ということで、街道沿いの町をドミナント方面側に出ると、この3人の布陣で冒険は再出発したのだ。
ウェイドの戦い方は盾を持っているのがある程度物語っており、守りに特化した戦闘タイプである。
だが――パンチ力に関してはレイのほうが圧倒的であり、3人の中でもズバ抜けて強かった……。
一戦交えた後の感想――
「すごいですね、魔力と打撃のあの融合技、なかなかの格闘センスを感じさせますね――」
「でしょ!? そうなのよ、だから自分でもよくできたなーと思ってねー♪」
「それはいいけど、くれぐれも、消耗は抑えるようにしてよね」
そう言われてレイは反省していた、戦いの後、すぐに息切れしてしまうのが彼女の問題点だった。
そしてまた戦闘――
「レイ! 無茶したらダメよ! そいつはあんたの鉄拳じゃあ貫通しないんだから!」
今度はちょっと甲羅が固そうな敵が相手だった。すると――
「クラナさん、レイさんは杖を取り出してますよ?」
「杖って言ってもね、あの娘、あんまり魔法は強いほうじゃないんだけど――」
「魔法? そういえば彼女、魔法を使うときはあれを使用している感じではなさそうですが?」
クラナははっと気が付いた、だったらなんで杖を取り出したのだろうか――それは火を見るよりも明らかだった。
「くらえっ!」
レイはなんと杖を思いっきりぶん回し、その甲羅の固い魔物を相手を勢いよく弾き飛ばした。
「もういっちょ!」
さらに追撃の一撃、そして――
「とどめ!」
思いっきりぶちかまして相手を遥か彼方へとぶっ飛ばすことに成功した。
「ふぅ! ずいぶん高くとんだなぁ♪」
レイはなんだか気持ちよさそうな笑顔で佇んでいた。
その光景に2人は唖然としていた。
「クラナさーん、あの人、どうなっているのでしょうか? クロノリアの魔導士ってあんななんですか?」
「あんなのレイだけよ、どうなってんのか私のほうが知りたいぐらいさ。
だけど、言われてみれば――ご先祖様にもああいう人がいたらしいね」
「ということはつまり、レイさんは遺伝ですかね?」
遺伝……この際だからクラナは意を決してあの話を打ち明けることにした。
そう、あの話というのはその話のことである。
「クラナさんがクロノーラ? クロノーラって、あの聖獣のクロノーラ?」
信じなくてもいい……が、ウェイドは――
「信じますよ、むしろそのほうが説得力としてはもっともだと思います。
なんせ、これまでクロノリアの民とくれば比較的近場というか、
同じドミナント大陸内にクロノリアがあるにも関わらず、
この大陸に住んでいる人はその民の存在を見たことがないというのが現実なはずです。
しかし、そんな禁を冒してまでこのようにあなた方と出会うことができたということは、
それはあなた方がクロノリアの民の中でも特別な存在であることに他ならないものと思います。
だからあなた方がそういう存在であるというのであれば、そうなのでしょう」
それに、人間の姿で出会う可能性のある聖獣といえば東の大陸では意外と普通の事なのだそうだ、それは――
「ガトーラのこと?」
クラナは訊いた。ガトーラは東の大陸にいる聖獣で、
伝道師とも呼ばれるあたり、冒険者には特に馴染みのある存在だそうだ、しかも出会える確率が非常に高い。
「あの人には会ったことがあるのですが、いろんな意味で変わっている人でしたね――」
「ガトーラはねぇ……。でも、聖獣は割と変なやつが多いから特別変わっているとは思えないけれどもね」
確かに――レイは納得していた。
だって、あのラグナスが自分の家に来た時のインパクト……あれには流石に驚かされた。
それに、もし途中でクラナが来なかったら、あいつはただの不振人物でしかない――鳥だけど。