レイはラーシュリナのベッドの上で大の字になって倒れこんだ。
「はぁー! もうお腹いっぱい、食べられないよ……」
クラナはキレた。
「こら! ったく……ごめんなさいね、ラーシュリナ……」
ラーシュリナは嬉しそうに答えた。
「いえいえ! 折角ですからリミュールでゆっくりして行ってくださいな!」
プリズム族の里で……ゆっくりと、忘れられない思い出を……まさにプリズム族のリップサービスゆえってことか、クラナは思った。
男はもちろん女も取り込んでいけるわけだな、クラナは考えた。
「あのさ、ところでさ――」
クラナは訊こうとすると、先にラーシュリナが答えた。
「我らが聖女様ですか?」
クラナは頷いたが――
「妊娠しているんだっけ――明日にしようか」
それもそうか……ラーシュリナは考えた。
「そうですね、彼女の体調を考えてそうすることにしましょう」
だがしかし――
「こんばんは! クラナさんは来てますか!?」
と、やはりプリズム族の女性がその場所へとやってきた。
「なっ!? セレイナ!?」
クラナは驚いた。
「えっ!? あっ! クラナさん! ご無沙汰してます!」
なんとも落ち着いた雰囲気のプリズム族、そう――彼女こそが聖獣レジアである。
4人で話をしていた、クラナとレジア、そしてラーシュリナとマグアスである。
「セレイナ、大丈夫かい? 妊娠してるって訊いたけど――」
セレイナはにっこりとした顔で答えた――なんともにっこりとした顔が特徴的だった、その顔はまるで――
「ん? あれ? ラーシュリナってまさか――」
ラーシュリナはにっこりとした顔で答えた。
「はい! セレイナ様は私の祖母様です!」
聖獣と血がつながっているのか――
そのあたりはレイにも通づるところがあった、彼女はクロノーラの血を引いているのだから。
いやいや、祖母様ってセレイナ何人産んでいるんだよ、
プリズム族で子沢山って旦那は相当だな、多分5人じゃねーぞ、この調子だと10人は確実に超えてるぞ。
確率で考えるとプリズムで10人って奇跡を通り越してもはや異常なんじゃないだろうか。
「クラナさん、その節はわざわざ飛んできてくださってどうも――」
セレイナは申し訳なさそうに言った。
「まったくだよ! 飛ぶのはキライだって言ってるだろ! ホントにもう!
……ま、でもあんたが無事に子供を産んでくれる光景さえ見られれば私も嬉しいけどね――」
マグアスは首を振った。
「ところでイーグル・ガンだが……またランゲイルに発ったのか?」
そう訊かれてセレイナは表情が暗くなっていた。
「どうやらそのようだね。
ったく、あいつは人間時代から無茶が過ぎるやつだって聞いてるからね――
不思議なことに、クロノーラの記憶でイーグル・ガンっつったらその記憶が真っ先に飛び出してくるんだ。
でも、それだけの修羅場を潜り抜けてきたやつだからちょっとやそっとじゃあやられたりしないだろうさ、
そこは安心していいと思うよ――いや、それはセレイナが一番よくわかっていることだろ?」
そう言われてセレイナは頷いた。
「そうですね! でも――それでもやっぱり心配です。
クラナさん、あの人のこと、お願いしてもいいですか……?」
クラナは得意げに答えた。
「私に任せなさいな」
セレイナはそう訊いてにっこりとしていた。
セレイナはそのまま帰って行った。
おつきがいるようで、彼女に連れられて戻って行った。
「セレイナ=レイティア……出生は10億年前の古株だな、しかもまさかのイーグル・ガンと同じ時代の出生だ、偶然か?」
マグアスはそう言うがクラナが言った。
「偶然じゃないよ、クロノリアの試練の祠にも2人が出入りしている記録があった、1回だけでなく2回や3回……何度もあるね。
恐らくだが、2人は夫婦で同じ刻みを歩んでいるようだね。
なんともロマンチックな話じゃないか? 私ゃ、好きだけどね!」
「私もです! 本当にロマンチックなご先祖様です! 本当にステキ!」
ラーシュリナもときめいていた。
「純粋に長寿というより、クロノリアの試練の祠を利用したが故のことだということだな。
レイの変貌具合……まさにクロノリアの力ありきということか」
クラナは考えた。
「いや、最初の試練の祠での修行後に精霊界の”訃音の祠”で精神修行をしにいったって記録が何故か残っているんだ、
これが意味することは私にはわからないけど何か大きなものの力が動いているのは確実ってことだね」
マグアスは悩んでいた。
「精霊界に行っておいて精霊界にそのまま残らなかったということか、そこで聖獣になるという選択肢を選ぶとはなんとも変わった2人だな」
そこへスクライティスがやってきた。
「目的があるのかもしれないね、時代の”大きな流れ”を左右するほどの何かのためにね」
時代単位……クラナとマグアスは悩んでいた。
「まあ……その規模の話になるようなら我々の手に負える話ではないということになるが――」
マグアスがそう言うと、クラナは訊いた。
「確かにその通りだ、恐らくティルフレイジアの差し金のようだ。
10億年前と言えばちょうどティルフレイジアがスクライトの代のことだ、あいつが何かしたと言えばすべてが説明つく」
スクライティスは呆れたような態度で訊いた。
「おいおい、私が何をしたって言うんだい? ご先祖様が? それはどうかな?
大事なことなら先祖代々伝わっている話はあるけど、そんなことは一言も触れてはいないからねぇ、何かの間違いじゃあ?」
いーや、怪しい……クラナとマグアスはにらめつけていた。だが、言っていても仕方がないのは明白である。
だって、ティルフレイジアだぞ? 今後はそれが合言葉になりそうだ、酷い……