そして、再びとある果ての刻において激闘を繰り広げている者が――
「さあ、これで全部おしまいよ! いい加減もう観念しなさいな!
アサルト・オブ・ザ・ドレッド・ノー……」
「うわぁーっ! このぉーっ!」
「うっ――」
「えっ……!?」
「ネシェラ!」
そのネシェラと呼ばれた女性、相手の女性に腹をぶち抜かれ、その場に崩れた――。
相手の女性は慌ててネシェラに駆け寄ると――
「なによ、案外やるじゃないのよ――」
弱弱しい声で答えた。
「なっ、何を言っているのよ!? 今の絶対におかしいでしょ!?
なんで今のガードしなかったの!? よけなかったの!?
あんただったら確実に何とか出来ていたわよね!」
「ええ、多分ね、疲れてなければね。でも、左腕も痛いしもういいかなって――」
「よくない! 左腕がダメだったら右腕があるじゃないの!」
「何言ってんのよ、右腕は大事な腕でしょ、職人の命って呼べるほどのね。」
「職人の命ったって! そんなものよりも自らの命のほうが大切でしょう!」
「ううん、これでいいのよ。
それにいい加減、生きていくのも疲れちゃったからちょうどよかったのよ。」
「なんでよ! よくないよ!」
「あら――泣いてくれるだなんてやっぱりあんたはお優しいわね。
もういいのよ、唯一無二の親友も討たれちゃったし。
おそらく、親友はそっちにいるみたいね。
それなら私もそっちに関わりたいけど私じゃあそういうわけにはいかないみたい。
かといって、あんたを殺すことを考えても既に29回も逃げられているからねぇ――。
これで30回目だけど、これ以上やったところでもう無理なんじゃないかって思うし、
31回目も32回目もほぼ絶望的って気がするしね。
そうなると、私はもうその子とは二度と関わり合うことができないのよ――唯一無二の大親友とね――」
「そんな、それは――」
「ちょっと、なんで泣くのよ?
あんたは私っていう鬼から逃れられるんだからここはむしろ喜ぶところでしょ。
さあ、勝利の栄光をしっかりとかみしめなさいな――」
「その狐の面! まさか!」
「ええ、このお面はシルルっていう女が後生大事に身に着けていた代物ね。
私の戦利品(コレクション)の一つだけど――私を破ったあんたに特別にあげるわ。」
「あんたがシルルお姉ちゃんなんでしょ! ねえ! そうなんでしょ! 本当のこと言いなさいよ!
なんであんたはあんなこと!」
「はぁ? 何の話かしら? 言ったでしょ、戦利品だって。
でも、そうね――あの女は言ってたわね、この女はこの世の中に必要だから――
私たちを救うために必要な存在となるからって。
だから、見捨てるわけにはいかないんだってさ。
はっ、こんな憎たらしい女のどこにそんな要素が? へそで茶が沸かせるわね――」
ネシェラなのかシルルなのか、そう呼ばれた女性はいい加減に苦しそうだ――。
「はぁ……そろそろ苦しくなってきたわね……。そろそろいいでしょ、さっさと処理して頂戴な。
あんたの言うシルルお姉ちゃんって人から教わったあの技があるでしょ?
今のあんたになら使いこなせるんじゃないかしら? さあ、さっさと回収して――」
すると、相手の女性は剣を手に取って目に涙をにじませながら放った――
「ミスティック・クラウド!」
「そうそう、ちゃんと使えるじゃないの。 私の力、それで持てあますことなくきっちりと回収すんのよ――。
さて、そろそろお暇するわね。じゃ、元気で頑張んなさいよ、私を破ったんだからね。」
「さよなら、シルルお姉ちゃん――」
「だから違うって言ってんでしょ――」
その様を見届けていたロイドによく似た男が――
「ネシェラ――これがお前が考えていた最期だったわけだな――
いや、お前はあの女の力となったわけか、これからはお前はいつでもそいつと共にいるってわけだ。
とにかく、約束通り――お前の行く末を見届けてやったぞ。
これからも唯一無二の大親友と共に行けばいいだろう――」
この世界は多くの名もなき英雄たちの物語があるらしい。
次はどんな英雄の物語が待ち構えているのだろうか。
- fin -