クロノーラ・クロニクル

第3章 旅は道連れ世は情け、人はデコボコ道中記

第56節 それでもやっぱり女子

 そして、ようやくあの要件を満たした。
「はい、”月光石”とも呼ばれたエンチャント鉱石で作った頭飾りよ。 レイ、こっちに来て御覧なさいな。」
 なんだろう――レイはワクワクしながら彼女のほうに自分の後頭部を向けて座った。
「よし、まずは一旦とるわね。」
 すると彼女の髪の毛は解きほぐされ、長い髪の毛が、三つ編みの後の独特のウェーブがかった長い髪の毛が出現した。 そして――
「このヘアアクセサリっておしゃれね、よし、これに付けてあげるわね。」
 レミシアはデザインのヘアネットにアクセサリを取り付けた。
「よし、行くわよ。」
 するとなんと!
「えっ!? 髪の毛が勝手に!?」
 なんと! 勝手に元の三つ編みの状態に戻っていった!
「大昔に武器を作るときに似たようなシステムを考えたからね、 いつかヘアスタイルのために開発してやろって思ってたら本当に役に立ったわね。」
 女性ならではの発想だったようだ。
「形状記憶的なものだから一度髪型を決めておくと次回身に着けたときも同じ髪型で維持してくれるって言うカラクリよ。 でも、いつも同じじゃあ芸がないから3種類のバリエーションを保持しておくことが可能ね。 3種類のどれするかは身に着ける際の意志に呼応する形をとるわね。」
 やはり女性ならではの発想だったようだ、男共をボコボコにするような恐怖のレミシア様だが少なくとも女性であることは間違いないようだ。
「はぁ!? 私がなんだって!?」
「ややや! 俺、何も言ってませんから!」
 ウサギはものすごく焦っていた。

 と、いうことで……
「アクセサリに加工してどうするのだ、材料として必要なのではなかろうか?」
 マグアスはそう言うとレミシアは答えた。
「必要なのは月光の魔力よ、これも昔からのことみたいだからほぼ確実ね。 つまり、それを身に着けた者の魔力であればなんでもいいわけ、例え微量の力だろうとね。」
 と言いつつ、レミシアはまた別のアクセサリをラーシュリナに渡した、コサージュというやつだ。
「えっ、私ですか?」
「ええ、レイと対になる感じでいいじゃないのよ。あんたたち、本当にお似合いの2人よね!  だからあんたたち2人にそれぞれ与えるのがちょうどいいんじゃないかなって思ってさ!」
 そう言われてレイとラーシュリナはなんだか照れていた。
「ほらほら、ラーシュリナ、後ろ向いて――」
 と、レミシアはコサージュをラーリュシナの紙に取り付けた。
「いいわね! ラーシュリナはまさに太陽そのものってところね!」
 そう、こちらは太陽の光を蓄えた”太陽石”とも呼ばれたエンチャント鉱石で作った頭飾りである。
「ラーシュリナは太陽! つまり女神様ってことだね!」
 レイにそう言われてラーシュリナは顔を真っ赤にして照れていた。カワイイってば。

 レミシアは悩んでいた。
「うーん……」
 どうしたのだろうか、クラナは聞いた。
「そうよ、燐光の軌跡がどーにもならんのよ。」
 そうよって……まだ何も言ってないのだが。
「運命の精霊様か……となると、やっぱりヴァナスティアにいかないとダメ?」
 あ、そういえば……クラナは思い出した。
「ヴァナスティアにフラノエル像があったね、ということはつまり――」
 しかし、レミシアは再び悩んでいた。
「偶像か……ちょっと弱いわね、偶像で代用できたっていう話は流石に聞いたことがないわね。」
 うまく行く行かないの基準がよくわからない。
「いや待てよ……? 運命の精霊様って言ったら――」
 するとレミシアは本のようなものを手にとり――
「ん、それは……?」
 なんだなんだ、クラナは見せてもらった、古代の資料のようだが――
「随分と古ぼけたものだけど――」
 レミシアは答えた。
「ネシェラ=ヴァーティクスの話が登場したから彼女が書いたっていう日記を持ってきたのよ。 これにはシルグランディアが代々培ってきたものがある程度書いてあるのよ、あくまでヒントだけでしかないけどね。 技術は見て盗め……やれるのならやってみろ、やれるもんならやってみろだから書いてあることだけで実現ができるわけじゃないけどさ。」
 ゆえに職人肌ということか、アトローナシアの礎たる考え方というわけか。
「あったあった、運命の精霊様の件。 よくはわからないけど、ここにはシルル=ディアンガートって人がそんな感じだって書いてあるわね。」
 えっ、本気!? クラナは驚いていた。
「まさか、シルグランディアは運命の精霊様とも交流があるっていうの!?」
 レミシアは悩んでいた。
「それが随分前から気になっていたんだけどさ、運命の精霊様どころの話じゃあないのよね。 というのも、リミュールでのことを見てわかるとおり、セレイナも私には妙に親しげに話かけてくれるしさ。」
 そういえば……レミシアはセレイナを呼び捨てている……
「なんか、私にはそう呼んでくれると嬉しいって言われてね、以来、普通にセレイナって呼んでいるのよ。 なんかネシェラ=ヴァーティクスも10億年前みたいだし、関係あるのかしら?」
 それは……どうなんでしょうね。

 ということで、燐光の軌跡以外は大体そろったことになる。
「破壊はこの鉱石、水鏡はこの欠片、雷光はクロノリアにあるからともかく、 後は大体作ってもらったようね――」
 クラナは感心していた。
「数多の”陽の光”と”月の光”に照らされる”永遠”の時として完遂させるために太陽の概念を追加して、 あとはドシンプルににバリアーの概念を入れるために守護方陣用の魔法を封じた魔石も用意したわね。 あとは――何があればいいかしら?」
 レミシアは言った、あとは――やっぱり燐光要素か、クラナは悩んでいた。
「どうにかならんもんかね?」
 レミシアは頷いた。
「そこはクロノリア様のお力を借りるしかないんじゃないかしら?  試練の祠って言うのがあるんでしょ、そこで何かできるんじゃないかしら?」
 そう言われてみればそうかもしれない、 対象が運命の精霊様という人であればできなくはないかもしれない。
「あるいは直接エターニスに掛け合ってみるかだな」
 ディアはそう言った、ただ――
「高位の精霊の領域でしょ、私らのような末端の精霊には縁のないところよ。」
 そうだった、取り合ってくれそうもないか……ディアは考え直した。

 そんなこんなでクロノリアへと戻ってきた。 レイはあれから1年後、運命の精霊様のヒントを見つけるために試練の祠と入った。
 今回はイーグル・ガンがどうのという話を聞くことができたが、 封じられた邪悪共々そちらの話についても特に進展がなく、この先どうなるのだろうか。