クロノーラ・クロニクル

第4章 古の時代との邂逅譚

第68節 敵の存在

 ラーシュリナ、シャルアン、ミュラナの3人で甲板の上で瓦礫の山のように崩れているイーグル・ガンを回復させていたが、 レミシアはそれを――
「こら! 起きなさいよ!」
 イーグル・ガンの腹を蹴り上げていた……。
「起きろっつってんだろ! このスクラップが!」
 今度は勢いよく蹴り上げていた、もはや数メートル浮き上がるんじゃないかっていうほどのとてつもない蹴りだった……。
「痛ってー! ったく、相変わらず容赦ないよなお前……」
「何言ってんのよ!? セレイナ泣かしといてそれはないんじゃないの!?」
 そう言われ、イーグル・ガンはため息をつきつつ、次第に人の姿になっていった、 見るからに優男風のイケメン男、こいつがあのセレイナの夫であるリアントスという男か…… レイは関心を示していた、確かにこいつはなかなかのイケメンである。
「……そうだった、そう言われたらぐうの音も出ねえな」
 そこへマグアスが訊いてきた。
「ところで、なぜあのようなところで寝ていたのだ?」
 リアントスは答えた。
「ああ、あんまり言いたくはねえんだが、ちぃっとばかりヘマをしちまってな。 敵はだいぶ強くなっている、俺1人じゃあ手に負えなくなってきたようだが……」
 と、彼はそういいつつ、心配そうに見つめているクレアに向かって言った。
「とりあえず、その場凌ぎにはなったようだな」
 クロノーラの封印……クレアが言った。
「すみません、1人で先走ってしまいまして――」
 リアントスは首を振った。
「でもまあ、これは俺の問題でもある、だから俺自身の手で決着を――」
 というが、その傍らでレミシアが異様なまでの殺気を放っていた。
「……なんてこと言ったらダメそうだな、仕方がねえ」
 リアントスは改まった。
「おいレミシア、お前、スカイ・アタッカー系の技は使えねえのか?」
 スカイ・アタッカーというのは読んで字のごとく、 飛翔して空中からの襲撃で相手に大打撃を与えることが得意な者のことである。 それについてレミシアが答えた。
「何よ、ご先祖様が得意だったからって私までできると思わないでって言ったでしょ。 スカイ・アタッカーならイーグル・ガン言われているあんたがなんでできないのよ?」
 リアントスは悩んでいた。
「まあ、滑空はいけるんだがそこへもってきて大打撃を与えるのはちょいと無理があってな、 なんていうかコツみたいなのが必要そうだな」
 そこへレイが訊いてきた。
「レミシア姉様のご先祖さまってそんな大空へとダイブするようなことが得意な使い手だったの?」
 リアントスは答えた。
「ああ。それこそそこいらの山なんかひとっ跳び上等の跳ねっ返りだからな。 でも――世界崩壊後のこのご時世ではスカイ・アタッカー系の技の使い手として志しているのも少なくなっちまったようだな」
 ひとっ跳び……すごい能力だ。そこへクラナが肝心なことを訊いた。
「なんでもいいけど、なんだってそんな技が必要だってんだい?」

 グレアレンドに上陸し、一行はそのままアーケディスへとやってきた。
「やあ、なんとかイーグル・ガンを救出できたようだね」
 向かい入れてきたガトーラ相手にリアントスは頷いた。
「ああ、こいつらのおかげでなんとか助かった。 それよりも話がある、お前ならよく知っているだろうからこうしてここに来たところだ」
 ガトーラは頷いた。
「ああ、キミが戦っている状況がよく見えたよ。 確かにあれは少々難儀だね、さて、どうしたもんだか……」

 塔の上で、話は進められていた。
「ハルピュイア!? そんなのまで現れたっていうのかい!?」
 クラナは驚いた。そいつは闇の眷属によって生み出された魔の鳥である。
「ハルピュイアが現れたのは昨日今日のことじゃないよ、 現にこれまでずっとイーグル・ガンが手合いしていたのはほとんどがハルピュイアだ。 キミらが船でランゲイルを離れようとしている際にも執拗にまで追っかけてきたのも連中さ」
 リアントスは頷いた。
「だが、そいつらはそこまで問題じゃないんだ。 問題はその親玉といえるやつがいること、あれを打ち落とすのは少々骨が折れる、 だからむしろ直にたたくのが一番効果的って寸法だな」
 直にたたく、それでスカイ・アタッカーか……クラナたちは納得した。
「フン、イーグル・ガンも腕が落ちたな」
 マグアスはそう言うとリアントスは得意げに言った。
「何もせずに高みの見物決めているだけの鳥とは違うんでな、何が効果的かもわかっているつもりだ。 少なくとも連中には魔法が通用しにくい、直接たたくしかないことだけはわかっている」
 マグアスは訊いた。
「しかし、このご時世でスカイ・アタッカーを志す者はそうはいない、 それなのにどうするつもりだ? その時点で別の手段を模索するしかないぞ?」
 そういわれてリアントスは悩んでいた。