遥か東の森の中で――
「ちくしょう……これしきの傷でやられる俺だったのか……?」
男はそう言いつつ、その場で倒れた。
すると、そこに女性が現れ――
「あら♪ こんなところにエモノをはっけーん! ラッキー♪」
……プリズム族だ、エモノというのは男のこと、つまり、この女は倒れた男を取り込もうとして――
「ちょっと待ちなさい! そこの方、もしかして――」
と、もう一人の女性がその存在に気が付き、手で男の額を抑えていた――
「何よ! これは私のエモノでしょ!?」
すると――
「いえ! この方には既に想い人がいらっしゃいます!
それも――我らが偉大なる聖女様と共にすることを誓ったお方です!」
それには言われた女性が驚いていた。
「ウッソ!? 我らが偉大なる聖女様ってことはまさか、イーグル・ガン様ってこと!?」
そして――
「うっ……ここはどこだ……?
そうか、運ばれたのか――」
と、彼の目に飛び込んできた光景はどこかの民家の中のようで、ここはベッドの上――
「うおっと!」
と、何者かが彼の身体をしっかりと抱きしめていた、間違いなくプリズム族の女性である。
すると、その様に男はそっとその女性の頭の上に手を置き、撫でた。
「悪かったな――ずいぶんと心配をかけちまって――。
まさかあんなヤバイのがいるとは思わなかったからな……」
女性は涙声で訴えていた。
「お願いです、もう、どこにもいかないでください、
無茶なことだけはなさらないでください――」
すると、男は上半身を起こすと、そのまま彼女の身体を持ち上げ、ベッドの中に引きこんだ――
「大丈夫だ、しばらくはどこにもいくことが出来ねえ……
自分の女をこれ以上泣かせるわけにはいかないからな――」
そして、彼女を優しく抱きしめていた。しかし女性は――
「でも……また行かれるのですよね……?」
男は悩んでいた。
「……ああ。でももう心配するな、言ったろ?
俺はそう簡単には死んだりしないってな。お前がいる限り、死ぬことはできないのさ。
なんたって俺はこんなに美しい女神様の下僕だからな――そんな女を置いていくことなんかできない。
いいか? これは約束だからな?」
そう言われると、女性は嬉しそうだった。
「それなら……もう少し、私とこうして一緒にいてくださいませんか、旦那様♪」
こっ、この展開は……
「ふう……こんな女に惚れられると、いろいろと大変だ……」
「そうですか……うふふっ♪ でしたらもっと大変な目に遭わせて差し上げますわ、旦那様♪」
「なっ!? おい! そんな言葉、どこで覚えたんだ!」
「えっ!? あっ、はい、昔のお友達さんです。
それに……ここの里の皆さんもごく普通に使ってらっしゃるようですし――」
「はぁ……ったく、余計なことを……」
「ふふっ♪」
このリア充共め! という展開になりましたとさ、めでたしめでたし。
ともあれ、”封じられた邪悪”が目覚めてしまったからには”月光の破片”の回収は最後になりそうだ……回収できるときは来るのだろうか。
とにかく、最初に目指すは再び東の大陸のアーケディスまで行くことになったレイたちだった。
「とりあえず、あそこまでいかないことには始まらないからね、さっさと船に乗ることにするよ」
クラナは言うとレイは頷いた。
最初の目的は”水鏡の欠片”、アーケディス地方のどこかにあったとのことだけど、具体的な場所まではわからなかった。
となると、もしかしたらガトーラが知っているかもしれない……ディアによるとガトーラがアーケディスにいるらしいので、
まずはそこに行くことになった。
そして、なんとかエルトーナへと到着したレイたち。しかし、到着してからというものの、いきなり――
「ぬっ、この感覚は――俺の美女センサーが――美女がこの俺を呼んでいる!」
色ボケクソウサギの美女センサーがうずいていた。
「ったく、この色ボケクソウサギ! いい加減にしろ!」
クラナが怒っていた、しかし――
「こっ、これは!」
なんと、色ボケクソウサギの美女センサーだけでなく、
レイの美女センサーのほうはもっと敏感に働いていた。
「レイ! どこに行くの!」
クラナはそう言ってとどめようとするが、レイはその場から飛び出し、美女センサーの赴くがままに無我夢中で飛んで行った。
仕方がなく、みんなは彼女の後を追うことにした。