そうだ、レジアって確かあれだ、
「そう、プリズム族の聖獣だ。
レイにも話したと思うけど、プリズムの女の出産確率は1回の”行為”につき3%未満って言われているのよ。
生命が生まれてくること自体が奇跡と言っても過言ではないのにこんな低確率をものともしないような本当の意味での奇跡!
だけどこの通り、レジアは――」
クラナは話を続けていた。
ん? いや、待てよ――レイは異様な感覚を受けた、それって言うのは4回も妊娠して――
「1回の”行為”につき出産確率3%未満? なのに4回妊娠!?」
クラナは腕を組んだ。
「2回目までは一応あり得る話らしいよ、よくわからないけど1回妊娠すると2回目の妊娠確率は上がるみたいね。
けど、流石に3回以上は――」
ないの? レイは訊くとラーシュリナが答えた。
「3回目は極稀にあるようですが、4回目は前例がまずないと言われています。
そもそも3回目までとなると身体が流石に追いついてくることもなく、
出産確率は結局3%未満で落ち着いてしまうみたいです。
私たちの身体ってもともとはそんな風にできている身体ではないようですので……。
女性なのに妊娠能力が低いっていうのもなんとも妙な話ですけどね」
クラナは頷いた。
「ま、彼女らはこれだけの美貌なんだから絶対人生勝ち組をさせないがための自然の節理ってことなんだろうね。
それに、プリズム族はもともと女自らが戦うために存在してきた戦闘民族だから、
妊娠能力についてはそこまで重要視されていないってことでもある。
だから、それはそれで自然の摂理ってことなんだろうね」
なんだけど、それをおして4人目って!? レイは悩んでいた。
「レイさん……実は4人ではなさそうなんです。
実はレジア様とお話していた際にですね――」
な、なんとまさかの5人目!?
3%未満で何回”行為”をしたら5人も生まれるんだぁ!? レイは耳を疑っていた。
「旦那ってイーグル・ガン!? どんな男なんだよ!?」
レイはそう訴えるとラーシュリナは考えた。
「そうですねぇ……まずはなんといってもすっごいイケメンな方ですね!
それにとても優しくって、奥様のレジア様のことはいつも女神様と言って慕っておいでなんです!
自分の惚れた女神なんだから大事にするのは当たり前だし、
それに、そんなに美しい女神様の下僕なんだから女神様の虜は虜らしく女神様を愛し続けるんだって――
すっごく素敵なエピソードですよねぇ♪ いいなぁ……私もあんな風に愛し合えるような方が現れないかなぁ……」
それはっ! レイも食いついた、なんちゅーやべぇエピソードだよ、
そのイーグル・ガンって聖獣、マジでやべぇ男だな――
流石にレイも女子なのでその手の話題には一応興味はなくはないし、ラーシュリナが憧れるのもよくわかる話だった。
しかしそんなことより、レイとしては目の前の綺麗なお姉さんが憧れを抱いて目をキラキラと輝かせている様のほうに食いついていた、
ラーシュリナってただただ綺麗っていうだけでなくて無茶苦茶カワイイ……
とにかくわかった、その聖獣夫婦の性質からすると、
どうやらイーグル・ガンってのは奥さんのことを無茶苦茶溺愛しており、
それこそプリズム女相手に5回も子供を産ませるお盛んな男なんだと。
それでいてイケメン……とにかくいろいろとやっべーな……
まさか色ボケクソウサギやムッツリウェイドみたいな男じゃねえだろうな!?
レイとしてはそれだけがどうしても心配で仕方がなかった。
「そんなことありません!
だって、奥様のことをとっても溺愛しているんですよ!
それこそ、自ら彼女の下僕になるとまで言ってプロポーズされたそうなんです!
まさに女神の騎士ですね! いいなぁ……」
聞けば聞くほどいろんな意味でやばいエピソードだった、
これでマジで色ボケクソウサギみたいな男だったらぶん殴り確定だな。
「それから、やはり伝説のフィールドの修理を続けているんですか?」
それはもちろん――レイはそう言った。そしてレイは――
「えっと、とにかく話はこういうこと?
クラナがつまりプリズム族の”番人”たる女流剣士、つまりラーシュリナをここに来るようにしたんだよね?
本来はその番人さんは里のためにいろいろとしているのが主なお仕事で、里から離れるようなことはしないハズ。
だけど、今回はレジアに働きかけて、それができるように仕向けたってこと?」
クラナは感心していた。
「おや、察しがいいね、最近のあんたのその考察力にはなんだか度肝を抜かされてばかりだよ」
レイは得意げだった。しかし――
「でも、それでも彼女が来る保証はないんじゃないかい?
だって、そのプリズム族の番人ってのは1人でやっているわけじゃあないんだよ。
つまり、別の誰かに白羽の矢が立ったっておかしくはない……違う?」
レイは首を振った。
「うーん、それはどうかなぁ?
だって、プリズム族って掟って言うのがあるんでしょ?
それの上で番人が決まっている……だとすると、外にお使いに出す上でもどの番人を出すかということも慎重に扱ったりしないもんかなぁ?
つまり、遠くに出すんだったらラーシュリナしかいない……ってことにならない?」
クラナは舌を巻いていた。
「あんたって時折私の想像を超えてくるから驚きだよ。
正直、私はそこまで考えてなかった……できればラーシュリナが来ればいいなって思っただけだったからね」
なんでよ……レイは呆れていた。
「クラナって案外大したことないんだね」
それに対してクラナは得意げに答えた。
「そうさ、言ったろ? だからレイには早いところクロノーラとしての力を身に着けてもらわないと困るってことだよ」
うぇっ……マジか……レイは悩んでいた。
するとそれに対してラーシュリナは嬉しそうに言った。
「なるほどですね。
でしたら私もまだまだ未熟者ではございますが、
もし私でよければ、そのようなレイさんを守るためにお供をさせてくださいませんか!?」
ええ、是非にお願いいたします! ええ、是非にお願いいたします! ええ、是非にお願いいたします!
レイの中ではその3つの選択肢以外には存在し得なかった――え、全部同じ選択肢!?
やばい、ゲシュタルト崩壊してきたな……
ということで、ラーシュリナが仲間になった!
「おーい、ボクは……カワユイ、カワユイ……ウサギしゃんなんだぞ……」
あっ、そう言えば……
ずっと3人で話をしていたのだが男共は蚊帳の外、
中でも特にこの色ボケクソウサギはどうも先ほどからアピールしていたようだが一切気が付かれていなかったようだ。
「ボクは……ウサギしゃん……」
ディアの必殺技・カワユイアッピルは――
「ねえ、そこのおねーさん……美人で、スタイルがよくって――おねえさん……」
炸裂することがなく、美人でスタイルのよいラーシュリナおねーさんはレイと一緒に姉妹のように戯れていたのであった。
「あの娘は諦めな、レイが離さないんだよ」
クラナはなだめるように言うとウサギはしゅんとしていた。
へへっ、ザマぁクソウサギぃ! ラーシュリナおねーちゃんは私のものなんだぜぇ!
レイの心の中は心底意地悪く笑っていた。