クロノーラ・クロニクル

第2章 卯の刻の卯の地の抗争劇

第26節 虎穴に入らずんば

 抜け出した以上はいつバレるとも限らないので早めの行動をとることにした2人。 目的は古城のてっぺん、それだけに背の高い建物ということもあって目標物はわかりやすかった、 足元も割と歩きやすいし。
 そして城の入り口へとたどり着いた2人は――
「なによ、結構手下が多いじゃないの」
 クラナは悩んでいた。 城の外側からこっそりと内部を覗き見ていると、男たちが城の1階にたむろしている状況が見えた。 とりあえず、正面の階段を登ればよいことは分かったが、どうしたものか――
「レイ、準備はいい?」
 クラナはレイに訊いてきた。
「いつでもオッケーだよ!」
 ということで、早速クラナは雷魔法を放った!  標的に強烈なショックを浴びせると、一度に男たちを気絶させた!
「さ、目が覚めないうちに行くよ、レイ!」
 2人は早々に最上階を目指した、ここまできたら足踏みしている場合ではない。

 最上階へは難なく到着した。
「うひゃあ! 高いね! クラナ、気を付けて!」
 レイは注意を促した。クラナは頭を押さえていた。
「ったく……なんでよりによってこんなところにあるんだよ……仕方がないけどさ――」
 すると――
「クラナ! あれは何!?」
 レイは指をさして示していた、それは屋上にあるオブジェの一部で、なんだか激しい光が――
「雷光の石……いや、さしずめ雷光の”岩”ってところだね。 クロノリアでもエンチャント素材に雷を当てて雷光の岩を作るんだけど、 ここでも同じことが起こったみたいだね。 だけど本当にガトーラの言う通り、ここでもそれを作っていたのか―― 古のアーケディスってところはどうやら文明の利器と魔法の力が混在した世界だったのかもしれないね」
 それは別に普通のことだと思っていたレイだが、クラナは首を振った。
「クロノリアは特殊さ、魔法ありきで成り立っているところだからね。 普通なら文明の発達により、機械の力がどんどんと発達していって魔法は後退していくものなんだよ。 魔法は使い手を選ぶし、何より魔法は使い手自ら何らかのアクションをする必要があるからね。 一方で機械はそれ自身が全部をやってくれるんだ。 だから使い手自らが何かアクションが必要なものと必要のないもの――」
 必要のないものを選ぶということか、レイは納得した。クラナは続ける。
「だから機械と魔法は相容れないもの、最初は誰しもがそう思っていて魔法はどんどんと廃れていった―― 過去にはそういう時代もあったようだけど、そんなことにはならなかった」
 そう、そこで登場したのがアトローナシアの人たちの存在――とりわけ”シルグランディア”の存在が大きかったらしい。
「今のアークデイルでも機械と魔法が共存しているみたいだね!」
 レイはそう言うとクラナは頷いた。
「みたいだね。 そしてそれは、このアーケディスにおいても長らく続いていたことだったようだね」

 ということで2人は早速その岩を何とか砕いて採取することにした。
「ん? 今の何?」
 レイは何か違和感に気が付いた、空が一瞬だけ光ったような――
「今の――って、何かいるようだね……さっさと帰るよ!」
 クラナはそう促すとレイは頷き、さっさと帰ることにした。 するとその帰りの途中、誰かがこちらに向かってきていた、それは――
「あっ、お二人とも、無事だったのですね!」
 ウェイドだ!
「ウェイドさんこそ、無事だったんだね!」
「ええ! あの後、私は何とか難を逃れたのですが、魔女の下僕の数も多く、 とにかく連中から身を隠すのに必死でした――」
 レイとウェイドは話をしていた。
「それで、あの2人は?」
 クラナは訊いた。すると、ウェイドは首を振りながら言った。
「ダメでした、やはり光がどうのと言っていたあたり、それに取り込まれてしまったのではないかと。 あの時あなた方が急に意識をなくし、その後でいきなり魔女の手下たちに囲まれてしまったんですよ。 どうやら私は気づかれていなかったようですので申し訳ないのですが逃げるしかありませんでした――」
 ウェイドは申し訳なさそうにしていた。
「お2人を見捨てて1人で逃げてしまうだなんて――」
「ううん! いいんだよ! こうしてウェイドさんが無事だったということが確認できたんだから!」
 レイは前向きだった。しかしその時、再び空が光った!
「ちっ、そういうことか……レイ! この光、自然現象じゃあないから気をつけな!」
 クラナが注意を促した、どういうこと!?

 クラナはレイの手首を握るとウェイドから大きく距離を離した。
「えっ!? クラナ!?」
「レイ! 騙されないで! こいつは私らにただ会いに来たわけじゃあないよ!」
 どういうこと!? するとウェイドが――
「流石は聖獣様ですね、恐れ入りました。そうです、私はあなた方を足止めをしに来たのです」
 足止め? どうして!?
「レイ――ここにいる男共は七色の魔女の下僕たちなんだ、 ということはつまり、そう言うことだよ――」
 つまり、ウェイドすでに魔女の手に落ちていたのだ!
「あの方はとても素晴らしい方です――あの方のためならこの命、惜しくはありません!  そう、私、ウェイドは――あの頃より、あの方の下僕として生きることにしたのです!」
 これが魔女の魔力ってものか――レイは絶句していた。
「さて、それが分かったところで、まずはその石をその場においてもらいましょうか。 ここはあの方の庭――そこからものを持ち去るなどとは言語道断!  あなた方は窃盗を働いたものとしてこの場で処刑を――」
 すると再び雷鳴のような光が――
「マグアス! いい加減にしろ! もういいだろ!」
 クラナがそう言うと、ウェイドの背後のほうからそいつが姿を現した。
「そうだな、そろそろ頃合いだな――」
 これは――