それは、例のバリケードの町で情報を集めるため、一度自由行動にした時のことであった。
自由行動……といっても、七色の魔女におびやかされている町での自由行動、
異様な緊張感に包まれていてあまり余裕はなかった。
「皆さん、なんていうか、ショックでうな垂れていますね――」
ウェイドとクラナが話をしていた。
「無理もないよ、その魔女ってのが出て、さらにどういうわけか、今まで信頼していたはずの仲間が……って状況下だからね」
「ええ、まあ――というより、どうして仲間が急にその第3勢力に対して有利になるようなことをするのでしょうか?」
「うーん、なんだろうね、よくわからないよ」
「まあ、そうですよね、謎だらけです」
「ああ、謎だよ。ただ――なんとなくだけど、思い当たる節があってね――」
と、クラナが話を続けたが、ウェイドはその場にはいなかった。
「何よ、いなくなるんなら先に言いなさいよ――」
クラナはもんくを言った。
さらに探求し続けるウェイドは破壊された壁のところへと赴いた。
「危ないっすよ」
破壊された壁の近くで見張りをしている人に注意された。
「ここで何を?」
「見張りだよ、壁が壊されてしまったからには仕方がないからな、
またあいつらが来るといけないから、こうやって入口を見張っているわけ」
「魔女に対抗しているのですね。
失礼を承知で訊きますが、勝算はあるのですか?
町民たちに何があったのかはよくわかっていませんが、それ以上に魔女を語るほどの存在が来るほどです、そうなると――」
見張りは答えた。
「だな、そいつが問題だな。
最初はただの小競り合いみたいなところからはじまり、気が付いたらいろんな勢力が台頭にたっていた。
この辺のやつじゃあなさそうだから教えておいてやるが――」
アルゴーナスではもともといろんな勢力が様々に絡みあっていて、紛争の絶えない地だった。それで現れたのが七色の魔女である。
だが、魔女の勢力も最初はいろんな勢力の中の一部でしかなく、今のようになったのは割と最近の話だという。
「皮肉なことに、魔女様のおかげで争いもなくなり、敵対する勢力の盗賊まがいの残党すらも処理されていった……
というのがこの辺り一帯の真実なんだが、だからこそ魔女に不安を抱く者が多い……大きな勢力となると、やっぱり無茶苦茶な支配が懸念される……
この辺り一帯の町にいる勇士はそんな連中ばかりが集まっているってわけだ。
だから、たとえこんなことになったとしても諦めるということはないみたいだな」
そうだったのか、ウェイドは納得した。
ちなみに見張りの彼は他所から来た雇われなので、この戦いについてはそんなに拘りはないそうだ。
「だが――仲間の裏切り行為によってさらに劣勢になっている、
クライアント様はまだまだ対抗する余地があると思っているらしい。
それなら――俺も仕事だからな、ここまできたらとことん付き合うしかないよな」
泣く子と地頭には勝てぬということか、それはなんとも辛い話である。
ウェイドはそのまま進み、周囲を改めて確認していた、その光景は――
「確かに、これは少なくとも魔物ではなくて、人の手で破壊されている、厄介なことになりましたね――」
ウェイドはそう考えた。
壁の破壊されている方向は――外からだけでなく内側からも――ますますわけがわからない。
そして、そこいらにうずくまっている人たちのほうへと目をやると――
「ほら、とりあえず元気を出せよ。ここでこんな落ち込んでいても始まらないだろ?」
「元気なんか出せるかよ、せっかくあいつらを追っ払うための壁が完成したってのに、それをあいつら――」
うずくまっている人を仲間の一人がはげましているようだったが、うずくまっているほうは反論していた、無理もない。
「許せないのは俺も同じだ。
あいつらは裏切った、だから俺も裏切ることにした。
こんなところにいるのはもうゴメンだ、せっかく築き上げたものがこのザマ、
だから俺はここで落ち込んでいるぐらいならこの地を離れることにしたんだ」
なんだか寂しい話をしている――余程の目にあったのだろう――
「確かに、常に前を向いて歩くため――私がハンターになった時もそうでしたね」
ウェイドは感傷にふけていた。