あれから4年が経ち、クロノリアのふもとにあのウサギがやってきた。
ウサギよりもいち早くマグアスがやってきていて、話をしていたようだ。
「せっかくだからね、雷光の石、ありったけ持ってきたよ」
「ご苦労だったな。ところで、ガトーラは何か言ってたか?」
「そのことなんだけど大事な話があってね――」
大事な話? なんだか真剣な話のようだ。
「――そうか、では、ようやく動き出すのだな」
「みたいだね、俺はこの通りだから詳しくはあんまりわかんないんだけど、どうやらそうみたいだ。
だからレイやウェイドには悪いけど、次に冒険では完璧に巻き込むことになるみたいだね――」
「あの2人なら大丈夫だろう、特にレイは――次のクロノーラとなる娘だからな」
一方で、クラナはウェイドとスクライティスと話をしていた。
クロノリアの都やその周辺は世界崩壊以前の潤いをある程度取り戻したようで、
それなりに人々の行きかう街道として整備されつつあった。
レイの家の中で3人はそんな話をしていた。
「それにしてもクラナさん、聖獣の正体は内緒なハズなのに、町の人の中に結構馴染んでいますねー」
「当然よ。これぐらいできないと聖獣として失格でしょ」
「あ、そういえば気になっていたのですが、スクライティスさんは?
確か、ゲートって今まで封印されていたのですよね、なのにそれでもクロノリアの外で調査を?」
「私は特例として外出の許可があるんだよ」
するとクラナは――
「この血筋には何をどう制限したって仕方がないのよ。
厄介者ではあるんだけど面倒は起こさない、だから気にせずに放っておくしかないのよ」
というと、スクライティスは得意げに答えた。
「おやおや、またずいぶんですね」
「それで? シュリウス遺跡にこもって何か成果は得られたの?」
「ええ、何とか。あそこだけ異様な力によってねじ伏せられていますね。
まるで空間が捻じれているかのような感じがしますね。
前にも言ったように、少なくとも200年前の世界崩壊の影響ではないですね」
スクライティスは改まった。
「不思議そうな顔をしていますがウェイドさん、私の力ですけれども、こんなことが”見える”んですよ。
例えば――今日あなたは、武器の手入れをしましたね。
最初に剣を手入れしようとしていたのに、そのちょうど道具を切らしていた、
だけど、盾を手入れする道具はあったので、そちらを先にしましたよね?」
すると、スクライティスは剣を手入れするための材料を彼の目の前に差し出した。
「足りていなかったのはこれですね」
ウェイドは驚いていた、この男――一体何者!?
しかも、この必要な材料というのは、ドミナントまでいかないと手に入らないはずなのに!?
「ここでこの話をすることと、この道具をあなたに渡すことは想定通りです。
道具は少し前にディアに買ってきてもらっていました。しかし、この程度のは序の口です。
先祖はもっと大きな力を持っていて何か大きなプロジェクトを成し遂げようとしたのですが、
実際にそのプロジェクトを完遂させるには未来の力が必要だということで、
残りの仕事はすべて子孫に託したとされています」
そっ、それは、いったいどういうプロジェクト?
「さあ? それを知るのは最初の”スクライト”の名を冠するもの、
つまり、私の先祖であるスクライト=ティルフレイジアにしかわかりません」
スクライティスは続けた。
「彼の力は絶大です。もはや聖獣にも匹敵――いや、それ以上とも言われているそうです。
しかし、絶大すぎるがあまり、恐れも感じていたようです。
そのため子孫は――私も先祖スクライトほど大きな力は有してはいないのです」
なんとも奇妙な血筋である。
「ですが、この世界の現状は御覧のあり様です。
そうです、聖獣ほどの力というだけあって、世界の情勢に大きく左右されるのもこの力の特徴――
聖獣の力も衰えているのなら、私の力もまた衰えているということなのですよ」
それはいいのだろうか悪いのだろうか。
そして、クラナたちとマグアスたちが合流し、話はついた。
「あれ? クラナ、レイはドコ?」
ディアは訊いた、そう言えば彼女の姿が見当たらない。
「レイ? ああ、そろそろ、修行から戻ってくる頃なんじゃあないの?」
そう、彼女は次の旅に出る前に修行をしていたのだった。