レイは剣の試し切りをしつつ、3人で街道を突き進んでいった。
しばらくはこの海の街道を道なりに進むしかない。
途中でスペースの広いところに宿場町こそあれど、魔物の襲撃に遭ったりと、いろいろと大変な道である。
すると、何やら騒がしい音が聞こえてきた。
「ん? ねえねえ、あそこに誰かがいるよ!」
レイは気が付いた、このまま西のほうへ行くと勇敢にも女の人が1人、サンダー・フール4体を相手に戦闘を繰り広げている光景が展開されていた。
「しつこいですね! これならばどうでしょうかっ!」
すると、女の人は長剣を用いた炎の魔法剣で1体のサンダー・フールを焼き切った!
だが、ほかのサンダー・フールが彼女に追い打ちを!
「残念、ハズレです!」
しかし彼女はその攻撃を軽やかかつ、しなやかで華麗なるバックステップでかわした。すると彼女――
「これでトドメです! フレア・インパクト!」
その場から勢いをつけ、再び炎の魔法剣を使用した――
「あの技は! まさか、上級の魔法剣!?」
ウェイドは驚いていた。
そして彼女はそのまま周囲を巻き込む爆炎を放つ魔法剣を魔物の中心に叩き込み、魔物を一掃したのだった。
「あの人すごく強ーい! 超カッコイイ!」
レイは感動していた。しかし――
「しっ! なんかイヤなのがいるよ――」
クラナは注意を促した、上空からあのサンダー・フールと似たような印象の魔鳥が彼女の前に立ちはだかった!
しかもその魔鳥は炎をまとっており、サイズもサンダー・フールよりもはるかに大きかった。
「あれはブレイズ・フール!? なんでこんなところに!?」
クラナは驚いていた、どうやら余程の魔物らしい……レイはそう直感していた。
「とにかく、あいつは厄介だよ――あの娘1人ではとてもじゃないが手に負えない、加勢するよ!」
クラナはそう言うと2人は頷き、急いで彼女の下へとやってきた。
「こいつは随分と手ごわい相手だね。多分今まで出くわしたサンダー・フールの親玉か何かじゃないかな――」
「そのようですね。ですが、これを倒せば……この街道も少しは安全に通れると思います」
クラナはその女の人と話をしていた。なんて麗しい声なんだろう……レイは彼女の声に憧れていた。
しかし、レイが憧れたのは彼女の声だけではなかった……この人、すっごい美人……
いやいや、見惚れている場合じゃないだろ、先に敵を斃さないと。
4人は炎の魔鳥に立ち向かった。
こいつはやっぱり見た目通りの炎の使い手か。
ということはもちろん弱点は氷の攻撃だが……4人は苦戦していた。
「取り敢えず、私に任せて!」
クラナはそう言いつつ周囲に魔法バリアを展開した、魔法に対する抵抗力をあげる効果があるらしい。
しかし、あの女の人だけ効果範囲に入りそびれていた。
「あっ! ねえ、クラナ――」
そのことに気がついたレイはクラナに促したが――
「あら……まあいいか、彼女なら持ち前の能力で何とか塞ぎきれるだろう」
と、何故か諦めた様子。
持ち前の能力――なるほど、それだけ魔法が効きにくい体質ということか。
「みなさん! 私に続いてください!」
レイはずっとこの美女に憧れていた。
綺麗な上に強いとか、レイにとってはもはや憧れ以外の何物でもなかったようだ。
強いに言及すると、なんといっても魔法剣が強力なのである。
「あの! 私、ちょっとばっかし相手しておきましょうか!」
レイは自ら囮役を買って出た。相手の行動をそらして美女の技を決めてもらおうという作戦だ。
「あっ、はい! それでよければ!」
そしたら彼女にシメてもらう役を――
「レイさん! 私も行きます!」
そうだ、囮といえば盾、つまりウェイドの盾役は必須ということである。
ウェイドが前に出て、レイがここぞとばかりにスキを作る……という戦法でなんとか戦っていた。
お誂え向きにレイも二刀流だ、普通は二刀と言えば防御向けの構えでもある、囮の役目としては十分だった。
「話はまとまったようだね。
私はとりあえず後ろから適当に打って牽制しとくから、あとはうまい具合にやっといて頂戴よ」
クラナは後ろからぼそぼそとそう言った。ということで、改めて戦いに挑むことに。
しかし、なかなかその戦術を決めさせてくれることはなかった。。
ネックなのは魔物が強力な遠隔攻撃を持っており、なおかつそれで広い範囲に攻撃してくるため、
攻撃しながらだとそれをかわすのが難しく、たとえ魔法バリアを使っていたとしても防御を忘れるとなかなか厳しい。
「何かいい方法はないかな……?」
レイは悩んでいると、そこへクラナから妙案が。
「デコイ(囮)を逆にしたら? 相手は魔法主体というのならそっちの娘に攻撃の手を向けさせて、あんたたち2人で倒しなさいよ」
えっ、でも――彼女にそこまで任せてもいいのかな?
「いえ! それなら私が引き受けます! 任せてください!」
女の人は前向きだった。
「どれ、そうと決まったら、さっそくやろうじゃないの」
と、クラナは、彼女に魔法バリアを張った。
「あなたならここまですればしばらく回復いらずで戦えるハズね。
さて、敵は待ってくれないよ――さっそく始めようか」
魔鳥が襲ってくる――時間はもうない。今度こそ片を付けるよ!
女の人は真正面から相手に切り込んだ! それに対して魔鳥は彼女に向けて炎の魔法で反撃!
しかし、彼女には攻撃がまるで効いていない!
「そんなものはこの私に通用しません! これでも食らいなさい! フリージング・インパクト!」
彼女は周囲を吹雪で巻き込む魔法剣を放つと魔物にクリーンヒット! 敵が大きくのけぞった!
「2人とも! 今です!」
今がチャンス! 言われた2人は彼女の前へ出てくると、そのまま畳みかけていった。
その後といえばあっけないもので、なんとか4人で力を合わせて倒せ、事なきを得たのだ。