レミシア主導でクロノリアのフィールドが徐々に再生していった。
まさにシルグランディアという職人の手によって偉大なフィールドは完成していった。
そう、クロノリアはこれで復興が完了したことを示しているのである。
「私、こんな偉大な出来事に携われただなんて光栄に思います!」
ラーシュリナは嬉しそうに言った。
やろうとしていたことはクロノリアの住人総出でのこと、
そういうこともあってか、シャルアンやミュラナ、そしてウェイドとボロ雑k……ディアまでもが一丸となって事にあたっていたのである。
「これが復興のシンボルというわけね!」
「そうね! まさにクロノリアの成せる業って感じね!」
「クロノリアのというより、アトローナシアの職人技ですけどね」
「まあまあ! 固いこと言わなくたっていいじゃないか! 俺らはあくまで顧客の要望通りに作るだけの側でしかないんだからさ!」
そしてマグアスも――
「ようやく終わったようだな、よもや私が生きている間にクロノリアのフィールド修理に携われるとは何があるかわからんもんだ」
胸をなでおろしていた。
だが、シルグランディアという職人の手による安心設計ゆえなのか、見るからに全くフィールドが覆っているような感じがしなかった、
肌で何かしらの大いなる力が張り巡らされていることは感じるのだが。
つまり、クロノリアには妙な魔力の層で閉ざされた空間になっているのではなく、
晴れていれば青空を拝むことができるような設計になったということである。
あの書物は旧式らしく魔力の層で閉ざされた空間な感じになるような記述があったが、時代は進化したということだ。
そして――
「さあ、レイ! 行ってきなよ!」
「ここでちゃんとあなたの晴れ姿を見届けているからね。」
ディアとレミシアに背中を押され、レイは山へと昇って行った。
クロノリア民をはじめとして大勢が彼女を見守る中、彼女は試練の祠方面へと歩いて行った。
「頑張ってください!」
「レイ! 頑張って!」
「レイって素敵!」
ラーシュリナとシャルアン、そしてミュラナにも見送られていた。
「クロノリアがますます明るくなること、期待していますよ!」
「ふっ、せいぜいがんばることだ」
「いやあ……こんな日が来るなんてねぇ――」
ウェイドとマグアス、そしてスクライティスにも見送られ、
辿り着いたのはクロノリア山8合目付近の試練の祠の前広場だった。
「来たようだね、今から世代交代だ――」
クラナ……じゃなくて、大きな鳥の聖獣クロノーラがその場で堂々と構えていた。
足元にはナイザーがおり、杖を携えていた。
「ふう――とにかくこれで肩の荷が下りたというもんだわい――。
レイ……いや、新しきクロノリアの長よ、このクロノリアを任せたぞ――」
クロノーラのいる目の前、レイはナイザーから杖を手渡された――
それはクロノリアの長であることを示すただの杖である。
それは特別なものではなくただの杖であるが、一応儀式的なものとして、
長のバトンを渡すという意味合いを込めて行うものなのだそうだ。
そう……こうしてレイ=オンティーニは新たなるクロノリアの長と成り立ったのである。
ということで、レイは早速長特権を利用して試練の祠へとやってきた。
以前の怠惰な彼女とは思えないほど積極的に行動していた。
「クレア=オンティーニ! いるのなら出てきて!」
祠の中でレイは彼女のことを呼び続けた。
が、しかし……なかなか彼女は現れない――やっぱり難しいだろうか?
「うーん、ダメかなぁ……?」
レイは悩んでいた。ところが――
「クレア=オンティーニはあなたの呼びかけに応じています」
そうそう、この声だ。
祠のどこかからこの声が聞こえるんだ、レイは考えた。
なんとなくナレーション口調のこの声のおかげでこの間の件も”運命の標”であることが分かったんだ。
否、そもそもこの声自体が”運命の導き”そのものでもあるとも聞いた……
私ってそんなにすごいんだろうか、レイは悩んでいた。
だが、それにしても、クレア=オンティーニは応じているとは言うのだが――
特に何も変化があったような感じではなかった、どうなっているんだ?
「えっ、えっと……クレア……?」
レイは恐る恐る呼びかけた。しかし――返答がない……。
「ねえ! 本当にクレアは応じているの!?」
レイは頭上に向かって……祠に対してそう訴えると――
「間違いありません。
クレア=オンティーニはあなたの呼びかけに応じ、そしてあなたの目の前に現れようとしています」
そ、そう……なら待つか……レイは悩んでいた。
「別になんでもいいんだけどさ、いつになったら現れるの……?」
レイは呆れながら訊いた。その返答は意外な内容だった。
「……わかりません。
大変申し訳ないのですが、少々お待ちください――
というより、クレア=オンティーニ、無理しないでその場からお話してもよろしいのですよ?」
ど、どういうこと!? レイは悩んでいると――
「……ん? 何か聞こえる……?」
レイはどこかしらから喚き声のようなものが聞こえてくることに気が付いた。
そして、その方向へと向かうと――
「うえーん! 痛いよぉー! でもどうしても会いたいよー! うえーん! うえーん!」
……その場には女性が顔を抑えてえんえんと泣き喚いていた、まさか――
「レイ=オンティーニとクレア=オンティーニの邂逅が成立しました。
クレア=オンティーニ、改めてお伝えしますが足元は大変入り組んでおりますので注意しながらお歩きください、以上――」
なんと! 彼女がクレア=オンティーニなのか!? レイは驚いていた。だけど――
「ん? 足元注意って?」
確かに、ナレーションの言う通り少々ゴツゴツしたような足場であるが……
「はっ!? 気を付けてくださいレイさん! ここは危険です! 転ばないように気を付けてください!」
彼女、いきなり泣き止んだかと思うと、急にそう言ってきた、
気をつけろって別に……レイは何それとなくクレアのもとへとやってきた。
「そっ、そうかな……? 別に普通だと思うけど――」
そう言われてクレアは何故かショックを受けていた。
「そっ……そんな! レイさん、オンティーニなのにどうして転んで顔面をぶつけたりしないんですか!? すごい特殊能力の持ち主ですね!」
いや、そもそもどうして転んで顔面をぶつけたりするんだよ――レイは悩んで……
「えっ!? まさか転んで顔面をぶつけてたの!? 大丈夫!?」
レイは心配そうに聞くがクレアは笑顔で答えた。
「はい! この通り、私は大丈夫です!
転んで顔面をぶつけたって平気です! いつものことですから慣れています!」
確かに傷一つない、そうか、慣れているのか、それなら大丈b……いやおかしいだろ!
どういう慣れだよ! そもそも何でいつも転んで顔面をぶつけているのよこの娘! ツッコミどころは尽きない。