クロノーラ・クロニクル

第3章 旅は道連れ世は情け、人はデコボコ道中記

第38節 騒動再び

 東の大陸ではまたしても物々しい雰囲気に――
「なんだなんだ? あの宿場町、妙に人が多くないか?」
 ディアは馬を引きながらそう言うと、 レイは馬車の中から顔を出しながら町の様子を眺めていた。
「えっ、また盗賊団!? 壊滅したんじゃなかったっけ!?」
 それにはマグアスは呆れていた。
「人のサガというやつだな」
 ウェイドは悩んでいた。
「ファルステッドはまだ先ですよね、その前に情報収集でもしましょうか?」
 そのほうがいいかもしれない。
「ねえラーシュリナ、どういうことかわかる?」
 彼女はエルトーナの港にいたのだ、この大陸からやってきたのであれば――と思ったらあてが外れてしまった。
「すみません、私、 まずはドミナント地方にいるプリズム族さんに挨拶をしておこうと思いまして、 それであの日はドミナント大陸に来てからちょうど2週間後のことで、 次はレイさんたちに会うことを考えていた日だったんですよね――」
 そうだったのか、ということはこの2週間に何かがあったということか。
「こういうときに、あんたの力を使ったらどう?」
 と、クラナはスクライティスに振った、だが――
「いえいえ、ウェイドさんの言うように、こういう時はまず町の人に話を聞くべきでしょう、”普通”はね」
 なんかイラっときた。こういうところあるんだよな、こいつ――

 情報収集した結果、いろんなやつがいて、とにかく、混乱している状況だった。
「状況がつかめませんね。魔物がいて? 盗賊団がいて? 魔女がいる? 何が何やら――」
 ウェイドお手上げだった。
「どーなてんのよ、やっぱり”予測”でもいいから教えなさいよ、スクライティス!」
 レイは怒りをあらわにしていた。
「いえいえ、だから、封じられた邪悪の影響で力場に乱れが生じ、 ”魔物が”活発になり、ますます困窮を極める世界になる昨今、行き場を失い、”盗賊”に身をやつすものの続出、 そして、そんな世界を良しとせず、自らの意のままとなる世界とするを企む”魔女”の出現――ということですよ?」
 なるほど、よくわかった、まずは一発殴らせろ。
 しかし何はともあれ、状況がなんとなくわかった。 それと4年前みたいに、さらにそれらに対抗するための勢力が続出中ってこともなんとなくわかった。

 そして、例によってファルステッドにたどり着いたレイたちだが――
「何!? ここ、要塞都市!?」
 なんだか知らないけれども、以前のあのバリケードの町よりも強固なたたずまいの町が出来上がっていた。 町は木や土・レンガなど、とにかく、壁になりそうなものであれば何でも使い、外界からの攻撃に耐えられそうな感じの状態を保っていた。
 その入り口には番兵が立っていた。
「何をしている!? 入るのならさっさと入れ!」
 町のあまりの変貌ぶり……レイたちは躊躇っていた。

 町の中は、あんまり何も変わっていないのだが、この要塞は……なんとも物々しさを感じずにはいられなかった。
「バリケードの町はなくなってここに統合されたそうですよ」
「そうそうそう、なんていうか、魔女の話は全然聞けなかったんだけど、 その代わりに美しき聖女様ってのがいて、この地方を治めているんだってさ。 この要塞も聖女様の指示で作られたそうだよ。 聖女様って言ったらヴァナスティアの聖女様だけど、それとは違うお方みたいだ。 ああー、一目でもいいから俺もその美しき聖女様を拝んでみたいもんだなぁ♪」
 とりあえず色ボケクソウサギは蹴っておくことに。

 ファルステッドでは魔女のことは聞けなかったがその前の宿場町では情報があったので、 アーケディスには警戒しながらやってきたレイたち。 案外聖女様ってのは魔女なんじゃないだろうか……例の魔女ってプリズム族だったじゃんか。 えと、七色の魔女、名前は――なんだっけ?  4年前のことなので誰も覚えていないか――蹴り飛ばしてどっか行ったクソウサギは別として。
 とにかく、魔女なら誘惑魔法でなんやかんや丸め込めるんじゃあ――レイは考えた。 ん、待てよ、それならば――と、レイはラーシュリナに訊こうと思ったが、 その前にアーケディスに着いてしまって訊きそびれてしまった。 それ以来しばらくこの話題を忘れていた。
「ガトーラは無事かな――」
 ディアはそう言った、クロノリアに行く前にここに寄ったらガトーラがここにいた、 だからアーケディスにやってきたのである。
 すると――
「ガトーラはあの例の塔の頂上にいるようだな」
 と、マグアスそう言いつつさっさと1人で入ってしまった――って! ちょっと!
「どうした? ガトーラが平然としているのであれば別に警戒するほどのものではないと思うが?」
 やっぱりこいつ腹が立つ。またぶん殴らせてもらっていいだろうか。
「やれやれ……言うことはその通りなんだけど、言い方ってのがあるだろうに、 聖獣ラグナというのは……そういうこと言うのなら4年前の魔女の件でのことを――」
 スクライティスはそう言うとマグアスは焦っていた。
「が、ガトーラは例の頂上にいるようだ! どうやら魔女はいなさそうだ! どうする!?」
 手のひらクルー……