クロノーラ・クロニクル

第3章 旅は道連れ世は情け、人はデコボコ道中記

第52節 折り返し地点

 そんなこんなで結局ラーシュリナに抱かれて寝るのがすっかりと定着しているレイだった。
「お姉ちゃんおはよう!」
「おはようございます、レイさん!」
 するとレイは考えた。
「お姉ちゃんか……男の子だと普通はお兄ちゃんなんだけど――」
「お兄ちゃん?? 男の人を誘う時に使う言葉ですか?」
 あ、そう言う理解……やっぱり、この世界は独特な空気が流れているな――レイは思った。
「んーん! 何でもない! やっぱり、ラーシュリナはラーシュリナだよ!」

 そして……一方のシャルアンと言えば……
「おはようございます、ディアさん!」
「おはようございます! シャルアンさん!」
 ウサギをとにかくめでていた。
「蓼食う虫も好き好きとはよく言ったもんだね」
 仲良くしているさまをじっと見ているクラナはそう言った。
「えっ? 虫……なんですか?」
 シャルアンは首をかしげていた。
「シャルアンは昔から可愛いのが好きだからねぇ♪」
 ミュラナはそう言うと、後ろから顔を拭きながらレミシアが現れた。
「ま、ボロ雑巾にも真っ当な使い道があるってわけね。 そうとわかったら立派な聖獣になるためにこれまで以上にヤキ入れないといけないわねぇ――」
 ディアはデレてはいるが、やはり大量の冷や汗が止まらなくなっていた。 とにかく、浮気性のクソ色ボケクソウサギだが、 どうやら気が付いたらシャルアンという相手に覚悟を決めていたらしい……マジかこいつ。
 そこへマグアスとウェイドが現れた。
「ふう……プリズム族の里というのは何とも恐ろしいところだな、 周囲は妖術の香だらけとは――」
「なんていうか、こうやってシラフでいると恐ろしさを感じる空間ですね――」
 2人はプリズム族の長のところで丁重にもてなされていた、 そこでの出来事も少々怖いものを感じてはいたのだが、他に比べれば無事で帰ってこれるのは確実だそうだ。 そして、とりあえずここに戻ってこれたことに安心していた……が、まだプリズム族の里にいることに変わりはない。

 ということで、冒険の続きに出発!
「あれ? ミュラナも来るの?」
 レミシアが訊くとミュラナは答えた。
「だって! ラーシュリナとシャルアンがオイタをしたって言うから!  もちろん、里長からは外出許可は得ています!」
 ラーシュリナは悩んでいた。
「私、別にオイタはしていないんですけど――」
「連帯責任よ!」
 そんな、どうして――ラーシュリナはますます悩んでいた。
「というか、レミシア姉さんも来るの?」
 レイは訊いた。
「私はもともとアークデイルの地をあちこち回るのが目的だかんね。 旅は道連れ世は情けって言うでしょ? それとも――私はダメ?」
 するとレイはニヤリとしていた。
「んーん! どっかの変な聖獣やティルフレイジアがいたり、 どっかのスケベ男のせいでちょっと頭に来ることあるからさあ、 お姉様がいればいろいろと改善するかなぁと思ってさー♪」
 そう言われ、当事者たちは冷や汗が滝のように止まらなかった。
「あら! レイったらちゃっかりしてんのね!  いいわ、かわゆいレイのためだったらお姉さん、一肌脱いであげるわね!」
 ということでミュラナとレミシアが加わった!
「俺、すげー嫌な予感しかしないんだけど」
「言うまでもないな――」
「……何処に導火線があるかわからないですからね、あの人――」
 男3人はひそひそと話し合っていた。無論、スクライティスは極度に敬遠しており、我関せずな顔をキメていた。
「あんた、気配消すのがうまいわね――」
「そりゃあそうさ、シルグランディア”様”に逆らおうなんてことになったら私なんてひとたまりもないからね――」
 クラナとスクライティスはそっと話をしていた。

 ということで改めて出発! 早速次の材料を求めて旅に出た。
「なるほどね、これだけの材料が要るってことね。」
「そうなんだよ。そこで”セレスティアル・シール”ってのが必要なんだけど、 ガトーラが言うにはアトローナシアあたりの場所にヒントがあるって――」
 レミシアとクラナは書物を広げて話をしていた。
「”セレスティアル・シール”――なんだろ、よくわかんないわね。 ”アーティファクト”とかそう言った類のもの?」
「いや、ガトーラが言うには何の変哲もない物体って――」
 するとその時――
「ん、ちょっと待って! 何この材料のラインナップ!」
 レミシアは書物に書いてあるそれを眺めていた。 まずは”雷光の石”と”水鏡の欠片”、 そして”セレスティアル・シール”に”燐光の軌跡”、 ”月光の破片”と”破壊の灯”と、ここまでは説明しただろうか。 さらにそれに加えて”復活の欠片”と”永遠なる標”が必要らしい。
「最後の2つについては一応目星がついているんだ、それっぽいのがね。 でも、”復活の欠片”は近場にあるから後回しでもいいし、 ”永遠なる標”は恐らくエターニスだね」
 だがしかし、レミシアは別のページを見て話をした。
「いや、これ……恐らくだけどさ、材料だけ見ても修復方法としてはよくわからないことだらけなのよ――」
 な、なんだって!? クラナは見返していた。
「そ、そう? そこまでは私にはよくわからないけどさ、多分書いてある通りにすればいけるんじゃない?」
 するとレミシアは指をクイクイと動かしボロ雑巾を呼んだ。
「あんたに問題。この材料でこの作り方……さて、この材料は一体何を指している?  答えられなかったらアトローナシア追放だかんね。」
 そ、そんな! ボロ雑巾は極度の緊張感に――
「ん……あれ? んんんんん?」
 ウサギはじっと眺めていた。そして作り方――
「あのさ、これって材料というよりさ、”概念”を組み合わせて作ろうとしてる?」
 えっ!? そうなの!?
「やれやれ、聖獣になろうっていうボロ雑巾を追い出さずに済んだわね。」
 いや、マジか――