「女の子が生まれる率が高いから、プリズム族の文化では女の子は育てやすいらしい。
でも男の子を育てることについてはさっぱり理解がないみたいだ。
だから男の子が生まれてもバッサリと男である事実を切り捨て、
女の子に育ててしまうってこともあるって聞いたことがあるわね」
「流石に聖獣様はお詳しいですね、
確かに、私の知り合いの何人かもそれをしていますね。そして、実際に子供まで生まれています」
さて、改めてこのセリフを書くことになったのだが、いよいよその伏線を回収するときが来たようだ。
レミシアとレイは目の前で猛省しているミュラナと共に家のリビングの席についていた。
すると、そこにラーシュリナやクラナたちが――旅の一行がそろったのである。
「ただいま帰りました……って、どうかしたのですか?」
ラーシュリナは不思議そうに訊くと、レミシアが――
「わぁい♪ おかえりラーシュリナ♪」
と、それよりも先にレイが彼女に思いっきり甘えていた――
「えっ、レイさん!? どうしたんですか!?」
すると、レイはラーシュリナの眼をじっと見つめながら言った。
「私はラーシュリナのことが大好きだからね!
ラーシュリナはラーシュリナだもん! だからこれからもよろしくね、お姉ちゃん!」
えっ、どうしたんだろう――すると、レミシアが感心していた。
「あらあら♪ なぁんだ、取り越し苦労ってやつだったわね――。」
なんだか安心していたようだった。
そして――
「ん……えぇー!? 言っちゃったんですかぁー!?」
ラーシュリナは驚いたように言った。
その言っちゃった内容についてはほとんどの者が驚きを隠せなかった。
「えっ……ラーシュリナ、あんた、そうだったの!? いや、全然わかんないよ!」
クラナも驚いていた。そしてウェイドも――
「わ、わからないものですね――」
マグアスも――
「なっ!? やはりプリズム族、侮ることはできんというわけだな……」
だが、スクライティスは我関せずで、ウサギについては――
「そりゃそうだよな、ある程度は予想していたけど――
でも、ラーシュリナがそうとは思わなかったな……俺としては別にどっちでもいいけど」
それについてはレミシアが言った。
「あんた、散々プリズム族のおねーさんのこと調べてたから大体事情を知ってんでしょうが。」
「ま、そうなんだけどな! でも、百聞は一見に如かずっていうからなあ! なっ、シャルアンさん!」
だがしかし、シャルアンも――
「えっ!? まさか……私のこと、バレちゃいましたか!?」
は!? ディアは眼を丸くしていた、ど、どういうこと!?
「えちょっと! だから、外の人たちにその手の話は……ったく――」
レミシアは呆れていた、どうやら手遅れらしい。
さて、そろそろ種明かしのタイムに。
改めてとなるが、女の子が生まれる率が高いから、プリズム族の文化では女の子は育てやすいらしい。
ただし、実際の比率で言うと、昔は大体95:5ぐらいで女の子優勢という図式だったらしいが、
昨今のプリズム族事情は女の子優勢であることは変わらないのだがそれでも8:2と、
以前よりも男の子の確率が大きく増えていた。
無論、男の子を育てることについてはさっぱり理解がないことに代わりがなく、
そしてそもそも彼女らは掟があるために、
男の子が生まれてもバッサリと男である事実を切り捨てて女の子に育ててしまうってこともある――
それは今も昔も変わらないのだが、ゆえに、どんなに男の子が生まれる率が高かろうと、
結果女の子として育てるのが通例なのである。
そして、何を隠そうその8:2の2の中にはまさかのラーシュリナとシャルアンが含まれているのである……
「私は去勢済みですからね♪」
シャルアンは軽くそう言うのだが――なんで軽いのよと小一時間。
だが、プリズム族ではこのような背景があることからわかる通り、ごくありふれた光景なのである、
男の子が生まれてもバッサリと男である事実を切り捨てることは当たり前のようにこなしているのである。
それはやはり、プリズム族は女社会故のことであり、この社会の世界ではもはや常識だからである。
だが、ラーシュリナは……シャルアンがそう言うのとは対照的に――
「ラーシュリナは違うの!?」
ミュラナが答えた。
「ええ、ラーシュリナはね、本来なら手術されるべきタイミングで忘れられた子なのよ。
まあ――何人かやればたまに1人や2人は忘れられることはあるけど、
忘れられたんならただ忘れられているんだけどって言えばいいだけの話なんだけど――」
その先はラーシュリナが言った。
「私は……忘れられたのもきっと運命の思し召しなんだと思って、このまま男として生きていくことにしたんです。
だって、ここはメシアの生まれた里――だからこそ、これは私に与えられた試練なんだ……そう思って生きていこうと思ったんですよ。
だから――私は誰にも言わずにこのままで行くことにしたんですよ」
しかし、ミュラナとシャルアン、そしてレミシアには伝えていた――他の者は知らないことなんだそうだ。
ところが――
「まったく……ラーシュリナってばこんなこと言ってるけどさ、みんなどう思う?」
と、シャルアンは訊いた、どう思うって――
「こんな男、いるわけないと思わない?」
確かに! それは全員で納得した。
「うん! だって、ラーシュリナって本当におしとやかだよね!
しぐさも話し方も何から何までさ! 服だってオシャレに着こなしているし!」
レイはそう言った。
「だって、ラーシュリナ、あなたには男なんていうのは到底無理よ――
そもそも女らしく育てられているからね、男になることを知らないでしょ?」
シャルアンはそう言うが、ラーシュリナは反論した。
「そっ、そんなこと! 私だってやればできるハズです!」
「そう? だったら港にいるような男のようにふるまってみたら?
服装を変えてみるとか、大股広げて座ってみるとか――」
「なっ!? そ、そんなこと! できるわけありません!
服はオシャレじゃないですし、それに大股……そんなはしたないことなんてできません!」
いやいやいや、んな発言しといて何処が男だよ――絶対に無理でしょ。
確かに性別上は男なのかもしれないが、それはあくまでプリズム族ではのカテゴリであり、
彼女は外の世界に出れば確実に女である……手術しちゃえばいいんじゃないの? そういう感想しか出てこない。
というのも、ラーシュリナの場合は単に使命感で男であると言っているだけで、
男女の区別として言っているわけではなかった。
正直なところ、どっちでもいいのである――プリズム族の感性ゆえに。
「流石に聖獣様はお詳しいですね、
確かに、私の知り合いの何人かもそれをしていますね。そして、実際に子供まで生まれています」
自分で言ったこのセリフ……この通りになるのが彼女の未来……なのかもしれない?
とにかく……プリズム族とはつまりは女だけの種族、
ゆえに”プリズム族とは”こういう種族なのだ。