて吹っ飛ばされた!
「ととと! 大丈夫!?」
そこへミュラナがレイを抱えてくれた。
「う、うん、ありがと、死ぬかと思った――」
しかしこいつ、どうすれば――
「ねえ! 見て!」
シャルアンは何かに気が付いた。
「おっ、まさか!」
リアントスも気が付いた。
「赤い光が消えています!」
ラーシュリナがそう言った、もしかして――
「見て! さっきの魔界のゲートみたいなところが破れているよ!」
クラナは叫んだ、邪悪なる赤い波動の広がりが徐々に狭まっていた。
するとその中央には何やら真っ黒な物体が降り立った。
それと同時にウロボロスもなぜかその場で停止した。
「なんだかわからんが、とにかく行こうぜ!」
リアントスはそう言うと、一行はその黒い物体のいるところへと急いだ。
そもそも邪悪とは言うが、何がいるのだろうか。