クロノーラ・クロニクル

第2章 卯の刻の卯の地の抗争劇

第22節 伝道師かく語りき

 ガトーラの家へとやってきた――ガトーラの家?
「本当はただの廃屋を自分なりにいろいろと改築してみようと思ったんだけどね、 農民たちのご厚意でちゃんと住めるレベルの家にしてもらったんだよ」
 確かにどこぞのほったて小屋感はあるのだが、それでも人が住む分には全く不自由しなさそうなちゃんとした建物だった。 そんなものを作ってもらえるとはこいつ、なんとも人望が厚そうだ、その点はちゃんと評価しようとレイは考えた。 そこへクラナが話をすると――
「”雷光の石”はクロノリアの地にあり――」
 ”フィールド”を治すための材料の一つ、雷光の石。かつてはクロノリア周辺でよく取れた石だったらしい。 しかし――
「世界崩壊の煽りで気候の問題で雷光が拝みづらくなってしまったんだよ。 確かに、この書物にもクロノリアにてって書いてあるけれどもね。 だけどその通りにはならなくなっているのが現状、だからあんたの所に来たのよ」
 クラナはそう説明するとガトーラは頷いた。
「なるほど、それもそうですか。 しかしそうなると――気候の問題なれば気候条件を満たせば容易に生み出せる……」
 言われてみればその通りである。 雷光の石、名前の通り雷の力によってそのパワーを得られる石――そういうことか。
「どれ……ちょうどいい場所を探り当てましょう――」
 と、ガトーラは目をつむって語り始めた。
「雷は高いところに落ちやすい…… それははるか昔の王国、かつては邪悪を退けた勇士たちの姿―― その時代の栄光と伝統を脈々と受け継いできた忘れられし地―― 石はその場所にある……」
 やっぱりこいつアカンやつだな、レイはそう思った。 最初のもそうだが、なんで遠いところから話をするような話し方をするんだこいつ。 まるで宇宙人である――いや、全部何となく語り口調だからこれが伝道師というやつか。
「で、その忘れられし地ってのはどこ?」
 クラナも少々イラっとしたような感じで訊いた。 ガトーラはぎょっとしたような面持ちで答えた。
「そっ、それは――ここから南のほうにある大都市の遺跡群にあるんだよ、 崩壊前の名を取って”崩落都市アーケディス”とでも名付けておこうか。 今は誰も住んでいない廃屋群の広がる都市遺跡だね」
 そう言われてクラナは気が付いた。
「アーケディス! 思い出した、古の時代は”アーカネリアス”と呼ばれた時代の都だね!  過去のクロノーラの記憶では、当時の王国の古城跡がそのまま残っているってことらしいけど――」
 ガトーラは頷いた。
「そう、目的の石はその古城の頂上にあるようだ。 世界崩壊の煽りを受けたにもかかわらずお城だけはまだ崩壊前の佇まいを未だに現世に残している、 余程大事にされていたとみて間違いないだろうね――」
 少なくとも一応近いところにあるらしい。

 トレイクで一晩を明かした。 ふう……クラナは上機嫌だった、トレイクはなんてすばらしいところなんだろうか。
 しかし、南のアーケディスへと戻るべく、以前のバリケードの町まで戻ってくると大変な状態になっていた。
「これは一体!?」
 例のバリケードが、以前にも増してさらに無残な姿となり果てていた。
「これが剣士たち……第3勢力の力だというのか!?」
 とウェイドは言うと、
「そうだ! ”魔女”の勢力だ!」
 その場に倒れていた町人が顔を上げ、彼らに向かってそう叫んだ。