日が沈み始めたことが森の中でもわかるほどだった、
少しずつ辺りは暗くなっていた。
さらにしばらく進んでいると遺跡のようなものが見え、その背後に何やら建物みたいなものが見えてきた。
そしてそのうちお城のような建物が見えた。
そのお城の頭は塔のように立っており……
「魔女の軍勢に出くわさず、首尾よく石を回収できればよいのだが」
マグアスは冷静に見定めながらそう言った。
「それより、この城ってなんなのさ? ガトーラは大事にされていたって言ってたけど……聖獣の記憶でなんかないの?」
ディアは訊いた、あんたも聖獣でしょうが……と言いたいところだが、彼はまだ聖獣になってまだ間もない存在で、
クラナよりもまだまだ日が浅く数年程度しか経っていないため、古い記憶から引っ張り出せるほどの技量ではないという。
「これはアーケディスよりもさらに古い”アーカネル”と呼ばれた町の城だ。
今から約10億年ほど前に栄えた都の遺産だが、時代を変えても建物だけは残されたようだな、用途はその時代時代によって変わっているようだが」
マグアスは説明していた。
「ふーん、やっぱりお城で合っているのか、魔女の居城としては申し分なしってことだな。
てことは魔女がいるのはほぼ確実ってところかな」
それもそうか、ディアの言う通り全員気を引き締めていた。
大昔はもっと立派な城壁だったのだろうか。
だがその城壁は大きく大破し、上半分ぐらいの壁が何かものすごい力で破壊されているかのような装いだった、
これが世界崩壊の傷痕だろうか。
しかし、さっきのバリケードの町で作られていたバリケードに比べるべくもないような、大いなる立派な壁だったに違いない。
そして、その壁の上には生い茂った木々が伸びていた。
それは城門を抜けて入るとわかる通り、中は石と木々だけで構成された場所だった。
「石畳とレンガや木でできた家に鉄なんかも使われた建物もあるけど……」
レイがそう言うとディアが言った。
「文明最初の段階では石や木、そして土などをほとんどそのまま切り出して使うけど、
やがては加工して使うようになるんだ、
自然に切り出したものだと耐久性の問題もあるから大掛かりなものを作るとなると限界があるからね。
だから土は焼き固めてレンガに、石はより細かい砂のほうを採用して水を混ぜたもの……セメントとかコンクリートとか呼ばれるものだね。
これらはある程度厚みがないと強度が出せない反面、木はそれらよりも耐久性がある特性を活かして壁として使う上で様々な加工を入れることで耐久性や機能性まで保っていた。
ここの遺跡群の建物を見るなりそういうものも多く見受けられるね。
こんなところにこんなものがあるなんて初めて知ったな……シュリウス遺跡よりもすごいものかもしれないぞ。
とにかく、ここは世界崩壊する直前まで都として機能していたんじゃないのかな?」
ディアは今度は自慢げに言っていた。
「とにかく、超古代文明の遺産と共に暮らしてきた都って感じだね。
世界崩壊から200年だと、まだ足場の石畳が割とはっきりしているあたり、世界崩壊直前までここで人々が生活していたのはほぼ間違いないな」
それにしてもこのウサギ……いろんな意味で不思議である。
しかし、町に入ってからというものの特に何が襲ってくるわけでもなし、一体どういうことなんだろうか。
とはいえ、町はそれなりに広く所詮は廃墟なのでこんなものなんだろう。
どこへ行けばいいのかわからないけれども、とにかくメインストリートらしき道筋の通りに進んでいくことにした。
木々が生い茂っていて見通しは悪いけれども、それでも石畳だったことが幸いして進みやすくはあった。
そのまま森林の中であるかのような古アーケディスの町の中を進んでいった。
だが、足元の進みやすさはそのままだが草木が押し茂っている様に悪戦苦闘、
視界がさらに悪く、結局進みづらかった。
時間的にはまだ夕日が沈み切る前であるにも関わらず、遺跡は夜みたいに不気味に暗かった。
「クラナー! どうなっているのー!」
レイは彼女の名を呼んで相手の存在を確認しながら進んでいた、下手したら迷子になりそうだ。
「少し甘く見ていたわね、まさかこんなところを進むことになるなんて――」
クラナ的にも想定外だった。
「なんだかあたりは真っ暗ですよ、こんな状況で”雷光の石”を取りに行くことってできるのでしょうか?」
ウェイドも不安だった。
「ほんとだよ。マグアス、あんたどう思う?」
クラナは彼に振ると――
「どうだかな。
それより、さっきからあのウサギの姿が見えんようだが?」
えっ、ディアがいない!? どういうこと!? すると――
「おーい! あっち、あっちだよー! あっちに光があるよー! あれじゃないのー!?」
ディアはやや遠目にいた。光? 出口? いや、ただの遺跡だろ?
「こらー! 先に1人で突っ走るんじゃない!」
クラナは怒っていた。それにしても光とはどれのことだろうか、レイにはわからなかった。